シナジーの意味とは? ビジネスでの使い方、種類、効果や生み出す方法を事例とともに解説

「シナジー効果」を意識した施策は、ビジネスにおいて重要なため、言葉の意味を正しく理解しておく必要があります。今回は、シナジーの言葉の意味や例文、効果を生み出す方法についてフリーアナウンサーの新保友映が解説します。

シナジーの意味とは? ビジネスでの使い方、種類、効果や生み出す方法を事例とともに解説
シナジーの意味とは? ビジネスでの使い方、種類、効果や生み出す方法を事例とともに解説

「シナジー」という言葉を耳にしたことはあるけれど、いまいちよく分からない……という人もいるのではないでしょうか。

「シナジー効果」を意識した施策は、ビジネスにおいて重要なため、言葉の意味を正しく理解しておく必要があります。今回は、シナジーの言葉の意味や例文、効果を生み出す方法についてフリーアナウンサーの新保友映が解説します。

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<目次>
シナジー(synergy)の意味とは?
シナジー効果の意味と使い方
シナジー効果の対義語:アナジー効果
ビジネスシーンにおいてシナジー効果が求められる理由
シナジー効果の種類とメリット
シナジー効果を生み出す方法
シナジー効果を活用している企業事例
まとめ

シナジー(synergy)の意味とは?

ビジネスの場で用いられるシナジーは、主に「相乗効果」を表す際に使われます。ただし、前後の文脈やシーンによって、多少異なるニュアンスを含む場合もあるでしょう。それぞれのシーンでは、以下のような意味で用いられています。

【ビジネスシーン】
事業において技術や設備などをかけ合わせることで、相乗効果が生まれること

【一般用語】
2つ以上の事柄を合わせること(共同活動)によって、より良い効果を生み出すこと

【生理学/生物学分野】
筋肉や神経が連携する協調構造のこと ※「筋シナジー」と表現される

シナジー効果の意味と使い方

ビジネスシーンにおける「シナジー」の使い方を紹介します。

【例文】「この2つの特許技術を組み合わせることで、シナジー効果を得られるだろう」
【例文】「AさんとBさんが共にアイデアを出し合うことで、このプロジェクトにシナジー効果がもたらされる」

シナジーという言葉は「シナジー効果」や「シナジーを得る」「シナジー効果をもたらす」といった使い方をします。2つ以上のものや人が互いに影響を与え合い、それによって良い効果が得られる(得られそう)な状態のときに用いられます。

シナジーは、ビジネスシーンでよく使用される「Win-Winの関係」と、似たような意味合いです。片方だけが利益や効果を得るのではなく、互いに良い作用を与えられる状態であれば、シナジー効果があると言えます。

シナジー効果の対義語:アナジー効果

シナジーの対義語にあたる言葉(状態)は「アナジー」です。例えば、M&A後に従業員との意見が合わずコミュニケーションが取れなくなったり、多くの退職者が出てしまったりした場合はアナジー効果と言えます。また、2つの会社がシナジー効果を期待して業務提携を行ったのに、思ったような売上が得られず逆にコストだけがかさんでしまうようなパターンもアナジー効果と言えるでしょう。

アナジーはシナジーの対義語で「マイナスの相乗効果」のことです。2つ以上の物事や人が合わさった際に、良くない結果を生み出してしまう状態のときに使用します。

ビジネスシーンにおいてシナジー効果が求められる理由

ビジネスシーンにおいて、シナジー効果が求められる理由を解説します。

・企業の成長スピードがアップするから
・すでに持っているスキルや技術などを有効活用できるから
・コストカットが実現できるから

1から展開する事業に比べて、シナジー効果を生かしたビジネスモデルはスケールアップにかかる時間を短縮できます。開発や研究にかかるコストを削減することで、結果として収益アップにつながる可能性もあるでしょう。

良い技術を持った企業同士がシナジーを感じて協業することで、画期的な商品やサービスができることも考えられます。事業合併の相乗効果で良いサービスや商品が生み出されれば、一般消費者にとってもうれしい結果となるでしょう。

シナジー効果の種類とメリット

ビジネスにおいてシナジーという言葉をよく使うのは、M&A(合併・買収)に関わるシーンです。以下ではシナジー効果の種類と、それぞれのメリットを紹介します。

・事業シナジー
「事業シナジー」で具体的に得られるメリットとして、以下のようなものがあげられます。事業シナジーは、双方の企業の事業内容を共に行うことで得られる相乗効果のことです。

人材獲得
時間の節約
コスト削減
得意先の拡大
スケールメリット

M&Aによってこのようなメリットを感じられれば「シナジー効果があった」と言えるでしょう。

・財務シナジー
「財務シナジー」とは、M&Aによって互いの資金をうまく活用できたり、節税効果を得られたりする相乗効果のことです。例えばA社に債務があり、B社が大幅な黒字の場合、相殺することで利益幅が少なくなり、これによって節税効果が生まれます。また、M&Aによって統合後の企業全体の余剰資金を増やすことで、事業展開に使えるキャッシュをより多く確保できるようになるでしょう。

・組織シナジー
M&Aによって2つ以上の会社が統合した場合、従業員のチーム体制も一新されることが多くあります。「組織シナジー」は、数値だけでは表せない、従業員のモチベーションアップに関する相乗効果のことです。互いの知識やノウハウ、スキルなど共有したり、より効率的なやり方を学びあったりすることで良いチームワークも生まれるでしょう。

