1970年代に日本最長距離運転だった「富士」
『ブルートレイン「富士」同乗記』のパネル展示は、1970年代後半において日本最長の距離を走った列車の記録だ。書籍に掲載されたものを再現したコーナーで、東京駅から終点の西鹿児島駅(現在の鹿児島中央駅)までの24時間26分の長旅の様子を克明にリポートしている。
東海道・山陽本線を下り、一夜明け、関門トンネル前後での機関車交換、日豊本線をひたすら南下し、宮崎以南は非電化だったのでDF50形ディーゼル機関車にけん引される。筆者は、このルポの2年後の1979年3月に「富士」で西鹿児島まで乗り通した(そのときの所要時間は24時間24分)ので、往時を思い出し、最後の写真まで目がくぎ付けになった。再び夕闇迫る車窓に噴煙たなびく桜島が見えたときは長旅の疲れも吹き飛び感激したのを覚えている。
九州へ、山陰へ、北へとブルートレインに乗って旅した思い出がよみがえる写真や資料の数々。もう体験できない「夢の旅路」をじっくりと鑑賞できる貴重な機会だ。
鉄道博物館の展示車両に特別ヘッドマーク、バックサインの取り付け
なお、この展示に合わせ、鉄道博物館の展示車両のいくつかには、期間中、特別のヘッドマークやバックサインを掲出して、ブルートレインの旅の思い出を盛り上げている。詳しくは、こちら
取材協力=鉄道博物館
この記事の筆者:野田 隆
名古屋市生まれ。生家の近くを走っていた中央西線のSL「D51」を見て育ったことから、鉄道ファン歴が始まる。早稲田大学大学院修了後、高校で語学を教える傍ら、ヨーロッパの鉄道旅行を楽しみ、『ヨーロッパ鉄道と音楽の旅』(近代文芸社)を出版。その後、守備範囲を国内にも広げ、2010年3月で教員を退職。旅行作家として活躍中。近著に『シニア鉄道旅の魅力』『にっぽんの鉄道150年』(ともに平凡社新書)がある。