7月26日、AAAの與真司郎さんがファンミーティングでゲイであることをカミングアウトしました。AAAのメンバー、家族、ロサンゼルスの友人などが見守る中、與さんは手紙を通してファンに自身のセクシュアリティなどについて話したのです。これを聞いたファンも與さんを温かく受け入れ、応援し、大変感動的なイベントになりました。
そもそも「カミングアウト」とは、どんな意味を持っているのでしょうか。定義を確認し、日本におけるカミングアウトの現状などについても解説します。
カミングアウトは、「クローゼットの中から出て来る」が語源
そもそもカミングアウトとは、自らの性的指向や性自認を自身の意志で他者に伝えること。アメリカのゲイコミュニティで用いられていた「クローゼットの中から出て来る(coming out of the closet)」という言葉がLGBTQコミュニティに浸透し、世界中に広まり、定着しました。もっぱら、LGBTQの性的指向や性自認の自己開示について用いられる言葉です。
メディアなどを通じて性的指向や性自認を公表することもカミングアウトですし、親しい友人や同僚などに打ち明ける行為も、カミングアウトにあたります(社会全体にカミングアウトしている人を「オープンリー・ゲイ」「オープンリー・レズビアン」などと呼びます)。
日本では、いつの頃からか、テレビを通じて「カミングアウト」という言葉が浸透し、本来の意味ではなく、ちょっとした秘密を教えることに対して「カミングアウト」という言葉が使われるようになってしまいました。これは、本来の意味をゆがめる行為ですし、言葉の「簒奪(さんだつ)」といえます。
逆に、新聞などのメディアでは、LGBTQのカミングアウトは「カミングアウト」とはいわず、「公言」という「言ってはばからない」というニュアンスを持つ言葉が使われる傾向にあります。これでは本末転倒と言うほかありません。メディアの皆さんにはぜひ、LGBTQコミュニティへのリスペクトを持ってカミングアウトという言葉を使っていただきたいです。
カミングアウトは非常に勇気のいる行為
世代や暮らしている環境などによっても異なりますが、多くのLGBTQにとってカミングアウトは非常に勇気のいる行為です。職場でカミングアウトしたら白い目で見られたり、あからさまに差別されたりして、居づらくなり会社を辞めたという人もいれば、親にカミングアウトして家を追い出された経験を持つ人もいます。
歌手の美輪明宏さんは過去に、名家の子息であるゲイの友人が、父親から結婚を強要されたことで、トイレで首を吊って自死した現場に居合わせた経験があると話していました。友人は、カミングアウトしたところで親からも周囲からも理解されず、責め立てられ、生きていくことなどできない(生きるも地獄)と分かっていたからこそ、追い詰められたのです。彼の無念そうな顔を見て美輪さんは「この人が何をしたっていうの? 物を盗んだり人を殺したりしたわけじゃないのに」と思い、世の中を変える決意をしたそうです。
このように、LGBTQ当事者にとって、カミングアウトとは命にも関わるような重みを持った行為なのです。
>次のページ:もし、親しい友人からカミングアウトを受けたら?