その言葉は、相手を「動かそう」としていないか?
例えば、上司と部下が業務についてのやりとりをしていたとしましょう。
上司「今日、残業していきますよね!? 例の資料、今日中に頼みますよ」
部下「何だか私が残業するの当然みたいな言い方ですね。資料は作っておきますが……」
次の会話はどうでしょう。
部下「朝、コピー機の上にあった書類、どこにあるか知りませんか?」
上司「知らないね。またどこかに置き忘れてなくしたのではありませんか? 僕はもう外出するし、確認することはできないです。君の周りをちゃんと確認してみてくださいよ〜」
続いては、社長と社員の会話です。
社長「昨日の売り上げ、教えてください」
社員「報告書、既にメールでお送りしておりますので、ご確認いただけますか?」
これらの会話、どれも何だか不快ではありませんか?
同じ仕事をするなら、日々一緒に過ごすもの同士、相手を思いやり、温かい気持ちで愛ある言葉をキャッチボールしていきたいものです。
では上記のようなケースは、どう言い換えれば不快感が消えるのでしょう。
「相手にとって心地いい」を基準に言葉を選べているか?
【会話1】では、上司の「残業していきますよね!?」という断定的な言葉に部下はカチンときています。上司の言い方に不快感を抱くのは分からないでもないですが、それに対する返答は切れ味が悪く、何か含みを持たせたような会話で終わっています。「作っておきます“が……”」には、「嫌々ではあるがやりますよ」といった部下の感情が伝わってきます。
「本当は残業しないで帰りたいのですが、どうも時間がかかってしまいます。パフォーマンスを上げる方法、教えていただけましたらありがたいです」
こんなふうに返された方が、上司も指導に力が入ると思いませんか?
言われてしまった過去に意識を向けてなじるより、これからこうしてほしいという未来の話をした方が心地いいですね。
【会話2】は、コピー機の上にあったはずの書類がなくなってしまい困っている部下と上司の会話です。これは表面上の会話とは別に裏メッセージがある「裏面的交流」と言います。部下は上司に対して「書類の場所、知っていますよね!?」という疑念を持ち、一方の上司は部下に対して「しょうがない部下だ」と少々あきれた気持ちを持って会話しています。
そんな裏のメッセージを感じ合い、互いに不快になるという心理ゲームをしています。
こんなときは、上司は困っている部下の気持ちをくんで「それは困りましたね。その後どこかに持ち出したかなど覚えていないですか?」などと言ってあげた方が、信頼関係も深まるのではないでしょうか?
最後に【会話3】です。社長が社員に対して昨日の売り上げを聞いただけの話ですが、社員は素直に共有しようとせず少し意地悪しています。これは「交差的交流」と言います。「売り上げは?」と聞かれ、事実を事実として「〇万円です」など返答すれば問題ないのですが、あえて変化球を投げています。
「メールでお送りしたのですが、口頭でのご報告が漏れてしまっていたので、お気づきにならなかったですね。失礼いたしました。売り上げは……」と返した方が、やはり気持ちいいコミュニケーションになりますよね。
感情任せの会話は付け焼き刃にしかなりません!
思ったままを口にしたり、安易に文章にするのではなく、まずは相手の立場に立ち、それが心地いい会話になるのか、文章になるのか考えてからにしてみましょう。
嫌味を言うよりは「本当はこうしてほしかった」「こうしてくれると助かる」と素直に伝えればいいですね。また、相手を見下したり疑ったりせず、もっともっと一緒に働いている仲間を信頼してみましょう。
「あなたならできるはず」「あなたなら協力してくれるはず」「私の気持ちを理解できる人なはず」と思いながら伝えてみましょう。
「どうせ理解してくれない」と思いながら伝えるより、ずっとずっと相手はあなたの理想の方向に動き出すはずです。
両想いビジネスコンサルタント/一般社団法人ジャパングッドリレーションアカデミー代表理事。1万人に断られた営業時代の経験から心理学・脳科学などを学び、新規開拓数ナンバーワンに。著書『相手に「やりたい!」「ほしい!」「挑戦したい!」と思わせるムズムズ仕事術』(あさ出版)