「婚活」の落とし穴 第9回

「家事を手伝う」は今や禁句に……「大黒柱夫×専業主婦」家庭を“無意識”に理想化する婚活男女の苦悩

共働き世帯が増える中で、婚活を阻む「無意識な思い込み」とは? 「辛口アドバイザー」植草美幸が婚活現場の実例とともにお伝えします。

画像出典:Sirichai Puangsuwan / Shutterstock.com
「無意識な思い込み」は婚活現場でも…… 画像出典:Sirichai Puangsuwan / Shutterstock.com
3月8日「国際女性デー」は、ジェンダー平等の実現や女性の社会進出を応援するイベントが各地で行われます。日本はジェンダー平等が進んでいないと言われますが、その原因としてアンコンシャス・バイアス(性別や職業、国籍など日常にあふれる無意識の思い込みや偏見)が根強い点が挙げられます。この男女間の「無意識な思い込み」で婚活がうまくいかないケースについて、実例を挙げながらお伝えしていきます。

「家事を手伝う」は禁句……“大黒柱夫と専業主婦”の無意識なロールモデル化

2月に放送されたドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(2024年2月4・11日放送、フジテレビ系/関東ローカル)で当結婚相談所に密着した様子が放送されました。番組内で、29歳の会社員男性が29歳東大卒の相手女性から家事能力を疑われて自炊写真をLINEで送ることになるシーンがありました。筆者自身、婚活現場でも「家事を“手伝う”というのは他人の目線、家事を“する”というのが夫婦」とお伝えしています。この家事分担の齟齬(そご)が「婚活の落とし穴」となっています。

一言で言えば、親世代では当たり前だった「大黒柱夫と専業主婦」をロールモデルとして無意識にコピーしてしまい、婚活世代がすれ違い苦しむ現状があります。

今の30代は、まだ自身の母親が専業主婦や扶養内でのパートだった人が多い世代。婚活相手の女性がフルタイムで働いても、男性は無意識に「専業主婦のお母さんがいる前提の家事」を女性に求めてしまいがちです。

男性の母親と相手女性の間で、女性の働き方が争点になることもあります。結婚のごあいさつで、歯科医男性(33歳)の母親が、相手女性に対して「息子と家庭をほったらかして仕事に興じて、出世しようなんて許さない」「母に料理を教わってますって? 私に教えてくださいと言うべきです」「大事な息子なんだから、品定めさせてもらうわよ」としゃしゃり出る事態に女性は泣き帰り、残念ながら破談になった例もありました。

出会った時点で「料理経験なし」の男性はNGか?

一方、働く女性は“変化の当事者”ですから意識は切り変わっていて、「男性にも、平等に家事をやってほしい」と主張します。

そもそも女性は独身でも適度に自炊する人が多い一方で、独身男性は自炊をほぼしない人がまだまだ多いのも事実。それでも女性側には、出会った時点で自炊経験がないと「この人は料理できないからNG」と決めつけてしまう人もいます。

婚活現場では、「自分の方が得意なことは教えてあげる姿勢を持ちましょう。仮交際中なら一定期間見守り、やる気や見込みがないと分かったら見切りをつけて」とアドバイスしています。

ある会社員男性は実家暮らしで、ゆで卵すら作ったことがありませんでした。相手女性は家事分担が不安で踏み切れないと言うので、オンラインデートで料理を教えてあげるようアドバイスしました。「お水を鍋に入れて……」から教え始めて翌日は、たまごサンド作り。最終的には夕食にミールキットで炒め物を作れるまで成長し、ご成婚へと進まれました。

夫婦が同程度稼ぐ時代、家事分担は「世帯収入の反比例」

30年間年収が上がらない日本では、男性のスタンスが「結婚したら仕事は辞める?」から「共働きでもいいよ」「僕も家事を手伝うよ」を経て、「家事・育児を主体的にやる」というところまで変わりつつあります。夫婦が同程度稼ぐなら、どちらも主体的に家事ができ、どちらも家庭を回せるようにならなければマッチしません。

女性の社会進出により、都心部では男性以上に収入を得る人は少なくありません。毎日遅くまで働き、宿直や夜勤、国内外への転勤に対応している人もいます。それほどに働く女性からすると、相手男性がどれだけの家事スキルで、どの程度の家事分担が可能なのかを具体的に把握できなければ、結婚に踏み切れなくなります。

実際、筆者の結婚相談所には医師や士業の女性会員も多く、年収1000万円超も多数。そんな彼女たちは、「結婚はしたいけれど、相手の年収が自分を下回るのなら家事・育児は担ってほしい」と口をそろえます。男性が家事や育児を担い、自分自身が仕事をセーブせずに済むのであれば、年収は自分より低くてもいいという女性もいます。
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年収1000万円、外資系IT勤務(34歳)の実例
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