部屋にこもって出てこない…。“思春期の子ども部屋”問題→「広くて快適すぎると危険」と専門家が警鐘

子どもが自室にこもって出てこない。全然掃除しないのに親が入ろうとするのを嫌がる……など。「子ども部屋」によくあるお悩みについて、教育と家づくりのどちらにも精通する専門家に話を伺った。

子ども部屋
子ども部屋づくりについて悩む時期が過ぎたら、また新たな問題や悩みがやってくる
子どもがある程度成長したから自室を与えた。しかしそこから新たな問題や悩みが発生することも少なくない。子どもが思春期になると接し方や対応も難しくなり、頭を悩ませる親御さんも少なくないだろう。

今回、500人以上の子育て中の方に子ども部屋に関するアンケートを実施。そのなかで多かったお悩みについて、子どもの才能を引き出す家づくりを展開する大阪府の工務店リブランドさんに話を伺った。 

子ども部屋にこもってしまうのを防ぐには?

All About ニュース編集部が実施したアンケートでは、「子ども部屋は必要だと思いますか?」という問いに対し、86%の親御さんが「必要」と答えた。しかし一方で、5%の方が「必要ない」とも答えている。
子ども部屋は必要だと思いますか?
【アンケート】子ども部屋は必要だと思いますか?
必要ないと答えた理由の多くは、「個室にこもってしまうリスクがあるから」「目の届く範囲にいて欲しいから」というものだった。

子どもが思春期になると余計に親子間のコミュニケーションはとりにくくなることが多いが、どのように考え、接していくべきなのか。

子どもの才能を引き出す家づくりを展開するリブランドの見谷さんはこのように述べた。

「家づくりの観点からお話しすると、子ども部屋をあまり広く快適にしすぎないことが大切です。全てが完結する空間にしてしまうと、お子さんはそこから出てこなくなってしまいます。そして何より大切なのが、普段の接し方です」

なかなかコミュニケーションもとりにくい思春期の子どもとの接し方。一体どうすればよいのか。

「たとえば、『おはよう』や『おかえり』などの挨拶に対し返事がなくても、とがめないで毎日笑顔で続けてください。こちらはいつでもあなたを受け入れる体制だよ、あなたの存在を認めているよ、ということをアピールするためです。また、リビングにいるお子さんに対し、勉強しなさいなどと口うるさく言うこともNGです。リビングではリラックスできず、自分の部屋にこもる原因になってしまいます」

「“笑顔で”というところがなかなか難しいのですが、大切なんですよね」と見谷さん。完璧にはできないかもしれないが、できるだけ心がけていきたいマインドだ。

子ども部屋の掃除や洗濯物の片づけは本人にさせるべき?

アンケートのなかでこの質問も非常に多かった。自室を与えたものの、子どもがまったく掃除をしない、片づけない。でも部屋に入るのは嫌がられる。どうしたらいいのかというものだ。

「部屋には勝手に入らない、勝手に掃除をしないのが基本です。ここで気をつけたいのが、『キレイにしなさい』という言葉。母親目線とお子さんが感じるキレイの状態は違うということを頭に入れておきましょう。『〇〇はここに片付けようね』や『〇〇はどこにしまうのがいいと思う?』など、具体的かつ一緒にやるスタンスが大切です」(見谷さん)

とはいえ、そう簡単にはうまくいかないのが親子関係。ある程度大きくなった子どもには自発的にやってほしい、というのが親の願いだ。

「一緒に暮らしている以上、最低限のルールはあっていいと思います。週に1回家族みんなで掃除をする日をつくる、または子ども部屋は週に1回自分で掃除をするルールをつくる。そして、もしルールを守れなかったら、100円の罰金など“重くない罰則”をつくってゲーム感覚でできるようにします。そして大切なのが、そのルールを定期的に見直すことと、親もしっかり守ることです」(見谷さん)

「親もしっかり守ること」という言葉にドキッとしてしまった人もいると思うが、同じ屋根の下暮らす家族のルール。みんなで決めて守り、時に変化させながら、楽しく生活していけるのは理想の姿だ。

 

鍵はつける?つけない? 子ども部屋にあるとよくないもの

つい子ども部屋には希望するものを置いて充実させてあげたくなるが、あるとよくない影響を与えるものはあるのだろうか。

「ドアに鍵は設けない、テレビは置かないことが基本です。最近はパソコンやスマホで動画も観られる時代なので、そもそもテレビを必要としていないかもしれませんが、先にも述べたように子ども部屋は“快適にしすぎない”ことが重要です」(見谷さん)

さらに、子ども部屋のレイアウトなども影響があるのだそう。

「勉強机に座ったときに視界にベッドが入るレイアウトはNGです。ベッドが目に入ると、心理的に休息を求めるようになってしまいます。また、視界に色々なものが目に入ると気が散ってしまうので、壁に向かって勉強する。そして壁には勉強に関わるもの以外は貼らない、というのがおすすめです」(見谷さん)

また、目が疲れないように手元を照らすライトを設置したり、勉強するときと休憩するときで照明を変えられるように調光式のライトにするのも効果的だということで、ぜひ参考にしたい。

子ども部屋はきょうだいでシェアしても大丈夫?

子どもが小さいうちはきょうだいで同室だったり、部屋数の関係できょうだい一緒にせざるを得ないといった場合もあるだろう。きょうだい同室であっても、子ども部屋は与えた方がよいものなのだろうか?

「子ども部屋はプライバシーを守るためのスペースというのが私たちの考えです。その定義からすると、できれば1人1室の方がおすすめです。とはいえ、それが難しい場合もありますよね。たとえきょうだいが同室であったとしても、親の目を気にしなくてよい場所、自分時間を楽しめる場所があることは大切。子ども部屋は用意してあげましょう。ただし、異性の場合は部屋は分けてあげた方がよいでしょう」(見谷さん)

収納で仕切り壁をつくったり、カーテンやブラインドで仕切ったりすることも可能なので、1つの子ども部屋をうまくシェアする工夫をしたいものだ。

「子ども部屋のつくり方」に対して悩む時期が過ぎ去ると、今度は「子ども部屋の使い方」に対して悩む時期がやってくる。子ども部屋の悩みは、コミュニケーションの方法や接し方、自発的な行動の促し方など思春期の子育ての悩みといっても過言ではない。

オープンな心とクローズな空間を上手に駆使しながら、良好な親子関係を築いていきたいものだ。
 
取材協力:株式会社リブランド
大阪府吹田市にある工務店。建築の専門家と教育に携わる専門家が、最新の脳科学に基づいた「子どもの才能を引き出す家」を提案。デザインはもちろん、生活環境やその後の暮らしまで考え抜かれた独自の設計が魅力。
https://www.liveland.co.jp/
この記事の執筆者:岩﨑 未来
編集者・ライター。地方移住&大工の夫と自宅をリノベーションした経験から、ソーシャルメディアや住宅関係の執筆を多数手掛ける。3児の母。
https://brightwrite.biz/
 
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