上司との会話の中で、日常的に「確かに」「なるほど」と相づちを打っている人も多いでしょう。しかし、これらの言い回しは目上の人や取引先、お客さまに対して使ってしまうと失礼に当たることがあり、知らず知らずのうちに相手を不愉快にしている可能性も否定できません。
そこで本記事では「確かに」と「なるほど」の本来の意味と、代わりに使える言い回しについて、現役フリーアナウンサーの酒井千佳が解説します。
<目次>
・「確かに」「なるほど」の意味とは
・「確かに」「なるほど」をビジネスで使わない方がいい理由
・ビジネスで使える「確かに」の言い換え表現
・ビジネスで使える「なるほど」の言い換え表現
・まとめ
「確かに」「なるほど」の意味とは
「確かに」「なるほど」は、いずれも日常会話では頻繁に使われている言い回しです。双方が同じ意味だと思っている人も多く、中には意味すら考えず「はい」「そうですね」のように、ただの相づちとして使っているというケースも少なくないでしょう。しかし、実際はそれぞれ異なる意味を持つことばです。こちらでは、「確かに」と「なるほど」の本来の意味について解説します。
・「確かに」の意味
「確かに」の元となっているのが「確か」ということばです。そもそも「確か」には、以下のような意味があります。
・危なげなくしっかりしていること
・信頼できること
・自分の記憶や判定では間違いないこと
・正確であるさま
つまり「確かに」は、相手の言っていることが確実であること、こちらが相手の意見に同意することなどを示す際に使う表現であるため、相づちとして使っても間違いではないということになります。
・「なるほど」の意味
「なるほど」は「成る程」と書き、かつては「成る程度」つまり「できる限り」という意味合いで使われていました。それが「これ(できる限り)以上はない」→「他には考えられない」→「明らかだ」というように少しずつ意味が変化し、「あなたの意見は明らかに正しい」という意味で、相手のことばに同意を表す際に使われるようになったといわれています。
「確かに」「なるほど」をビジネスで使わない方がいい理由
「確かに」も「なるほど」も相手のことばや考えを肯定する言い回しですが、ビジネスシーンでは使わない方がいいとされています。その理由は、こちらが相手を「評価する」印象を与えてしまうからです。「確かに」は意味だけを考えれば、目上の人に使ったとしても「そうですね、間違いありませんね」と肯定的な相づちを打ったに過ぎません。しかし、上司が言ったことばに対し「確かに」と一言で返してしまうと、こちらが相手の意見を評価している、あるいは判断しているような印象を与えてしまうことがあるのです。
一方、「なるほど」も同じように相手への同意を示す表現ですが、現代のビジネスシーンではそこまで深い意味はなく、単純に「感嘆詞」として「なるほど」という言い回しが使われることが多いようです。「うん」「へぇ」「やっぱり」などと同じように使われると考えると、やはり目上の人に使うことばとしては正しくないことが分かるでしょう。
どちらの言い回しも、上司のことばを肯定することばではあるものの、「あなたの話は正しいですね」とこちらが相手を評価しているニュアンスを含みます。目上の人を評価するということ自体が大変失礼な行為に当たるため、ビジネスシーンでは軽々しく使わないようにしましょう。
関連記事:「なるほど」は上司に失礼? 正しい敬語とビジネスで使える言い換え表現を解説
ビジネスで使える「確かに」の言い換え表現
ビジネスシーンで使える「確かに」の言い換え表現は、以下の通りです。・「おっしゃる通りです」
・「まさにお話の通りです」
・「その方が確実ですね」
・「間違いありません」
今日からこのように言い換えることができれば満点ですが、実際は上司を相手にとっさに「確かに」と言ってしまうこともあるでしょう。そんな時には「確かに、おっしゃる通りですね」「確かに、その通りだと思います」などと続けると柔らかい表現になります。
ビジネスで使える「なるほど」の言い換え表現
ビジネスシーンにおいて「なるほど」を同意の意味で使いたいときは、以下のように言い換えると効果的です。・「承知いたしました」
・「おっしゃる通りです」
・「勉強になります」
・「私もそう思います」
「なるほど」より長い言い回しになりますが、このように伝えることで、相手に「理解してくれたのだな」と感じてもらえるようになります。
一方、納得をしたことを伝える意味で「なるほど」を使う場合は、以下のように言い換えられます。
・「承知いたしました」
・「かしこまりました」
あえてシンプルに答えることで、相手の意思に従うことをはっきりと伝えられます。また、これらと似たことばに「了解しました」がありますが、こちらはよりカジュアルな言い回しとなり、ビジネスシーンには向かないため注意しましょう。
まとめ
上司に対して誰もが使いがちな「確かに」と「なるほど」の使い方について解説しました。「確かに」や「なるほど」は相づちとして非常に便利な言い回しですが、上司や目上の人に対して使うと「相手に評価されている」という印象を持たれてしまうことがあるため、ビジネスシーンでは使わない方が賢明です。本来なら今日から言い換え表現を使うのが1番ですが、つい「確かに」「なるほど」と言ってしまったときには、後ろに「おっしゃる通りです」などと続けてできるだけ柔らかい表現にすることを意識しましょう。ビジネスシーンでは、たった一言で信頼関係が失われるといったケースが少なからずあります。互いが気持ちよく仕事をするためにも敬語を正しく理解することが大切です。
■執筆者プロフィール 酒井 千佳(さかい ちか)
フリーキャスター、気象予報士、保育士。
京都大学 工学部建築学科卒業。北陸放送アナウンサー、テレビ大阪アナウンサーを経て2012年よりフリーキャスターに。NHK「おはよう日本」、フジテレビ「Live news it」、読売テレビ「ミヤネ屋」などで気象キャスターを務めた。現在は株式会社トウキト代表として陶芸の普及に努めているほか、2歳からの空の教室「そらり」を主宰、子どもの防災教育にも携わっている。