「やりたくないことをやる」のが大人だ
2の「『やりたくないことをやる』のが大人だ」という価値観は、部下のやる気をそぐムダで無意味な仕事、いわゆる「ブルシットジョブ」を他人に押し付けてくる「昭和のおっさん管理職」に多い。理不尽なパワハラと同じく、このような人も組織の中で自分が長く「ブルシットジョブ」に従事してきた傾向が強い。若い世代から「ムダ」や「無意味」と否定されることは、自分の会社員人生を否定されることなので全力でブルシットジョブを「意味があること」だと主張して、自分と同じ経験をしろと迫る。そこで若い世代が嫌がったり、もっと効率的に仕事を進めたりしようとすると、「最近の若い奴は根性が足りない」「我々が若い頃は」という説教モードに入ってしまう。
また、「我慢」を美徳とするので、若い人たちが何か新しいチャレンジを始めようとしたり、時代に合わせて改革に動き出したりすると、「そんなに甘くない」「もっと話し合いを」と否定的なことを言って潰しにかかることも多い。
「昭和のおっさん」からすると仕事は「つらく苦しく、やりたくないことをやるもの」なので、「こっちの方が効率がいい」「こういう改革をすれば現場も楽しい」なんて話を素直に受け入れられないのだ。
「みんな」に迷惑をかけてはいけない
最後の3の「『みんな』に迷惑をかけてはいけない」は、社内イジメやわが子への虐待をする人によく見られる傾向だ。筆者が過去ヒアリングをしたある企業の50代管理職は、部下に対して厳しい指導や叱責を繰り返すうちに、その部下が自殺をしてしまったことがある。
では、なぜそんなにこの管理職は部下につらく当たっていたのかというと、この部下の同僚たちから「仕事が遅い」「態度が悪い」「みんなで一致団結しなくてはいけない時に協力的ではない」というクレームが多く寄せられたからだ。
この管理職からすれば自分はやるべきことをやっただけという意識が強く、「亡くなったのは気の毒だが、会社に迷惑をかけ続けた本人が悪い」と最後まで非を認めなかった。
このような人の多くは、「マジメな組織人」だ。学生時代も校則をしっかり守る優等生に多いタイプで、とにかくこの世で1番重要なことは「みんなに合わせること」だという信仰にも近い思い込みがある。だから、「みんな」と同じことができない、「みんな」が守っているルールや秩序を守れないというだけで、部下やわが子を「人間失格」のように激しくののしるなどの精神的虐待にのめり込んでしまうのだ。