「自由な働き方」にイラッとするおじさんたち
例えば、40〜50代のおじさん世代からすれば、「若い時はとにかく仕事を早く覚えるために、振られた仕事はなんでもこなし残業も厭わず、家には帰って寝るだけくらいでいい」という思い込みが強い。20年前、30年前は自分自身もそうやって成長をしたきた。そういう働き方が正しかったということは「今の自分」が証明しているという自負があるからだ。
そのため、数年前に入社したばかりのZ世代社員が「定時退社」「在宅勤務」など自由な働き方を求めると、ついイラッとしてダメ出しをしたりするのだ。
一方、Z世代側からすれば、そんなおじさん世代の根性論は「時代遅れ」以外の何者でもない。疲労と睡眠不足でダラダラと残業をしていても、集中力が落ちてパフォーマンスが下がるだけなので、定時に上がってスポーツをしたり、友人らと楽しく過ごしたりしてリフレッシュして翌日の仕事に打ち込んだ方が効率的だと考えているのだ。また、Z世代は仕事しやすい環境は「人それぞれ」と捉える傾向があるので、あまり時間や場所に縛られる必要もないと考えている。
そんなおじさん世代とZ世代の間に「働き方」に対する考えの違いは、さまざまな調査でも明らかになっている。分かりやすいのは、パーソル総合研究所が2022年8月に公表した「働く10,000人の就業・成長定点調査2022 20代社員の就業意識変化に着目した分析」である。
つまり、おじさん世代になればなるほど、「仕事をする時間や場所は会社の指示に従うべき」と考えている人が多くなるということなのだ。
サラリーマンにまん延する日本特有の「病」
よく言われことだが、日本のサラリーマン組織は「年功序列」という特徴がある。社歴が長くなればなるほど、個人の裁量も増えるし、権限も認められる。つまり、「自由度」が上がる。しかし、なぜか40〜50代というベテランになればなるほど、まるで新入社員のように会社のルール、会社の命令に絶対服従のスタンスが強まる。ストレートに言ってしまうと「社畜」になっていくのだ。なぜこうなるのか。筆者は日本のサラリーマン特有の「病」によるところが大きいと考えている。
実は日本国内ではあまり話題に上がらないが、この「病」は近年、世界で注目されている。
例えば、世界最大級の人材サービス企業、ランスタッドが2019年12月に発表した、「ワークライフバランスなどに関する国際調査」によれば、日本人の「仕事満足度」は世界最低だったという。
この傾向は40代〜50代のおじさんたちが今のZ世代のように「新人類」なんて呼ばれていた時代からそれほど変わらない。
NHK放送文化研究所が1993年から参加している国際比較調査グループISSPでも、日本人の仕事に対する満足度はずっと低空飛行を続けている。2005年調査での満足度は73%で、世界32カ国と地域中28位。2015年の調査では満足度はさらに落ちて60%となっている。
また、このISSPの2015年調査によると、「自分の職場では、職場の同僚の関係は良い」と思っている人の割合において、日本は調査対象37カ国中で最下位になっている。
つまり、実は日本のサラリーマンは、世界一仕事を苦痛に感じ、世界一職場に不満を抱きながら働く「病」にかかっているのだ。