西島秀俊さんが主演を務めるドラマで、初回は1月14日に放送。平均世帯視聴率も2桁を超え、TVerでの見逃し配信の再生数も好調な様子です。
今回、名作になりそうな予感の『さよならマエストロ』について、魅力と見どころを元テレビ局スタッフが紹介。TVerやTBS FREEにて視聴できるので、第1話を見ていない人も、見るキッカケにしてもらえればと思います。
オーケストラを題材としながら父娘の絆の再生を描く
まずはドラマのあらすじと、第1話の内容を紹介します。西島さん演じる主人公の夏目俊平は、世界的に評価を獲得したすご腕の指揮者です。その娘である響を芦田愛菜さんが演じ、この2人を中心とした父娘の絆の修復が描かれていきます。俊平は第1話で、すでに本格的な指揮者の活動を辞めていることが判明。響との関係が原因だと説明され、5年前に起きた騒動が関与しているようです。響も過去に音楽を志していたことがドラマの中で描かれ、どうやら俊平との間に問題があったことを想像させます。
ドラマは、プロローグを挟んで、俊平が子どもたちの面倒を見るために、日本へ久しぶりに帰ってくるところからスタート。久しぶりに出会った響は父親を軽蔑したような態度で接し、心のわだかまりが修復不可能なほどに広がっていることを暗示します。
また、俊平は響が勤める晴見市役所の観光課勤務である、古谷悟史(玉山鉄二)が団長の市民オーケストラ「晴見フィルハーモニー」への入団を勧められます。これは、俊平を日本に呼び寄せた妻・志帆(石田ゆり子)が策略したもの。指揮者としての入団を何度も断ろうとする俊平ですが、いつの間にか団員たちの熱意に推され、演奏会で指揮を行うことになります。
この「晴見フィルハーモニー」は、市の財政難により、残り3カ月での廃団が決定。俊平は、危機的状況の「晴見フィルハーモニー」の活動に参加し、さまざまな奇跡を起こすことになります。
また、第1話の最後では、海外にいるはずの志帆がなぜか古谷と一緒に住んでいるところが描かれるなど波乱含みの展開。ここまでが、初回放送のあらすじとなります。より細かいエピソードやSNSでの評判を見たい場合は、以下の記事を参照してください。
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本格的な音楽と西島秀俊の魅力あふれる演技にくぎ付け
このドラマの魅力は、なんといってもオーケストラの演奏を中心に、音楽であふれているところです。今回は、東京音楽大学教授の世界的指揮者・広上淳一さんがオーケストラを全面監修。東京音楽大学がオーケストラの演奏部分を全面バックアップし、本格的な音楽を楽しむことができます。これまでオーケストラを題材としたドラマといえば、『のだめカンタービレ』(フジテレビ系)や、『リバーサルオーケストラ』(日本テレビ系)などがあります。どの作品もファンが多く、ドラマを見ながら本格的な音楽の世界ものぞけることで人気。今回の『さよならマエストロ』も同様で、楽器の役割やクラッシックについて学ぶことができます。
さらに、父娘の確執と合わせ、「晴見フィルハーモニー」に所属する団員たちの心の機微も音楽を通じて描かれます。
第1話では、高校時代のコンクールで失敗したトラウマを持ち、演奏を心から楽しむことができない内村菜々(久間田琳加)がピックアップされます。人一倍真面目な性格ながら本番に弱い菜々のトラウマを克服するシーンを描いており、俊平の魅力を表現した名シーンに。
菜々は、俊平とベートーベンの『運命』の解釈を巡り、自分という存在を認識し心を通わせることになります。何事にも自信がない菜々はネガティブな発言ばかりしますが、俊平は面白い解釈だと大絶賛。
俊平の魅力は、これまでクールで孤高の存在としてイメージされてきた指揮者を、他の団員と友好的な「仲間」だと見せているところです。俊平は家事も全くできなく、社会性がない中年男性。しかし、音楽に関しては情熱を燃やし、人々の心を奮い立たせる能力を持ち合わせます。
今回、菜々へのアドバイスだけでなく、俊平は他の団員にも独特の感性で楽器の演奏に関するコツを指導。その際、心から音楽が好きなことを体全体で表し、包容力とやさしさを感じさせます。そんな俊平を、西島さんは丁寧に表現してドラマに高揚感を生み出しています。
この俊平が持つあたたかさと情熱こそが、他のオーケストラを題材とした作品との最大の違いだと感じます。今後は、新たな団員が加入する描写もあり、俊平がオーケストラをどうまとめ上げ、音楽で心を通わせていくかが、最大の見どころです。
そんな西島さんといえば、クールな男性を演じているイメージが強いですが、『ユニコーンに乗って』(TBS系)の小鳥智志のように、どこか冴えない中年男性を演じることも得意。
硬軟使い分けられる演技力を持ち、今回の俊平役はまさにハマり役です。指揮をする時に見せる楽しそうな表情が必見で、西島さんの演奏シーンを見るだけでも価値のあるドラマとなります。