例えば、宮藤官九郎さん脚本、阿部サダヲさん主演のドラマ『不適切にもほどがある!』(TBS系)は1986年の野球部顧問(51)の教師が、現代にタイムスリップするというドタバタコメディーだ。
また、人気コミックが原作の『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』(フジテレビ系)も古い常識や偏見で凝り固まった中年男(51)がフタ回り年下のゲイの友人ができたことによって、価値観をアップデートしていく物語である。
このようなトレンドを聞いて、「オレもそろそろ令和の価値観にアップデートをしなくては」と決意をあらたにしているアラフィフ男性も多いはずだ。ただ、いくらジェンダーだルッキズムだ、コンプライアンスだ、という令和の常識のうわっつらをなぞったところで、根っこの部分にある「昭和の価値観」をアップデートしなくては意味がない。
おっさんの根っこにある「昭和の価値観」とは
筆者は企業危機管理を生業としている関係で、パワハラ、セクハラ、不適切発言などで処分を受ける「昭和のおっさん」を数多く見てきた。彼らの多くは管理職研修やコンプライアンス研修を受けて、知識としては「今の時代これがアウト」ということはよく分かっていた。にもかかわらず、頭にカッと血が上ったり、酒に酔ったりというふとしたきっかけで「昭和の価値観」が頭をもたげてしまうというパターンが非常に多い。
では、それは何か。“令和のコンプラ”を逸脱したおじさんたちの釈明に耳を傾けてきた経験から言わせていただくと、以下の3つがある。
1.人は「痛み」がないと成長しない
2.「やりたくないことをやる」のが大人だ
3.「みんな」に迷惑をかけてはいけない
人は「痛み」がないと成長しない
1に関しては、これまで話を聞いた「パワハラ管理職」の8割以上がこの思考に取りつかれていた。このような人は多くが、学生時代の運動部で体罰やシゴキ、あるいは新入社員時代に上司からの理不尽なパワハラなどを経験しており、それを乗り越えたことで「自分は強く成長した」という思いが強い。だから、それを「良かれ」と思って、部下や後輩に再現をする。
数年前、五輪が期待された新体操の女子選手に対してコーチが体罰をしていたことが大きな問題になったが、このコーチは謝罪会見で「自分も現役の時にそのように指導をされたから」と釈明をした。彼のように表向きは「パワハラ撲滅」と言いながら心の中で「体罰」「シゴキ」などの教育効果を信じている「昭和のおっさん」はまだかなり存在しているのだ。