「あじさい電車」といえば箱根登山電車が有名だが、都心でも井の頭線があじさい電車として人気だ。6月も後半になり最盛期は過ぎてしまったが、旅行作家でAll About鉄道ガイドの筆者が、気楽にあじさいが楽しめる電車として写真とともに紹介しよう。
井の頭線のあじさい植栽は雨水流入による斜面崩壊防止が目的だった
京王電鉄の井の頭線は、渋谷と吉祥寺を結ぶ12.7キロの短い路線である。そのうち、駒場東大前駅付近から吉祥寺駅にかけての路線の大半の区間では線路際に2万4000株ものあじさいが植えてあり、6月に入って満開を迎えた。
もともと、1990年ごろから降雨時の雨水の流入による斜面の崩壊を防止するとともに、 季節ごとに咲きそろう草花を利用者に楽しんでもらうことを目的として、線路際にあじさい、サザンカ、ツツジなどの植栽を実施したとのことである。
井の頭線に乗車し、特にラッシュ時に着席できないで、何気なく車窓を眺めていると鮮やかなあじさいが目に留まった人も多いであろう。東松原などいくつかの駅では、ホームで電車を待っているとき、あじさいに癒される。
撮影ポイントとして人気の浜田山駅周辺
ところで、電車とあじさいを絡めた写真を撮ろうとすると、意外に適した場所は見つけにくいものだ。 その中では、浜田山駅周辺が撮影ポイントとして鉄道ファンにはよく知られている。井の頭線は、首都圏では珍しく、他社との乗り入れが全くない路線だ。車両は井の頭線専用のものしか走っていない。ところが、先頭部を中心に淡いパステルカラーが施されていて、それも7色。レインボーカラーとも呼ばれている。いずれも、あじさいとよくマッチしていて、撮影のしがいがある。首都圏に住んでいるなら、ちょっと出かけてみてはいかがだろうか。ただし、踏切付近で撮影するときは線路に近づきすぎないよう十分に気を付けたい。
この記事の筆者:野田 隆
名古屋市生まれ。生家の近くを走っていた中央西線のSL「D51」を見て育ったことから、鉄道ファン歴が始まる。早稲田大学大学院修了後、高校で語学を教える傍ら、ヨーロッパの鉄道旅行を楽しみ、『ヨーロッパ鉄道と音楽の旅』(近代文芸社)を出版。その後、守備範囲を国内にも広げ、2010年3月で教員を退職。旅行作家として活躍中。近著に『シニア鉄道旅の魅力』『にっぽんの鉄道150年』(ともに平凡社新書)がある。