気象情報で見聞きしがちな「大型の台風」という表現。「強い台風」という表現もあり、2つの違いがよく分からないという人もいるのではないでしょうか。気象予報士の片山美紀が解説します。
(今回の質問)
「大型の台風」と「強い台風」の違いは何ですか?
(回答)
台風の大きさを表したのが「大型の台風」。強風の吹く範囲が広い台風を指します。一方、台風の強さを表したのが「強い台風」で、中心付近で吹く風が強い台風を指します。
以下で詳しく解説します!
「大型の台風」が東京に来ると、大阪まで強風域に
台風の大きさは「強風域の半径」で決まります。強風域とは、風速15メートル以上の風が吹いている、もしくは吹く可能性がある範囲のこと。強風域の半径が500キロ以上、800キロ未満に達する台風を、「大型の台風」と定義しています。500キロというと東京〜大阪間くらいの距離ですから、例えば「大型の台風」の中心が東京にある場合、大阪でも強い風が吹くおそれがあるということです。台風の中心から離れた地域でも油断せず、風への備えをしておきましょう。
さらに強風域の半径が800キロ以上に達するものは、「超大型の台風」と呼ばれます。この階級の台風が来ると、本州がすっぽり覆われてしまうほど非常に広い範囲が強風域となるおそれがあります。
「強い台風」の接近時は「暴風」に警戒を
台風の強さは「最大風速」で決まります。「強い台風」とは最大風速が33メートル以上、44メートル未満の台風のことで、雨だけでなく、暴風により一層の警戒が必要になります。また、接近すると急激に風が強まるおそれもあります。
強い台風の最大風速を超えるものは「非常に強い台風」、さらに上には「猛烈な台風」という階級もあります。
ちなみに、「大型の台風」と「強い台風」どちらの特徴も持つ場合は、2つを組み合わせて「大型で強い台風」と呼ぶこともあります。
台風情報は常に確認し、強風・暴風対策を
台風の大きさ、強さの定義は気象庁が決めています。ただし、定義や表現は必ずしも変わらないとは言い切れません。
例えば、以前は台風の基準に達しないものを指す「弱い熱帯低気圧」という表現がありましたが、「弱い」という言葉では油断を生むおそれがあるということで、2000年に廃止されました。
台風に関しても、「強い」という言葉がないから安心、とは言い切れません。個々の台風の情報を常に確認し、備えをしていただきたいと思います。
対策としては、飛ばされやすいものは屋内にしまっておくことが大切。加えて、交通機関にも影響が出るおそれもありますので、不要不急の外出はしないように心がけてください。また、停電に備えて非常用ライトなどの対策グッズを準備しておくといいでしょう。
1991年生まれの気象予報士。現在は『首都圏ネットワーク』(NHK総合)などで気象解説を担当。防災情報を正しく活用してもらうための普及啓発として講演活動にも取り組む。毎日の天気予報では空や季節の変化を感じる楽しみを、いざという時は的確な防災情報を伝え、暮らしに役立つ天気予報を目指す。目標は「あなたの半径5メートルの暮らしを変える気象予報士」になること。