なぜ台風は8~9月に発生することが多いの?【気象予報士が解説】

なぜ日本では台風が8~9月に発生することが多いのでしょうか。気象予報士の片山美紀が回答します。

台風発生の流れ
台風発生の流れ
2023年はお盆期間中に新幹線がストップするなど、台風による大きな影響が出ましたが、何となく台風に関するニュースは8~9月に聞くことが多いと思っている人もいるのではないでしょうか。なぜ台風はこの時季に発生することが多いのでしょうか。気象予報士の片山美紀が回答します。
 

(今回の質問)
なぜ台風は8~9月に発生することが多いの?

 

(回答)
台風は1年中発生していますが、特に発生する数が多いのが夏から秋、7~10月にかけてです。ちょうど日本に接近する数もこの時季に多いので、8~9月に台風が発生するイメージがより強いのではないでしょうか。


以下で詳しく解説します。
 

台風は年間でおよそ25~26個発生している

台風は夏や秋だけでなく、1年中発生しています。平年では年間でおよそ25~26個になります。

台風の平年値(1991~2020年の平均)出典:気象庁
台風の平年値(1991~2020年の平均)出典:気象庁

ただ、冬や春に発生した台風は日本に近づくことはほとんどありません。これには、日本付近の風と海面水温に理由があります。
 

台風はどうやって発生するの?

一般的に台風は、海面水温が26~27℃以上の非常に暖かい海で発生します。冬から春は、日本の近くの海はそこまで暖かくないため、より海面水温の高い南の低緯度の海で台風は発生しています。

台風は海面水温が26~27℃以上の暖かい海で発生
台風は海面水温が26~27℃以上の暖かい海で発生

 

台風は自力ではほとんど動けず、周辺の風によって移動する

そして台風は自分の力ではほとんど動けず、周辺の風に流されて移動していきます。このため、低緯度の海で発生した台風は、その周辺で吹く東寄りの風に流されて西へ西へと進んでいきます。フィリピンやベトナムの方に進んでいくので、日本にはあまり近づかないんですね。

風に流されて西へ進んでいく
風に流されて西へ進んでいく

夏になりますと日本の南で太平洋高気圧が張り出しを強めてきます。この高気圧に伴う時計回りの風に流されて、台風は北へと進んでいきます。

太平洋高気圧に伴う時計回りの風により北へ進む
太平洋高気圧に伴う時計回りの風により北へ進む

そして、日本の近くで吹く偏西風に流されて東へカーブして本州付近に進んでくることが多くなってくるんです。

偏西風に流されて日本の本州付近に進んでくる
偏西風に流されて日本の本州付近に進んでくる

冬や春にたとえ台風が北上してきたとしても、日本の近くは海面水温が低いので、台風のエネルギーになる水蒸気を十分に得られず、衰えてしまうことが多いのです。
 

冬に台風が多く上陸する国もある

日本に台風が近づくのは夏から秋のはじめまでが中心ですが、冬も海面水温が高く、偏東風の影響を受ける地域では台風シーズンがまだ続きます。

例えば、2021年12月16~18日にかけて台風22号が通過したフィリピンでは、強風や洪水により400人を超える犠牲者が出ました。また、フィリピンでは2013年にも11月に台風30号が上陸し、大規模な高潮が発生しました。この台風の影響で、6200人以上もの人が犠牲になり、フィリピンにおける災害史上最大級の被害だともいわれました。
 

この記事の回答者:片山 美紀
1991年生まれの気象予報士。現在は『首都圏ネットワーク』(NHK総合)などで気象解説を担当。防災情報を正しく活用してもらうための普及啓発として講演活動にも取り組む。毎日の天気予報では空や季節の変化を感じる楽しみを、いざという時は的確な防災情報を伝え、暮らしに役立つ天気予報を目指す。目標は「あなたの半径5メートルの暮らしを変える気象予報士」になること。
 
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