11月7日、生殖補助医療の在り方を考える超党派の議員連盟の総会が開催され、主に第三者による精子、卵子の提供、それによって生まれた子どもの「出自を知る権利」などのルールを定める法案のたたき台がまとめられた。
いまだ法整備が整っているとはいえない「生殖補助医療」。今回は、そのたたき台から1つ、「精子、卵子提供を受けられるのは法律婚の夫婦に限定する」というルールについて取り上げる。
このまま可決したら、同性カップルは日本で子どもを産めなくなる?
7日午後、将来子どもを持ちたいと思う多くの同性カップルに衝撃が走った。第三者の精子、卵子提供を受けられるのは「法律で定められた婚姻関係にある夫婦のみ」という情報がX(旧Twitter)で出回ったからだ。これまで同性カップルが子どもを持つには、里親になるほか、女性カップルなら精子の提供を受け自分で産むなどの手段があった。それが今後日本ではできなくなる可能性が高まった。数は多くはないが、確実に彼らは存在し、“家族”という形で異性カップルと同じように子育てをしている。そんな彼らの姿を見て、「自分もいずれは」と考えていた同性カップルは多いだろう。
筆者もちょうど子どもを産むかどうかについて考えていた時期だった。一般的に言えば「出産適齢期」に当てはまる年齢だ。しかし、仕事とのバランスや家族へのカミングアウトなど、考えなければいけないことは多く、すぐに「産む」という決断はできていなかった。それが今回、一転した。法案の「婚姻関係」という部分が修正されず、今のまま国会に提出され、可決されてしまったら、その瞬間、「日本で正式な手段にのっとり子どもを産む」という選択は消える。
人生の選択を政府によってせかされるマイノリティたち
こういった「人生における重大な選択の決断」を、いとも簡単に人に強いる政府。異性愛者なら、パートナーと話し合い、「いつどのタイミングで産むか、あるいは産まないか」を決めることができる。しかし、同性カップルからはその選択肢が消えようとしている。「妊娠して産むなら今しかない」「急いで産んで、その決断に本当に自信が持てるのか」「どうすれば良いのか分からない」……さまざまな気持ちが多くの同性カップルの中に思い浮かんでいるだろう。
政府関係者でさえも差別発言。岸田首相「社会が変わってしまう」
今後、同性カップルは自分と血のつながった子どもを持つことができなくなるかもしれない。そういった不安が今セクシュアルマイノリティ界に漂っている。同性カップルのみならず、選択的シングルマザーやノンセクシュアル(恋愛感情は抱くものの、性的欲求は抱かない)の人たちも影響を受ける。「婚姻関係にある夫婦のみ」という言葉は多くのマイノリティに打撃を与えるひと言だ。今の日本は同性婚が法整備されていない、G7唯一の国である。
2月には同性婚について「見るのも嫌だ。隣に住んでいたら嫌だ」と発言し、その後首相秘書官を更迭された荒井勝喜氏や、「社会が変わってしまう」と発言した岸田文雄首相ら、政府関係者でさえ差別的な発言が見られ、そのたびこの国で生きているセクシュアルマイノリティの人々は心を痛めている。