フィードバックは、良好なコミュニケーションと人間関係を築くための不可欠なツールです。しかし、フィードバックの真の意味と効果的な実施方法を理解することは、多くの人にとって難しいかもしれません。この記事では、フィードバックの基本的な意味、効果的な方法、そしてダメ出しとの明確な違いを現役フリーアナウンサーの新保友映が紹介します。ビジネスの成果を向上させ、人間関係を深めるためのフィードバックの力を、一緒に見ていきましょう。
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<目次>
・フィードバックとは?
・フィードバックとダメ出しの違い
・フィードバックの2つの方向性
・フィードバックのフレームワーク3種類
・フィードバックの手法2種類
・フィードバックをする目的と効果
・フィードバックのコツ・ポイント
・フィードバックと間違えやすい単語
・まとめ
フィードバックとは?
フィードバックとは、ビジネス環境において欠かせないコミュニケーションの1つで、個人やチームの行動、成果、または態度に関して、構築的な評価や意見を提供するプロセスを指します。フィードバックは、個人のパフォーマンスを向上させ、将来の行動を改善することを目的としています。一方的な指示や命令ではなく、双方向の対話として行うべきものであり、共同で成長と学習を促すものです。正確でタイムリーなフィードバックは、効率的な目標達成に不可欠であり、個人と組織の両方にとって有益であることは間違いないでしょう。・ビジネスにおけるフィードバックの意味とは?
ビジネスにおいて、フィードバックは目標達成と職務性能の向上に向けた重要な手段です。これには、行動の観察、成果の評価、そしてその結果に基づいた具体的な提案が含まれます。効果的なフィードバックは、ネガティブな部分をただ単に指摘するだけでなく、肯定的な成果を強調し、改善のための明確で実行可能なアドバイスを提供します。
ビジネスシーンでのフィードバックの目的は、従業員の自己認識を高め、スキルの発展を促し、最終的には組織全体の成果を向上させることです。適切なフィードバックは、信頼と透明性を基にした環境を構築し、チームワークと生産性の向上に貢献します。
フィードバックとダメ出しの違い
フィードバックは、改善と成長を目指す建設的な意見の交換ですが、ダメ出しは否定的な批評として受け取られます。フィードバックは、具体的な行動や成果に基づき、相手の潜在能力を引き出す目的で提供されます。一方、ダメ出しは個人の自尊心を傷つけ、具体的な改善策を欠くことが多いです。信頼関係があれば、フィードバックは受け入れやすくなりますが、そうでない場合、同じ言葉も拒絶されることがあります。効果的なフィードバックには、具体性、建設性、そして適切なタイミングが必要です。これらにより、フィードバックは成長促進の強力なツールとなるでしょう。
フィードバックの2つの方向性
フィードバックには、「ポジティブフィードバック」と「ネガティブフィードバック」という2つの主要な方向性があります。それぞれのアプローチは、受け手の心理状態、目標達成の進行度、およびフィードバックの目的に応じて適切に使い分ける必要があります。・ポジティブフィードバック
ポジティブフィードバックとは、個人の行動や成果の良い点を認識し、称賛することで、その人の自信とモチベーションを高めるフィードバックです。このタイプのフィードバックは、部下の自己肯定感を強化し、継続的な成果や努力を促すために効果的です。良い行動を強化し、より良い成果を引き出すために、具体的で正直な称賛を提供することが重要となるので理解しておきましょう。
・ネガティブフィードバック
一方、ネガティブフィードバックは、改善が必要な行動や成果の問題点を指摘し、その人の成長やパフォーマンスの向上を促すために行われるフィードバックです。このアプローチは、受け手が自身の行動を見直し、将来的により良い結果を出すための具体的な改善内容を理解するのを助けます。しかし、ネガティブフィードバックを提供する際は、批判的でなく建設的であること、また伝える方法とタイミングに注意する必要があります。
フィードバックのフレームワーク3種類
フィードバックをより効果的に行うためには、明確なフレームワークを使用することが重要です。ここでは、ビジネスシーンでよく使われる3種類のフィードバックフレームワークについて解説します。・SBI型
