1月2日の日本航空の旅客機と海上保安庁の航空機による衝突事故で貨物室に預けられた2匹のペットが犠牲になったことを受けて、フリーアナウンサーの笠井信輔氏がSNSで《海外の航空会社で可能ならば日本でも客室へのペットの持ち込みを検討できないか》と投稿した。それに応える形で、石田さんがこのようにコメントしたことに批判が殺到したのだ。
災害時、非常時にはモノとしてではなく家族として最善を尽くす権利を…。生きている命をモノとして扱うことが私にはどうしても解せないのです
石田ゆり子さんは燃えるべくして燃えてしまった
愛犬家としての素直な意見を述べただけなのに、なぜこんなにも袋叩きにされなければいけないのかと、日本社会の不寛容さを情けなく感じてしまう人も多いだろう。しかし、報道対策アドバイザーとして、企業のSNS発信のアドバイスも行う立場から言わせていただくと、残念ながら燃えるべくして燃えた感がある。もちろん、一般人ならばスルーされる「私見」だが、石田さんのように社会的影響力のある有名人、有名ブランド、大企業が今回のような緊急時に発信するメッセージとしてはあまりに脇が甘い。「動物愛護」に一家言ある人々からボロカスに叩かれるような“3つのNGワード”を全て使っているからだ。以下、順を追って説明しよう。
NGワード1.「ペットは家族」
「ペットは家族」は、愛犬家やペットビジネスをしている企業、団体などでは当たり前のように使われるスローガンなので、何が問題なのだと首をかしげる人も多いだろう。もちろん、平時はなんの問題もない。しかし、今回のような深刻な事故や災害というシビアな場面での使用は控えた方がいい。「家族」という言葉から受けるイメージが人それぞれなので、異なる価値観をもつ人々から執拗(しつよう)に叩かれる「攻撃材料」にされやすいからだ。
その代表が「ペットが家族という世界になったら、警察や消防や自衛隊は命をかけてペットの安全を守らないといけないのか?」という批判だ。
多くの人にとって「家族」はかけがえのない存在なので、もし自宅が火事になったり、大きな災害や事故が起きた時、警察や救助隊に「私の家族を助けてください!」と懇願するだろう。そして、警察や救助隊側もそういうかけがえのない存在だからこそ、自分たちの命を危険にさらしても「誰かの家族」を救出しようとする。
こういう深刻な人命救助の場で、勇敢な救助隊たちの犠牲で救われる「家族」が犬や猫であっていいのか、というのは非常に悩ましい問題だ。石田さんのような愛犬家はそれもしょうがないと思うだろうが、そう思わない人もたくさんいる。第一、亡くなった救助隊の家族はそれで納得するのかという問題もある。
平時は美しいスローガンでしかない「ペットは家族」は、そういう「命とは何か」という論争を引き起こす。実際に事故や災害で「大切な家族」を失った人もたくさんいることを考えると、やはり社会的影響力のある企業団体や個人が事故や災害時に軽々しく「ペットは家族」という発信は控えた方が「安全」なのだ。