ビジネスシーンで多くの人が使う「マター」という言葉。基本的な意味は理解しているものの、うまく文章に使えないと悩んでいる人はいませんか。
どのようなシーンでマターを使うとスマートなのか、例文や具体例を現役フリーアナウンサーで日本語教師の阿部佳乃が詳しく解説します。
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<目次>
・ビジネス用語「マター」の意味とは
・ビジネスシーンにおける「マター」の使い方と例文
・「マター」を使うときの注意点
・「マター」の類語・言い換え表現
・まとめ
ビジネス用語「マター」の意味とは
ビジネスシーンで使われる「マター」の意味と語源を解説します。・マターの意味
マターは英語で「matter」と書き、「問題」「物事」などの意味を持っています。しかし、日本のビジネスにおけるマターの意味は少しニュアンスが異なり「~の責任」「~が担当する」という際に使われます。
例えば社内で「その件は、先方マターだね」と言われたら、先方(取引先)が責任を持っているという意味で、指示を仰ぐべき内容であると判断できます。会話の中で「〇〇マターでお願い」と使うときもあれば、資料上で「A社との打ち合わせは〇〇さんマター」など、連絡事項的に使用するケースもあります。
・マター(matter)の語源
マターはラテン語が由来であるといわれています。英語のマテリアル(material)に関連しているともいわれており、由来は諸説あるようです。ビジネスシーンにおける「~の担当で」といった使い方は、日本独自のものであることを把握しておきましょう。
ビジネスシーンにおける「マター」の使い方と例文
ビジネスシーンでマターを使う機会は多くあります。ここでは、使い方の例文を紹介します。・取引先や顧客+マター
取引先や顧客と合わせた場合「~の考え」「~の判断」といったニュアンスで使われることもあります。
【例文】「雨が降った際に撮影を続行するかは、クライアントマターですね」
「クライアントマターなので、勝手に進められません」
・特定の個人+マター
特定の個人名と合わせて使うときは「〇〇さんの担当」と同じ意味です。
【例文】「顧客対応は、受付の佐藤さんマターでお願いします」
「山田さんマターのホームページ更新がまだできていないようです」
・役職名や部署名+マター
役職や部署名と合わせて使うときも、担当者が誰であるか表しています。個人名の場合よりも責任の所在を明確にするニュアンスが含まれていることもあります。
【例文】「予算の決裁は部長マターのため、私では判断できません」
「新入社員の社内案内は、人事部マターでお願いします」
・疑問+マター
誰がやってくれるのか確認したい場合には以下のような例文を使用します。
【例文】「電球がないけれど、資材の購入って誰マターだっけ?」
「会議用の弁当発注は、どこの部署マターなの?」
・自分+マター
「自分がやります」と伝えるときには、以下の例文を参考にしてください。
【例文】「A社へのアポ取りは自分マターなので、任せてください」
「その什器(じゅうき)の設置は、自分マターで大丈夫です」
・政治的な観点+マター
業務上で政治的な内容が絡んできそうな際に「政治マター」を使うケースもあります。
【例文】「この件は政治マターになりそうだから、注意してとりかかろう」
「マター」を使うときの注意点
マターは便利な言葉ですが、ビジネスシーンで使用する際は以下のことに注意しましょう。・目上の人には役職名や敬称をつけること
マターの前に個人名をつけるときは、敬称が必要です。「山田マターで」といった書き方や言い方は少し乱暴に見えてしまうため「山田さんマター」としましょう。当然ながら、目上の人や上司にも敬称をつけて使ってください。
・同じ会社の社員やスタッフ間で使うのが基本
マターは比較的ラフな言葉になりがちなので、社内での使用をメインにしましょう。関係性の浅いクライアントに「御社(貴社)マターでお願いしますね」などと表現すると、場合によっては失礼だと感じる人がいるかもしれません。
・「マター」という言葉を多用しない
社内での使用を主にしている場合であっても、マターの多用には注意しましょう。中にはマターを使い慣れていない人もいるため、日本語で表せる部分についてはあえて使わなくても良いかもしれません。業種や社内の慣習によっても異なるため、場に応じて使用すると良いでしょう。
「マター」の類語・言い換え表現
マターの類語や言い換え表現を紹介します。マターが使えない、または使いにくいシーンでは以下の日本語に置き換えてみてください。・案件
例えば「佐藤さんマターの試食会」という文章であれば、「佐藤さんの案件の試食会」と言い換えられます。ややニュアンスは異なるものの、類義語として使えます。
・担当
「担当」はそのままマターに置き換えて使用可能です。「佐藤さんマター=佐藤さんの担当」となり、同じ意味として伝わるでしょう。
・決定権
決定権を持つ人=担当者(責任者)となるため、担当と同じく類義語として文章に使えます。「営業部マター」と言われたら、営業部が決定権を持ち、業務にあたることを指します。
・管轄
ビジネスシーンにおける「管轄」は、担当に近いニュアンスを持っています。「営業部マター=営業部の管轄」と意訳できるため、類義語として使えるでしょう。
まとめ
日々の業務に役立ちそうな「マター」という言葉ですが、つい、使いすぎてしまうことがあるかもしれません。業務内容や職種によって、従業員がマターを多用しているケースと、そうでない場合があります。状況に応じて、適宜、類義語と使い分けすると良いでしょう。■執筆者プロフィール 阿部 佳乃(あべ よしの)
アナウンサー×日本語教師/元TBSテレビあさチャン!報道リポーター。大学卒業後、佐渡ケーブルテレビを経て、UX新潟テレビ21/NHK水戸放送局キャスター/とちぎテレビアナウンサー。現在は、アナウンス講師、ナレーター、イベント司会等、フリーランスで活動しながら、大学や日本語学校で留学生に「日本語」を教えている。趣味は、旅行(47都道府県制覇)と声楽、読書。