津田塾大学が「トランス女子学生」を受け入れたことの意義。これまでの女子大学の歩みを振り返る

津田塾大学は6月23日、多様な女性の在り方を尊重する基本方針に基づき、2025年度入試よりトランス女子学生の受験資格を認めると発表しました。津田塾大学をはじめとする女子大学の多様性への取り組み、その意義についてお伝えしていきたいと思います。

津田塾大学
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津田塾大学は6月23日、多様な女性の在り方を尊重する基本方針に基づき、2025年度入試よりトランス女子学生の受験資格を認めると発表しました。これに対し、称賛の声だけでなく、一部で批判の声も上がっているようです。

本記事では、津田塾大学をはじめとする女子大学の多様性への取り組み、その意義についてお伝えしていきたいと思います。 

 

トランスジェンダーは長い間、あらゆる社会生活で苦しんできた

トランスジェンダー(をはじめLGBTQ)はずっと昔から存在していましたが、自身が望む性別で社会生活を送ることが難しく、学校で着たくない詰襟やスカートを強制され、長い間苦しんできました(今も制服が自由化されていない地域もあるので、問題になっています)。

2001年に放送されたドラマ『3年B組金八先生(第6シリーズ)』(TBS系)で、俳優の上戸彩さんがトランス男子の役を演じてインパクトを与え、2003年の性同一性障害特例法の成立を受けて、世の中がトランスジェンダーを支援する方向に大きく変わったと思います。

兵庫県では、2006年に小学2年生のトランス女子児童が初めて女子としての通学を認められ、第二次性徴抑制のための「抗ホルモン剤」の投与も受けることができました。学校の教職員や兵庫県の教育委員会など多くの人たちのサポートがあって実現した、素晴らしい出来事でした。

また、女子大学ではないですが、2023年の春、通称名で大学院生活を送ってきたトランス女性が神戸大学大学院を卒業したというニュースがありました。 

文部科学省は2015年、性同一性障害の児童・生徒に学校がきめ細かく対応するよう求める通知を、全国の教育委員会などに出しています。文部科学省の方針のもと、多くの学校がそれぞれに、苦しんでいる当事者に寄り添い、ハードルを取り除き、生き生きと学校生活を送れるような環境づくりに取り組んできました。

その延長線上に女子大学での議論があります。
 

津田塾大学がトランス女子学生を受け入れるようになったきっかけ

津田塾大学の高橋裕子学長は2018年、『東洋経済オンライン』に寄稿し、女子大学がトランス女子学生を受け入れるようになった経緯や意味について解説しています。

これによると、2013年にアメリカでスミス大学という女子大学に出願していたカライオピー・ウォン(Calliope Wong)というトランス女性が、連邦政府の学費援助の申請書類に記載する性別欄で「男性」を選択していたため、大学が入学出願者の対象から除外し、それを知ったスミス大学の在学生が大学の措置に対して激しい抗議運動を展開したという出来事がきっかけだったと語っています。

アメリカでは、それ以降トランス女子学生の受け入れが顕在化し、2014年に教育省が「トランス学生を差別から守らなければならない」といった方針を表明するに至りました。これに後押しされて、「セブンシスターズ」と呼ばれる歴史的に重要な女子大学が次々とトランス女子学生の受け入れを表明。ジェンダー平等や性的マイノリティの権利をはじめ、社会正義に深い関心を持つ女子大学の学生たちが、社会を動かしたのです。
 

日本における女子大学の「多様性」への取り組み

日本では2015年、日本学術会議に「法学委員会の社会と教育におけるLGBTIの権利保障分科会」(以下、LGBTI分科会)が立ち上がり、奈良女子大学副学長の三成美保教授を委員長として、高橋裕子氏もメンバーに加わり、2016年に、日本学術会議公開シンポジウムでアメリカの女子大学とトランス女子学生の受け入れについて報告がなされました。

この際、日本女子大学人間社会学部LGBT研究会が同じ内容の講演を依頼し、2017年2月に「『多様な女子』と女子大学—トランスジェンダーについて考える」というシンポジウムが開催されました。そこで、戸籍上では男子の小学4年生から、「性同一性障害の診断を受けているものの、日本女子大学附属中学校に入れるか」との問い合わせがあったことが紹介されたのです。

学園全体がこの問い合わせに向き合い、話し合いがなされましたが、結果、「時期尚早」と判断されたそうです。しかし、この出来事こそが、「トランス女子児童や学生をどう包摂するか」という課題を全ての女子大学に広く共有する契機となりました。

同年の6月には、『朝日新聞』で全国の76女子大学の学長を対象にアンケート調査が実施され、トランス女子学生の受け入れを「5校が検討中、3校が検討予定」であるということ、「検討するべき課題」と回答した女子大学が6割超に上ったことが明らかになり、早晩に取り組まなければならない課題であるとの認識が広まることとなりました。
 
同年10月、京都ノートルダム女子大学で開催された女子大学連盟総会でも、トランス女子学生の受け入れが議題の1つとなり、日本女子大学が情報交換会の事務局となって、同年12月には18もの女子大学が参集し、話し合いが行われています。

また、日本学術会議のLGBTI分科会は公開シンポジウムを計3回開催し、その成果として提言「性的マイノリティの権利保障をめざして—婚姻・教育・労働を中心に」をまとめ、その中に「『文科省通知』にしたがって性自認に即した学校生活を保障されているMTF(トランス女性)が、女子校・女子大に進学できないとしたら、それは『学ぶ権利』の侵害になると言えよう」として、女子大学におけるトランス女子学生の「入学保障」がうたわれました。


>次ページ:日本で初めてトランス女子学生を受け入れたのは「お茶の水女子大学」
 

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