国立科学博物館で特別展「海 ―生命のみなもと―」が開催中! 夏休みの自由研究にもおすすめ

東京・上野の国立科学博物館で、特別展「海 ―生命のみなもと―」が開催されています。人を含む地球上のあらゆる生命のみなもとである「海」をテーマに、最新の研究を踏まえて、さまざまな視点から総覧できます。夏休みの自由研究にもピッタリな特別展です。

国立科学博物館で特別展「海 ―生命のみなもと―」が開催中(画像は全て筆者撮影)

おそらく、都内で夏休みに子どもを連れていってあげたい場所のランキング上位に入るだろう場所が、東京・上野にある国立科学博物館。そんな同館では7月15日~10月9日の期間、特別展「海 ―生命のみなもと―」を開催中です。
 

海は、人を含む動物はもちろん、植物など地球上のあらゆる生命の源です。そんな大きなテーマである「海」を、最新の研究を踏まえて、さまざまな視点から見ていくのが今回の特別展です。
 

特別展「海」は音声ガイドが必須

音声ガイドを使うのがおすすめ

特別展へ行く前におすすめしたいのが、同展の音声ガイドアプリ「聴く美術」(iOS/Android対応、650円)をスマートフォンにダウンロードしておくことです。もちろん各展示物の解説パネルと大きく内容が異なるわけではありません。ただし、会場内は混雑が予想される上に、特に小学生の低学年には理解するのが難しいと思われます。
 

今回の音声ガイドは、元日本テレビのアナウンサーで、現在は同志社大学ハリス理化学研究所専任研究所員の桝太一さんが担当。聞き慣れた優しい語り口で、解説を聞くと、より理解度が深まるはずです。音声ガイドは会場でも販売していますが、あえてアプリ版をおすすめするのは、会期中であれば、行く前も後にも、何度でも聞けるためです。
 

生命の起源を深海や宇宙から探る

小惑星探査機「はやぶさ 2(1/10スケール)」

特別展では、まず「海」を宇宙や深海から観察した研究結果が展示されています。なぜ「はやぶさ 2」は小惑星リュウグウを目指したのか、なぜ「しんかい6500」などは深い深い海の底まで探索しに行くのかが解説され、海と生命誕生との結びつきを解き明かしていきます。

熱水噴出孔

生命の紀元を語る上で欠かせない「生きた化石」ともいわれる、シーラカンスの標本も見られます。シーラカンスは、約4億1600万年前から約3億5920万年前のデボン紀の化石が見つかっています。長い間、絶滅したと考えられていましたが、20世紀になってから南アフリカやインドネシアで生きていることが確認されました。

「シーラカンスの標本」アクアマリンふくしま蔵

今回展示されるのは、アクアマリンふくしまのインドネシアシーラカンスの標本。東京で、模型ではない、シーラカンスの標本が見られるのは貴重なことです。
 

高さ4.7メートルの巨大クジラの上半身標本が出現!

ナガスクジラの上半身標本

シーラカンスの標本を過ぎると、いよいよなじみ深い海の情景が会場いっぱいに再現されています。会場中央に、ドーン! と展示されているのは、高さ約4.7メートルのナガスクジラの上半身標本です。またその周辺を、スジイルカやホホジロザメ(ホオジロザメ)が泳いでいる様子が見られます(いずれも標本なので動きません)。

展示風景
「ホホジロザメの標本(実物)」国立科学博物館蔵

もちろん、こうした展示を見て回るだけでも楽しいのですが、それだけでなく「魚やクジラって、どんなものを食べているんだろう?」や「クジラやイルカが、海岸にうちあがってしまうのはなぜ?」などの疑問にも答えてくれます。
 

子ども心を鷲づかみにする無人の深海探査機が展示

「3万年前の航海、徹底再現プロジェクトで使用された丸木舟」東京都立大学蔵

「海」の展覧会といえば、魚類、クジラやイルカなど、海辺の水族館で見るような生物を想像するかもしれません。ただし、冒頭でも記した通り、あらゆる生命のみなもとである海は、さまざまな生き物の生態に大きく影響しています。もちろん人も例外ではありません。
 

例えば、人はどこから日本列島へやってきたのか? そんな疑問を解明しようと、3万年以上前の旧石器時代の航海を再現したプロジェクトも紹介されています。

「港川人頭骨(レプリカ) 2万年前、沖縄県 港川遺跡」国立科学博物館蔵

ここまで見てきた「海」展ですが、そんな海の探査に必須の「ハイパードルフィン」の本物を間近で見られるのも、同展の見どころの一つ。海洋研究開発機構(JAMSTEC)の無人探査機で、最大深度は4500メートル。
 

機体の前方には、人の代わりに深海のさまざまなものを取ってくる、マニピュレータと呼ばれるロボットアームや、目となる数基のカメラ、推進機などが所狭しと配置されています。
 

2000年から20年以上にわたって、実際に深海へ潜ってきた機材だけあり、塗装が擦れていたりと、歴戦の勇者感がハンパないです。子どもはもちろん、大人も、見ているだけでワクワクするはずです。

JAMSTECの無人探査機「ハイパードルフィン」

「ハイパードルフィン」の隣には、北極の海氷下を観測するために開発された海氷下ドローン「COMAI(コマイ)」の展示も見られます。

JAMSTECの海氷下ドローン「COMAI(コマイ)」
ホッキョクグマ

ここで紹介した展示以外にも、たくさんの展示が見られます。さまざまな展示を見て、解説パネルをじっくりと読めば、より深く知ることができます。また、テーマが広大なため、特別展「海」は、海に関する知見を広げられるダイジェスト版ともいえるでしょう。

「ジュゴン(レプリカ)」国立科学博物館蔵
「ヨコヅナイワシの標本」国立科学博物館蔵
「ラッコ親子の標本(実物)」国立科学博物館蔵

特別展「海」の会場を巡って、もっと知りたいと思ったことがあれば、同館の常設展を見て回ることをおすすめします。
 

何といっても国立科学博物館は、日本を代表する総合的な科学博物館で、常設展の展示が充実してます。例えば、今回の特別展で見た深海探査について詳しく知りたければ、「しんかい6500」の2分の1模型や無人探査機「ホーネット500」などが展示解説されています。
 

またクジラについて興味が湧いたら、マッコウクジラの半身模型付の全身骨格標本や、ミンククジラの全身骨格、外にはシロナガスクジラ模型なども見られます。宇宙に興味が湧いたら、小惑星探査機「はやぶさ」初号機の実物や、小惑星イトカワの微粒子を運んだ「再突入カプセル」まで展示されているんです。
 

科学に関して、いくらでも深掘りしていけるのが国立科学博物館。夏休みの自由研究のアイデアを見つけたり、知見を広げるのにも最適な場所といえます。ぜひ特別展だけでなく、常設展を巡る体力も残しておきましょう。
 

特別展「海 ―生命のみなもと―」概要

会場:国立科学博物館(東京・上野公園)
会期:2023年7月15日(土)~10月9日(月・祝)
開館時間:9~17時(入場は16時30分まで)
夜間開館:8月11日(金・祝)~8月20日(日)は19時閉館(入場は18時30分まで)
入場料:一般・大学生2,000円/小・中・高校生600円※日時指定予約推奨休館日:9月4日(月)、11日(月)、19日(火)、25日(月)
 

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