台風による交通機関の乱れや川の増水、土砂災害などに警戒するためにも、いつ、どの地域に台風が接近しやすいのか、知っておきたいですよね。気になる「台風の接近傾向」について、気象予報士の片山美紀が解説します。
(今回の質問)
台風が近づきやすい地域はありますか? 日本だとどこですか?
(回答)
一般的な傾向として、夏は沖縄や西日本に、秋になると東日本に近づくことが増えます。台風は近づきやすい地域が季節によって少しずつ変化していくのが特徴です。
以下で詳しく解説していきましょう!
8月までは沖縄や西日本、9~10月は東日本付近を中心に接近しやすい
海面水温26〜27℃以上の熱帯の海で発生する台風。その後どのようなルートを通るかは、太平洋高気圧の張り出し具合や周辺の風の影響で変わってきます。
夏の間(7〜8月)は太平洋高気圧が西に強く張り出すため、台風はその縁を通って沖縄や西日本に近づくことが多いです。一方で、太平洋高気圧の張り出しが次第に弱まっていく秋(9〜10月)になると、台風の通り道ができ、東日本付近にも近づくことが多くなってきます。
また「台風は太平洋側に接近する場合が多い」という印象があるかもしれませんが、日本海側や北日本、北海道などにも接近、上陸することがあります。2016年には1951年の統計開始以来、初めて北海道に相次いで3つの台風が上陸する異例の事態となりました。
夏の台風は“ノロノロ”と、秋はスピードを上げて接近
台風の接近するスピードも、季節によって特徴があります。
夏の日本周辺ではあまり強い風が吹かないため、台風はゆっくり、ノロノロと進むことが多いです。2023年7月末〜8月初旬にかけて台風6号が沖縄付近に停滞していたのも、まさに夏の台風の特徴といえます。
ところが秋になってくると、日本の北を吹いていた「偏西風」が次第に南下してきます。この偏西風に流されることで、台風はスピードを上げて日本に接近することが多くなってきます。
偏西風の影響と、台風自体の風が相まって、台風の右側のエリアでは特に風が強まります。接近に備えて、暴風対策、停電対策などをしておくことが大切です。
1991年生まれの気象予報士。現在は『首都圏ネットワーク』(NHK総合)などで気象解説を担当。防災情報を正しく活用してもらうための普及啓発として講演活動にも取り組む。毎日の天気予報では空や季節の変化を感じる楽しみを、いざという時は的確な防災情報を伝え、暮らしに役立つ天気予報を目指す。目標は「あなたの半径5メートルの暮らしを変える気象予報士」になること。