SBI型フィードバックは、「Situation(状況)」「Behavior(行動)」「Impact(影響)」の3つの要素で構成されているフィードバックです。まず、フィードバックを行う背景となる具体的な「状況」を説明し、次にその状況で観察された相手の「行動」を指摘します。最後に、その行動が周囲や結果にどのような「影響」を与えたかを伝えます。このフレームワークは、事実に基づく客観的なフィードバックを提供するのに有効です。
・FEED型
FEED型フィードバックは、「Fact(事実)」「Example(例)」「Effect(効果)」「Do(次にすべきこと)」の4つのステップで構成されているフィードバックです。まず、フィードバックする「事実」を述べ、それを裏付ける「例」を提供します。その上で、その行動がもたらした「効果」を指摘し、最後に「次にすべきこと」を提案します。このアプローチは、相手に改善の方向性を示しながら、肯定的な変化を促すために役立ちます。
・KPT型
KPT型フィードバックは、「Keep(継続すべき点)」「Problem(問題点)」「Try(改善・試みるべき点)」の3つから成り立つフィードバックです。まず、良好な行動や成果で「継続すべき点」を強調し、次に改善が必要な「問題点」を指摘します。そして、具体的な改善策や新たな試みとなる「改善・試みるべき点」を提案します。このフレームワークはチーム内の振り返りや改善活動に適しており、ポジティブな側面と改善が必要な側面のバランスを取りながら、具体的なアクションプランを立案することが可能です。
フィードバックの手法2種類
フィードバックを適切に提供する方法は多々ありますが、特に有効なのが「サンドイッチ型」と「ペンドルトンルール」の手法です。これらの手法は、フィードバックを受け入れやすくし、受け手の成長を促すことを目的としています。・サンドイッチ型
サンドイッチ型フィードバックは、肯定的なコメントで始まり、次に改善が必要な点を挙げ、最後に再び肯定的なコメントで締めくくる方法です。この手法は、ポジティブな評価を「パン」、改善すべき点を「肉や野菜」と見立て、サンドイッチのように構成します。
例えば、「昨日のプレゼンテーションは非常に情熱的で魅力的でした。ただ、データの正確性をもう少し確認する必要があります。それでも、あなたの努力は明らかに認められ、チームにとって非常に価値があります」と伝えることで、受け手はポジティブな気持ちで改善点に取り組むことができるでしょう。
・ペンドルトンルール
ペンドルトンルールでは、フィードバックのプロセスが双方向的であることを重視することが大切です。この手法では、最初に受け手が自分の行動について自己評価を行い、その後で提供者がフィードバックを提供します。フィードバックセッションは、受け手の良かった点(Keep)、改善すべき点(Problem)、そして改善策(Try)に焦点を当てて進行します。
例えば、「先週のプロジェクトであなたがとくに良かった点を教えてください。その後で、改善が必要だと思った点について話し合いましょう」と導入し、受け手が自己反省と成長を促す機会を提供します。
フィードバックをする目的と効果
フィードバックの目的とその効果は、組織の成長と個人の発展のために極めて重要です。フィードバックは、単に仕事の成果を評価するだけでなく、個々の成長を促進し、組織全体の目標達成に貢献します。・人材育成
フィードバックは人材育成における核心的な要素です。具体的な行動や成果に対するフィードバックを通じて、個人は自身の強みと改善点を理解し、スキルアップに向けた自己改善の機会を得ます。フィードバックを受けた従業員は、指導や励ましによって自己成長の道を見い出し、より高い業績を目指すことができます。
・目標達成
組織や個人の目標達成にフィードバックは不可欠です。フィードバックによって、行動や成果が目標と一致しているかどうかを確認し、必要に応じて軌道修正を行います。これにより、効率的かつ効果的に目標を達成することが可能です。
・生産性向上
適切なフィードバックは生産性を向上させるための強力なツールです。フィードバックにより、作業の質と速度が改善され、仕事の効率が向上します。また、問題の早期発見と迅速な解決が可能となり、作業プロセスの最適化が進みます。
