1月20日、東京・港区西麻布での高級寿司店でのトラブルがきっかけとなり、X(旧Twitter)上で、「港区女子」がトレンド入りした。そもそも港区女子とはいったいどのような女性たちのことを指すのだろうか。
そもそも、港区女子とは?
港区女子とは「ハイステータスな人たちが集まる東京・港区(六本木・麻布など)を活動拠点とし、夜な夜な港区に集う女性たち」のことである。この「港区女子」という言葉を最初に広めたのは、雑誌『東京カレンダー(以下、東カレ)』(東京カレンダー)といわれている。首都圏で生活するアッパー層をターゲットとした『東カレ』の誌面では、港区界隈のラグジュアリーレストランがたびたび紹介され、そこには必ずといっていいほど黒のタイトワンピースに身を包んだ美女が登場する。これが“元祖・港区女子”といえるだろう。
現在も、『東カレ』の公式Webサイトでは、港区女子が主役の小説も連載されている。
港区女子の特徴とは? どのように生計を立てているのか
SNSを中心にたびたび話題に上がる、「港区女子」というワード。筆者も女性誌の取材をする中で、夜な夜な港区に集い、男性たちとパーティーを繰り広げる女性たちに出会ったことがある。彼女たちの特徴から、筆者が考察する港区女子について紹介しよう。
◆港区女子=港区在住ではない
港区女子と聞くと、あたかも港区に住んでいる女性を指すように思えるが、必ずしもそうではない。あくまで“活動拠点”が港区である女性たちであり、住所は港区外であることが多い。彼女たちは、仕事が終わると港区に集い、きらびやかな夜を送る。そして港区外の自身の実家や1人暮らしのマンションに帰っていくのだ。◆タイトな服装を好み、モデル体形
港区女子の多くは、タイトスカートやボディラインがはっきりと分かる黒のニットワンピースや、“女子アナ”のような清楚な服装を好む。いわゆる“男ウケ”を狙ったコーディネートの人が多い。
◆年齢にシビア
港区女子たちは、自身のルックスや若さを武器に、蝶よ花よとハイステータスな男性たちにもてはやされることに快感を覚える。その一方で、いずれ自分たちがいつか失う“若さ”におびえてもいる。それは「30代になって、めっきり声がかからなくなった」という、歴代の港区女子の先輩たちの末路を見てきたからである。◆夢はハイスペックな男性との結婚
港区女子たちの最終目標は、港区に住むハイステータスな男性との結婚であることが多い。筆者が取材した港区女子の未久さん(仮名・26歳)は、「恋愛や結婚に興味がない男性が増えているからこそ、婚活して早くいい人を見つけたほうがいいと思う。こんな時代だからこそ、しっかりお金を稼いでいる男性と結婚して、専業主婦になるのが女の幸せ」といった価値観を持っている。
これは共働きが主流の現代において一見“時代遅れ”のようにも捉えられるが、そもそも専業主婦志望で、港区に婚活をしにきている感覚の港区女子たちも多いのだ。一方で、“港区おじさん”の人脈を駆使し、自身の事業を立ち上げようと奮闘する港区女子もいる。
◆職業は“自称モデル”が主流だったが、現在は会社員も多い
港区女子といえば、モデルやタレントを自称しつつ、実際のところは何で生計を立てているのか不明……というイメージもある(ラウンジ勤務、男性からの援助で生活しているというケースも)。しかし筆者は最近、昼は会社員として働き、夜になると港区に現れる港区女子たちにも多く遭遇した。コロナ禍の自粛モードの影響か、自身の将来について真剣に考えた港区女子も多いのかもしれない。
年をとることにおびえる港区女子たち
港区女子といっても、その特徴をひとくくりにすることは難しい。当初、港区女子はきらびやかな生活を送る女性たちを示す言葉として流行したが、現在では、SNS上で「美や若さをお金に換える女性=港区女子」と揶揄(やゆ)されることも多い。
確かに、筆者が出会った港区女子たちはみんな「もう〇〇歳だから」「〇〇歳までに」と口にし、年をとることにおびえていた。
港区女子のように、美や若さを求める人々が多くいることについて、2012年公開の映画『ヘルタースケルター』で、刑事とアシスタントが言及するシーンがある。
「どうして神様は、私たちにまず若さと美しさを与え、そして奪うんでしょう?」というアシスタント女性の問いに、刑事の男性は「その2つはイコールじゃない。若さは美しいけれど、美しさは若さじゃない。美はもっと深くて複雑で、あらゆるものを豊かに含んでいる」と答える。
人生、若さを失ってからのほうが長い。美しさ=若さと考える港区女子の10年後はどうなっているのだろうか。
この記事の筆者:毒島 サチコ プロフィール
ライター・インタビュアー。緻密な当事者インタビューや体験談、その背景にひそむ社会問題などを切り口に、複数のWebメディアやファッション誌でコラム、リポート、インタビュー、エッセイ記事などを担当。