地球温暖化が進んでいるといわれる中、2023年も日本に台風が接近、上陸し、大きな被害をもたらしています。温暖化によって今後、台風の数は増えるのでしょうか? 気象予報士の片山美紀が解説します。
(今回の質問)
地球温暖化によって、台風の発生頻度は増えますか?
(回答)
現在までのところ、台風の発生数に大きな変化の傾向は見られません。ただ今後温暖化が進行していくと、勢力の強い台風が増えるおそれがあります。
「エネルギー源」が増えることで、勢力の強い台風が増加
文部科学省と気象庁がまとめた「日本の気候変動2020 —大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書—」によると、現在までのところ、台風の発生数や日本への接近数・上陸数には、長期的な変化傾向は見られません。
台風を含む熱帯低気圧全体の数は減少するという予測もありますが、知見が十分でないことから、その確信度については科学者の間でも評価が分かれています。
台風の数だけでなく、個々の台風の勢力がどうなるかにも注目すべきです。空気は暖かくなるほど、たくさんの水蒸気を抱え込む性質があります。ですから、温暖化が進むと台風のエネルギーになる大気中の水蒸気量がさらに増加していき、台風が発達しやすくなるという予測があるのです。台風に伴う雨や風も、さらに強くなるとみられています。
また暖かい期間が長くなればなるほど、大気中の水蒸気量も増えるおそれがあります。それに伴い、台風の発生しやすいシーズンも延びる可能性があります。
大雨の発生頻度が増えるおそれも
また、温暖化の影響で気を付けたいのが、大雨の発生する頻度が上がるおそれがあるという点です。実際に、近年は短時間での大雨が増えています。例えば、1時間に80ミリ以上の猛烈な雨の発生する頻度は1980年ごろと比べて、2倍程度に増加しています。
地球温暖化の進行によって、今後、土砂災害や浸水害、洪水害のリスクはますます高まるのではないかと考えられます。これまで大きな被害を経験したことがない地域でも、災害が発生する場合があるかもしれません。
激しい大雨の際には不要不急の外出を控える、早めの避難を心がけるなど、安全を守る行動を取っていただければと思います。
1991年生まれの気象予報士。現在は『首都圏ネットワーク』(NHK総合)などで気象解説を担当。防災情報を正しく活用してもらうための普及啓発として講演活動にも取り組む。毎日の天気予報では空や季節の変化を感じる楽しみを、いざという時は的確な防災情報を伝え、暮らしに役立つ天気予報を目指す。目標は「あなたの半径5メートルの暮らしを変える気象予報士」になること。