シナジー効果を生み出す方法

シナジー効果を生み出すための方法を紹介します。

・業務提携によるシナジー効果
得意分野が異なる企業同士が手を組むことで、相乗効果が生まれます。例えば、以下のような2社が業務提携をすれば、シナジー効果が得られます。

【A社はこだわりの日本茶を作っている】
 →A社のメリット:ブランディング強化、収益アップ

【B社は高級志向のスイーツを開発している】
 →B社のメリット:差別化できる商品ラインアップを増やせる、収益アップ

このように、業務提携を行うことでシナジー効果が生まれる事例は多くあるでしょう。

・M&Aによるシナジー効果
事業においてシナジー効果を生み出すためには、M&Aが有効です。M&Aによって、技術や設備などを最短ルートで手に入れられるため、スピーディーに事業拡大したい場合には大きなメリットを得られるでしょう。M&Aを行うことで、人材確保や節税、販路や人脈の受け継ぎなど、非常に多くのシナジー効果をもたらしてくれる可能性があります。

・グループ一体経営によるシナジー効果
「グループ一体経営」とは、同じグループ内のシステムや人材をうまく活用しながら経営を行うことです。他社との業務提携の場合と異なり、自社内でのやりとりとなるため、よりスムーズな事業協力が行えるでしょう。グループ内のさまざまな資産(機器やシステムなど)を有効活用することで、シナジー効果を得られます。

・多角化戦略によるシナジー効果
多角的な視点から、自社事業を強化させる取り組みを「多角化戦略」と呼びます。既存事業を軸にすることで、よりスピーディーにシナジー効果を感じやすいでしょう。多角化戦略には主に以下の4種類があります。

(1)水平型多角化戦略
水平型多角化戦略は、自社の既存製品の製造に用いている技術を使い、新製品を開発・リリースすることです。設備機器や販路をそのまま使えるケースが多いため、シナジー効果を生み出しやすいと言えます。

(2)垂直型多角化戦略
垂直型多角化戦略は、既存の事業と近い業界で新規事業を展開していくことを指します。例えば「カーテンのメーカーが、インテリアつながりでソファを製造する」といったイメージです。製造技術の面では知見がないものの、インテリア市場に詳しい点は優位性があります。

(3)集中型多角化戦略
集中型多角化戦略とは、既存事業の技術を生かして新しい市場を開拓する戦略のことです。例えば「産業用のアルコールを作っていた会社がお酒(焼酎)を販売する」といった事例があります。製造工程で類似する部分があったり、これまでの販売経験があったりすることで、新規参入者に比べて事業を軌道に乗せやすい可能性があるでしょう。

(4)集成型多角化戦略
集成型多角化戦略は、異なるビジネスを複数展開していく戦略のことを指します。例えば「通販会社が、通信事業や保険の販売を行っている」といった事例です。直接的な技術や設備の共有はないものの、事業全体のリスク分散ができる点がメリットです。

シナジー効果を活用している企業事例

具体的な企業の事例と、シナジー効果の活用例を紹介します。

・トヨタ自動車とスズキ
自動車製造に携わる2つの企業が、業務提携によってシナジー効果を得られた事例です。業務提携によって、以下のメリットや相乗効果が得られました。

・双方が持つ製造技術を共有できるようになった
・部品を共用することでコストカットできた
・スズキが持っている海外市場をシェアできるようになった


・ソフトバンク
ソフトバンクは主にM&Aによって、シナジー効果を生み出しています。他の通信事業者を買収することで、これらの企業が持っていた設備や顧客を共有し、事業拡大を加速させました。通信事業や出版事業などの多角的な経営戦略で、成長を続けています。

・LIXILグループ
LIXILグループは、グループ企業の会計システムを統合することで、コストカットや効率化を実現させました。これは、グループ経営におけるシナジー効果の分かりやすい事例です。システム統合を行うためには労力の負担が発生するものの、長期目線で見れば会社にとって大きな利益を生み出してくれるでしょう。

・ファミリーマート
多角化戦略によってシナジー効果を得ているのは、コンビニエンスストアのファミリーマートです。コンビニエンス事業の他に、コインランドリーやフィットネスジムの展開など、多角的な経営を行っています。同じビルに、コンビニエンスストアとコインランドリーを設置することで、待ち時間に買い物をしてもらえるため、どちらの事業にもメリットがあります。

まとめ

今回ご紹介した「シナジー」の概念はビジネスシーンで常に意識しておくべき概念と言えます。特に協業や業務提携、M&Aを検討している人は、シナジー効果を得られるかどうかが重要でしょう。どのような施策が良いのか迷ったら、各社の事例を参考にしてみてください。

■執筆者プロフィール
新保友映
新保 友映(しんぼ ともえ)
山口県岩国市出身。青山学院大学卒業後、2003年にアナウンサーとしてニッポン放送に入社。「オールナイトニッポンGOLD」のパーソナリティをはじめ、「ニッポン放送ショウアップナイター」やニュース情報番組、音楽番組など担当。2018年ニッポン放送退社後はフリーアナウンサーとして、ラジオにとどまらず、各種司会、トークショーMC、YouTube、Podcast、話し方講師など幅広く活動。科学でいじめのない世界をつくる「BE A HEROプロジェクト」特任研究員として、子どもたちの授業や大人向け講座の講師も担当している。
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