「家事を手伝う」は禁句……“大黒柱夫と専業主婦”の無意識なロールモデル化
2月に放送されたドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(2024年2月4・11日放送、フジテレビ系/関東ローカル)で当結婚相談所に密着した様子が放送されました。番組内で、29歳の会社員男性が29歳東大卒の相手女性から家事能力を疑われて自炊写真をLINEで送ることになるシーンがありました。筆者自身、婚活現場でも「家事を“手伝う”というのは他人の目線、家事を“する”というのが夫婦」とお伝えしています。この家事分担の齟齬(そご)が「婚活の落とし穴」となっています。一言で言えば、親世代では当たり前だった「大黒柱夫と専業主婦」をロールモデルとして無意識にコピーしてしまい、婚活世代がすれ違い苦しむ現状があります。
今の30代は、まだ自身の母親が専業主婦や扶養内でのパートだった人が多い世代。婚活相手の女性がフルタイムで働いても、男性は無意識に「専業主婦のお母さんがいる前提の家事」を女性に求めてしまいがちです。
男性の母親と相手女性の間で、女性の働き方が争点になることもあります。結婚のごあいさつで、歯科医男性(33歳)の母親が、相手女性に対して「息子と家庭をほったらかして仕事に興じて、出世しようなんて許さない」「母に料理を教わってますって? 私に教えてくださいと言うべきです」「大事な息子なんだから、品定めさせてもらうわよ」としゃしゃり出る事態に女性は泣き帰り、残念ながら破談になった例もありました。
出会った時点で「料理経験なし」の男性はNGか?
一方、働く女性は“変化の当事者”ですから意識は切り変わっていて、「男性にも、平等に家事をやってほしい」と主張します。そもそも女性は独身でも適度に自炊する人が多い一方で、独身男性は自炊をほぼしない人がまだまだ多いのも事実。それでも女性側には、出会った時点で自炊経験がないと「この人は料理できないからNG」と決めつけてしまう人もいます。
婚活現場では、「自分の方が得意なことは教えてあげる姿勢を持ちましょう。仮交際中なら一定期間見守り、やる気や見込みがないと分かったら見切りをつけて」とアドバイスしています。
ある会社員男性は実家暮らしで、ゆで卵すら作ったことがありませんでした。相手女性は家事分担が不安で踏み切れないと言うので、オンラインデートで料理を教えてあげるようアドバイスしました。「お水を鍋に入れて……」から教え始めて翌日は、たまごサンド作り。最終的には夕食にミールキットで炒め物を作れるまで成長し、ご成婚へと進まれました。
夫婦が同程度稼ぐ時代、家事分担は「世帯収入の反比例」
30年間年収が上がらない日本では、男性のスタンスが「結婚したら仕事は辞める?」から「共働きでもいいよ」「僕も家事を手伝うよ」を経て、「家事・育児を主体的にやる」というところまで変わりつつあります。夫婦が同程度稼ぐなら、どちらも主体的に家事ができ、どちらも家庭を回せるようにならなければマッチしません。女性の社会進出により、都心部では男性以上に収入を得る人は少なくありません。毎日遅くまで働き、宿直や夜勤、国内外への転勤に対応している人もいます。それほどに働く女性からすると、相手男性がどれだけの家事スキルで、どの程度の家事分担が可能なのかを具体的に把握できなければ、結婚に踏み切れなくなります。
実際、筆者の結婚相談所には医師や士業の女性会員も多く、年収1000万円超も多数。そんな彼女たちは、「結婚はしたいけれど、相手の年収が自分を下回るのなら家事・育児は担ってほしい」と口をそろえます。男性が家事や育児を担い、自分自身が仕事をセーブせずに済むのであれば、年収は自分より低くてもいいという女性もいます。