・社員のモチベーションアップ
フィードバックは従業員のモチベーションを高めることにもつながる重要な要素です。成果や努力が認識されることで、従業員は仕事に対する満足感を得て、さらなる成果を目指す動機付けがされます。また、フィードバックを通じて、従業員は自分が価値ある貢献をしていると感じることが可能です。
・社員の自己認識力(セルフアウェアネス)を高める
フィードバックは、従業員が自身の行動や成果を客観的に評価し、自己認識を高める機会を提供します。これにより、自分の長所と短所を理解し、自分自身をより良く知ることが可能になります。
・スキルアップ
フィードバックによる具体的な指導は、スキルの向上を促します。フィードバックを受けた従業員は、新しいスキルを獲得し、既存のスキルを強化することが可能です。これは、個人のキャリア成長だけでなく、組織全体の能力向上にも貢献します。
・上司・会社への信頼を深められる
フィードバックは、上司と部下の間の信頼関係を強化します。オープンで正直なコミュニケーションを促進し、組織全体の透明性と信頼性を高めることができます。従業員は、自分の仕事が適切に評価され、公正に扱われていると感じることで、会社に対する信頼と忠誠心を深めます。
フィードバックのコツ・ポイント
フィードバックをより効果的にするコツには、10個のポイントがあります。ここでは、10個のポイントについて見ていきましょう。・目標と関連性を持たせる
フィードバックを提供する際は、それが具体的な目標に結びついていることを明確にしましょう。目標との関連性を示すことで、フィードバックがより意味を持ち、受け手は具体的な改善点を理解しやすくなります。例えば、「このプロジェクトでのあなたの貢献は目標達成に直結しており、特にXの部分での改善は目標Yを達成する上で大きな助けになりました」と指摘すると良いでしょう。
・実現可能性があるフィードバックを行う
提案する改善点は実現可能であることが重要です。非現実的な目標や提案は受け手を困惑させ、モチベーションを下げる結果につながりかねません。改善や提案は現実的で、受け手が行動に移しやすいものにしましょう。
・具体的に伝える
フィードバックは具体的で明瞭なものであるべきです。抽象的または一般的な言葉遣いは避け、具体的な事例やデータを用いて伝えるようにしてください。例えば、「もっと頑張って」という曖昧なアドバイスよりも、「プレゼンテーションでは、具体的な事例を3つ以上使って説明すると良いでしょう」と指摘する方が効果的です。
・タイムリーに行う
フィードバックはタイムリーに行うことが重要です。出来事が新鮮なうちに実施し、すぐに改善を促します。適切なタイミングでのフィードバックは、受け手の行動変化を効果的に促すため不可欠です。行動直後に行うことで、受け手はより関連性と緊急感を感じ、ポジティブな変化を生み出しやすくなります。
・客観的な事実に基づく
フィードバックは客観的な事実に基づくべきです。感情や個人的な意見ではなく、具体的な行動や結果を示して伝えましょう。これにより、受け手はフィードバックを受け入れやすくなり、客観的視点から自身を評価し、改善策を見つけやすくなります。効果的なフィードバックは、受け手の成長を促します。
・本人の意志も確認する
フィードバックを行った後、受け手の意見や感じたことを尋ねることで、彼らが自分自身の改善点や成長について考える機会を提供しましょう。これにより、フィードバックがより双方向的なコミュニケーションに変化します。
・適切な環境、シチュエーションで実施する
フィードバックは、受け手が安心感を持てるプライベートな空間で行うことが重要です。公開の場での批判や否定を避け、個人的かつ適切な状況を選びましょう。受け手が心を開いてフィードバックを受け入れられるよう、尊重と理解を持って接することが肝心です。これにより、フィードバックの効果が高まります。
・普段から信頼関係をつくっておく
信頼関係の構築は効果的なフィードバックに不可欠です。普段から信頼を築くことで、フィードバックが必要な時、受け手はより受容的で開放的な姿勢を示します。この前提があると、フィードバックは単なる批判ではなく、成長へのステップとして受け止めることができます。信頼はコミュニケーションを円滑にし、フィードバックの受け入れと実行を促進します。
・態度、言葉選びに気を付ける
