「先生はスーパーマン、保護者はお客様」じゃない。疲弊する教育現場を救う学校との関わり方のヒント

学校と保護者が上手に「協働」して、子どものより良い学びの場を作っていくためにはどうすればいいのか。「先生の幸せ研究所」代表の澤田真由美さんに聞いた。

【連載「先生の幸せ研究所」の澤田真由美さんに聞いた学校現場のリアルーVol.4ー】
「先生と保護者が一緒になって学校を作っていく」という考え方が子どものより良い学びの場を作っていく
「先生と保護者が一緒になって学校を作っていく」という考え方が子どものより良い学びの場を作っていく
教員のウェルビーイングを叶えるために業務改善を支援する「先生の幸せ研究所」代表の澤田真由美さんは、全国の学校・自治体に向けてコンサルティングや講演を行い、学校の働き方改革を進めている。

多忙な先生たちを目にし、「何か協力できることはないか」と考えた場合に、保護者にはどのような関わり方がありうるのだろうか。

警戒心が強くなっている学校。保護者には「先生の味方」と示してほしい

「先生はいつも忙しそうだから」「余計なことを言ってかえって困らせたら申し訳ない」、こうした保護者の声をよく耳にする。教員の多忙化やモンスターペアレントがメディアで取り沙汰される中で、先生に遠慮しているのだ。

多くの保護者は自分が関われる範囲で、子どもが通う学校をよくしていきたいと思っている。そうした思いを上手に生かしていくことが学校の働き方改革にもつながっていくと、「先生の幸せ研究所」の澤田真由美さんは言う。

「先生たちは過去の経験から、警戒心が強くなっている可能性があります。ぜひ、優しく近づいてください。少なくとも『味方ですよ』ということは、示してもらえるとかなり心強いです。例えば、小さなことでいうと、『今日、子どもが学校の様子を楽しそうに話してました』と教えてあげるだけでも、先生はホッとします。また、学校に行った時に『◯◯先生』と名前を呼んであいさつしてくださると、認識してもらえているんだなと思えるんです」

小さなことの積み重ねで人間関係が築かれ、先生たちは安心できるという。ほかにも、「授業参観の時にうなずいて聞いてくれる」というだけでもすごく前向きになれるといったこともある。

澤田さんは「多くの人が先生のことを“スーパーマン”だと思っている節があるんです。でも、先生も傷つきますし、親しみを持ってくださったらうれしいものです。普通の人間なんですよ」と語る。

保護者の見回り参加で補導件数が激減した地域も。「協働」でwin-winに

保護者と学校はどのように「協働」できるのだろうか。互いに壁を取り払ったことで、多様な連携が生まれているケースを澤田さんに教えていただいた。

「コミュニティスクールの制度を活用して、それまで教員が行っていた夜の見回りを保護者と警察が担い、補導件数が100分の1ぐらいに減った地域がありました。また、学校が行ってきた行事を地域移行したエリアも出てきています。さらに、輪番で保護者による休み時間の見守りをしている学校では、授業参観のよそいきの姿ではないわが子を見られると好評です」

学校の負荷を減らすことだけでなく、保護者にとっても利点を感じられるような取り組みが広がっているという。

「先生方が交代で出勤して行っていた夏休みの栽培・飼育当番の代わりを担う親子を募集したところ、大人気となりあっという間に希望者で枠が埋まってしまうといったこともありました。最近は、ご家庭で生き物を飼うことができないことも多いため、みなさんが喜んで関わっているんですよね」
保護者が一緒に学校を作る例 Copyright(c) 先生の幸せ研究所
保護者が一緒に学校を作る例 Copyright(c) 先生の幸せ研究所
学校とのタッグの組み方は、保護者側から発案するケースもあるという。

「家庭教育講演会やPTAが行うワークショップなどを利用して、学校を応援する方法を考える機会を設けているところがあります。この機会に、先生たちにも参加してもらうことができれば、相談をしながら『1回やってみましょうか』といったトライアルができますよね。試してみて、うまくいくか検証してみればよいのです」

また、先生のお手伝いという位置付けではなく、「保護者が一緒になって学校を作っていく」というケースが出てきていると澤田さんは言う。
江南市立布袋中学校の例 Copyright(c) 先生の幸せ研究所
江南市立布袋中学校の例 Copyright(c) 先生の幸せ研究所
  「例えば、『部活動を考える会』や『授業を考える会』で、先生と保護者が一緒にあり方を検討している学校もあります。その結果、時間外勤務時間も減少し、先生たちのウェルビーイング度が向上した取り組みも見られました。保護者が学校作りに参画してくださることは、働き方改革の上で非常に重要なポイントだと考えています」

こうした話し合いの中で生まれてくる実行策は学校によって異なるという。「学校にも家庭や子どもにもいいあんばいの何かが、その学校ごとにきっとあるはずです」と澤田さんは言う。三者の納得解を作り、学校をより良い場所にアップデートしていく。そうしたきっかけを作っていく意味でも、保護者が学校に関わる価値は大きいといえそうだ。

保護者=お客様じゃない。学校との関係構築における注意点

一方で、保護者が学校と協働する際に注意してほしいこともあるという。

「保護者の方たちが、『学校のために』という思いを持ってくださることはとても重要なことです。ただ、学校側が保護者のことをお客様扱いしていると、『言われたことをなんとか叶えなければ』というマインドになってしまいます。それくらい、今の学校はナーバスな状態になってしまっている。だから、何か提案を持っていく時に『ノーと言ってもいいですよ』とひと言伝えてくださるとすごくホッとするのではないかと思います」
 
また、保護者との関係構築の上で保護者に避けてほしいこととはどういったことだろう。
「ことが大きくなってからの相談です。『あれ?』と思った時に聞いてくれた方が、すぐに誤解を解くことができます。不信感が積み重なることで、ドンッと大きなお叱りにつながることが多いですよね。そうなると、双方が疲弊しますし、解決するのに時間がかかってしまうことも多いのです。『こんなささいなことで連絡していいのかな』とは思わずに、気軽にお伝えいただきたいです」

気になったことを言いやすい関係性を作っていくことが大きなトラブルを防ぐことにもつながる。学校と保護者が多様なアプローチで関わり、人間同士の関係を構築していくことで、子どものより良い学びの場を作っていくことにつながっていくといえるだろう。
 
取材協力:「株式会社先生の幸せ研究所」代表取締役 澤田真由美
東京都と大阪府の小学校教員として勤務。教師として悩みぬいた自身の経験から、幸せな先生・大人を増やしたいと、2015年4月に独立し「先生の幸せ研究所」を設立。学校専門ワーク・ライフ・バランスコンサルタントとして、全国の学校や教育委員会で働き方改革と組織開発をサポートしている。著書『「幸せ先生」のダンドリ術』他。
https://www.imetore.com/
この記事の執筆者:佐藤 智
教育ライター。株式会社レゾンクリエイト執行役員。出版社勤務を経て、ベネッセコーポレーションにて、学校情報を収集しながら教育情報誌の制作を行う。その後、独立。全国約1000人の教師に話を聞いた経験をもとに、現在、学校や教育現場の事情をわかりやすく伝える教育ライターとして活躍中。著書『SAPIXだから知っている頭のいい子が家でやっていること』など。
https://raisoncreate.co.jp/
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