非効率な学習クオリティだと、いくらたくさん勉強しても空回り。逆によいやり方を知っていれば、要領よく勉強を終わらせて、遊びや部活や習い事とも両立しながらよい成績をキープできます。
そこで、短時間で成果が劇的に変わるお得な勉強テクニックを中学受験指導歴20年の筆者が解説します。
短い時間で学習クオリティが上がる超効率勉強法
しかし、それ以上にもっとよい方法があります。それは、“人に教えるつもり”で勉強することです。
ワシントン大学の研究者たちが学生を対象に実験してみたところ、「このあとテストがあるよ」と言われて勉強したグループよりも、「このあと他の人に教えてもらうよ」と言われたグループの方が、はっきりと点数が高いという結果になりました(*1)。
しかも、内容的に重要なポイントをよく覚えていたというので、とても効率のよい勉強であったことが分かります。
本当かなと思って、筆者が経営する塾の生徒に実際にやらせてみたところ、たしかに効果的でした。算数が苦手な子に、「分かったことを先生に説明するつもりで解説を読んでみてね」と伝え、実際にその中のいくつかを教えてもらうことを続けさせたところ、だんだん問題が解けるようになっていきました。
“人に教えるつもり”で勉強しても、いつものやり方とかかる時間はほとんど変わりません。もちろん疲れ具合も変わりません。これをやらせてみた生徒に聞いてみても、全然大変じゃなかったそうです。でも、そんなちょっとした違いで理解度が全く変わったのですから、これはお得な勉強法といえます。
あなたもこれからはぜひ、お子さんが授業を受けたりテキストを読んだりするときには、あとで分かったことを説明してもらうようにしてはいかがでしょうか。
“人に教えるつもり”で勉強する上で大切なこと
ただし、お子さんが“教えるつもり”で勉強するときに、絶対に気をつけてほしいことがあります。それは、教えてもらうときに、親は必ず「ポジティブ評価」に徹するということです。お子さんが学んだことを説明しようとしても、理解が不十分でうまく説明できないこともあるでしょう。そんなときでも絶対に責めてはいけません。もしちゃんと説明できないことを非難されれば、「説明すると怒られるから、もうやりたくない」と思ってしまい、成長のチャンスを1つ失ってしまうことになります。
ですから、うまく説明できていない部分には目をつぶって、説明できた部分に注目してほめることに徹してください。理解が不十分で説明できなかったところは、指摘しなくても本人が自分で気づきます。
うまく説明できたところをほめられて、もっと上手に教えられるようになりたいという気持ちが芽生えれば、叱らなくても次からより頑張って覚えようとしてくれるでしょう。
教えるつもりだけでOK? “実際に教える”必要はある?
“教えるつもり”で勉強すると学習効果が高いことはお分かりいただけたでしょう。では、“実際に教える”ことの効果はどうなのでしょうか? 先ほどお伝えした生徒は、“教えるつもり”で勉強したから算数ができるようになったのではなく、“実際に教えた”から効果があったのかもしれません。はたして、どちらなのでしょうか?
これに関しては、“教えるつもり”も“実際に教える”ことも、どちらも高い学習効果があるようです。
人に教えるつもりで準備をしてもらったけれど実際には教えなかった人と、教えるつもりで準備をしてもらって実際に教えた人に、それぞれテストを受けてもらったところ、後者の方がさらに高い点数になりました(*2)。学習効果は、実際に教えた方が60%くらい高く、かなり大きな差になっています。
実際に教えてもらうと親御さんの時間はとられてしまいますが、お子さんの勉強のコスパを考えるととても効率のよい方法といえます。もし時間がつくれるようであれば、お子さんが勉強した内容を教えてもらうよう心がけてあげるとよいですね。
ただ単に説明してもらうだけではなく、お子さんにクイズ形式にしてもらうなど遊びの要素を入れると楽しみながらやれるでしょう。答えと解説までしっかりお子さんに考えてもらってください。
教える相手は「ぬいぐるみ」でもOK!
お子さんから教えてもらう時間をとれない場合には、家にある「クマのぬいぐるみ」を相手に勉強したことを説明してもらうとよいでしょう。これはけっこう真面目な「ラバーダック勉強法」という手法です。名前の由来は、ゴム製のアヒルの玩具に話しかけるところからきています。
アヒルでもクマのぬいぐるみでもよいので、話しかけやすい相手に向かって学んだことを説明してみるよううながしてあげてください。短時間で効果的に勉強した内容を覚えられます。
「ポジティブ評価に徹する」ということがうまくいかず、ついお子さんを叱ってしまうという方も、自分ではなくぬいぐるみに説明してもらうとよいでしょう。またお子さんの性格的に、人を相手に教えるのを恥ずかしがったり、失敗しないか心配だったりして説明するのを嫌がる場合にも、ぬいぐるみを活用するのは便利です。
いずれにせよ、“教えるつもり”で勉強し、実際に“だれか(何か)に教える”のはとても効果的な勉強法です。このやり方をぜひお子さんに教えてあげてください。
この記事の執筆者:菊池洋匡
中学受験専門塾 伸学会代表。開成中学・高校・慶應義塾大学法学部法律学科を卒業。算数オリンピック銀メダリスト。子どもたちの成績を上げるだけでなく、勉強を楽しむ気持ちや困難を乗り越え成長していくマインドを育てる方法を確立。生徒と保護者に「勉強には正しいやり方がある」ということを一貫して伝え続ける。
中学受験専門塾 伸学会代表。開成中学・高校・慶應義塾大学法学部法律学科を卒業。算数オリンピック銀メダリスト。子どもたちの成績を上げるだけでなく、勉強を楽しむ気持ちや困難を乗り越え成長していくマインドを育てる方法を確立。生徒と保護者に「勉強には正しいやり方がある」ということを一貫して伝え続ける。