フィードバックを伝える際には、相手を尊重し、言葉選びに注意することが重要です。否定的な態度は避け、肯定的な表現を使いましょう。相手に対する批判や攻撃ではなく、建設的な対話を心がけることで、フィードバックの受け入れやすさを高め、効果的な改善を促進できます。
・適宜フォローアップを行う
フィードバック後には、適宜フォローアップを実施してください。具体的には、行動の変化を確認し、追加のサポートが必要かを判断します。この過程は、フィードバックを実際の改善行動に結びつけるために重要です。受け手が自信を持って前進できるよう、適切な指導と支援を継続的に提供しましょう。
フィードバックと間違えやすい単語
ここでは、フィードバックと間違えやすい単語を7つ紹介します。ビジネスシーンなどでよく使われる言葉もあるので、違いを理解しておきましょう。・コーチング
コーチングとは、目標達成を支援するプロセスであり、相手に自己解決の機会を与えます。対話を通じて、コーチは質問をすることで相手の考えを深め、自己発見を促します。フィードバックとは異なり、コーチングは解決策を直接提供するのではなく、相手が自身の答えを見つけられるようガイドする重要な行為です。
・ティーチング
ティーチングとは、具体的なスキルや知識を教える行為です。指導者が学習者に対して情報を伝え、明確な指示を提供します。ティーチングは、必要な技術や情報が欠けている場合に効果的ですが、フィードバックのように、個人の行動や成果に対する評価を伴うものではありません。
・フィードアップ
フィードアップとは、フィードバックを与える前に、目的や目標を明確にするプロセスです。目標に基づいて、何を改善する必要があるか、どのような行動が期待されるかを設定します。これにより、フィードバックが目的指向的かつ効果的になるでしょう。
・フィードフォワード
フィードフォワードとは、将来の行動や改善に焦点を当てたアプローチです。フィードバックが過去の行動を評価するのに対し、フィードフォワードは、未来の成功のために何ができるかについての提案を提供します。
・マネジメント
マネジメントとは、組織の目標達成に向けてリソースを効率的に使うための活動です。チームやプロジェクトの計画、実行、監視を含みます。フィードバックはマネジメントの一部であり、個人の成長と目標達成を支援するために使われます。
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・レビュー
レビューとは、製品、サービス、パフォーマンスなどを評価するプロセスです。主観的な意見や感想を含むことが多く、フィードバックと同様に改善点を提供することがありますが、より広範な評価を指します。
・チェックバック
チェックバックとは、過去に決定されたアクションやプロジェクトの状態を確認するプロセスです。これは映像や出版業界でよく使われる用語で、作品の修正や最終確認を指します。フィードバックのプロセスとは異なり、特定の製品や成果物に関連して使用されます。
まとめ
フィードバックは、ビジネス環境だけでなく、日常生活においても重要なコミュニケーション手法です。これは、個人の成長、チームの効率向上、そして組織全体の目標達成に貢献します。この記事では、正しいフィードバックの方法を理解し、適切に実施することで、建設的な批評が促進され、相互の成長と目標の達成が可能になることを紹介してきました。フィードバックとダメ出しの違いを理解し、ポジティブな側面を強調しながら、具体的かつ実現可能な改善提案を行うことが重要です。さらに、フィードバックは信頼関係の上に築かれるべきであり、受け手の成長と発展を最優先に考えるべきです。
■執筆者プロフィール 新保 友映(しんぼ ともえ)
山口県岩国市出身。青山学院大学卒業後、2003年にアナウンサーとしてニッポン放送に入社。『オールナイトニッポンGOLD』のパーソナリティをはじめ、『ニッポン放送ショウアップナイター』やニュース情報番組、音楽番組など担当。2018年ニッポン放送退社後はフリーアナウンサーとして、ラジオにとどまらず、各種司会、トークショーMC、YouTube、Podcast、話し方講師など幅広く活動。科学でいじめのない世界をつくる「BE A HEROプロジェクト」特任研究員として、子どもたちの授業や大人向け講座の講師も担当している。