そんな「ひな人形」について、「All About」暮らしの歳時記ガイドの三浦康子が解説します。
(今回の質問)
ひな人形をしまうのが遅いと晩婚になるって本当ですか?
(回答)
「ひな人形を早くしまわないと嫁に行き遅れる」という言い伝えからきており、科学的な根拠はありませんが、ひな人形をしまう時期や結婚に対する考え方に少なからず影響しているようです。
どういうことなのか、以下で詳しく解説します。
ひな人形はいつからいつまで飾る?
ひな人形には娘の健やかな成長と幸せを願う意味があり、人の厄を移した人形を水に流す風習と、幸せを“女雛と男雛の結婚”で象徴したことに由来します。ひな人形は、ひな祭りには春を寿(ことほ)ぐ意味もあるため、暦の上で春となる二十四節気の「立春」(2月4日頃)を迎えたら飾りはじめてもよいといわれています。また、ひな祭りは水に関係する行事なので、二十四節気の「雨水」(2月18日頃)に飾りはじめると良縁に恵まれるという言い伝えも。
そして、「ひな人形を早くしまわないと嫁に行き遅れる」という言い伝えから、ひな祭りがすんだらすぐに片付けたほうが良いとされています。
もちろん、気にせずに飾っておいても構いませんが、季節の行事は季節感が大事です。春を寿ぐという意味では、遅くとも暦の上で春の半ばとなる「春分」(3月20日頃)までにはしまいましょう。ただし、ひな人形を旧暦の3月3日(4月中旬)まで飾っておく地方や、ひな祭りを月遅れで4月3日に祝う地方もあります。
「ひな人形を早くしまわないと嫁に行き遅れる」という言い伝えには、娘の厄を引き受けた人形を早く遠ざけたいから(厄除け説)、きちんと片付けができる子にしつけたいから(しつけ説)、早くしまうほど「早く片付く(嫁に行く)」と考え、早く良い人と結婚し幸せになってほしいから(結婚象徴説)などの意味が込められています。いずれも、娘を思う親心です。
「しまうのが遅いと晩婚になる」って本当?
「ひな人形を早くしまわないと嫁に行き遅れる」という言い伝えがありますが、科学的な根拠はなく、しまうのが遅いと晩婚になるわけでもありません。ただ、迷信とはいえこの言い伝えが説いている、厄除け、片付けの大切さ、娘の幸せを願う親心をどのように捉えるかが、しまう時期や結婚に対する考え方に少なからず影響しているようです。ネクストレベルが実施した調査によると、9割以上の人が「ひな人形を早くしまわないと嫁に行き遅れるという言い伝えを知っている」と回答。「言い伝えを聞いて従っていた」人も6割超えという結果に。
また、35歳以上で結婚経験がない女性に、自分が晩婚なのはひな人形をしまうのが遅かったからだと思うか聞いたところ、「はい」7.3%、「なんとも言えない」14.6%で、およそ5人に1人が言い伝えを否定しきれないと考えていることが分かりました。
時代とともに言い伝えの捉え方は変化していきますが、言い伝えには深い意味があるものなので、そこに目を向けてほしいと思います。
この記事の筆者:三浦 康子
和文化研究家、ライフコーディネーター。わかりやすい解説と洒落た提案が支持され、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、ウェブ、講演、商品企画などで活躍中。様々な文化プロジェクトに携わり、子育て世代に「行事育」を提唱している。著書、監修書多数。