海外から眺めてみたら! 不思議大国ジャパン 第16回

ヨーロッパでは当たり前なのに? 自転車「ヘルメット」着用義務化に日本人が渋ってしまう理由

日本では2023年4月から自転車走行時のヘルメット着用が努力義務化したと聞きますが、浸透している様子は見受けられないようです。着用が定着しているヨーロッパと比較してみると、自転車ユーザーを取り巻く環境に違いがあるようです。

ヘルメット着用の努力義務化から2カ月、自転車ユーザーに変化は?(画像出典:PIXTA)

2023年4月1日、自転車走行時のヘルメット着用が努力義務になるとともに日本では賛否両論が巻き起こったと耳にします。

>動画:よくわかる「ヘルメット」着用の効果

筆者はヨーロッパのさまざまな国に出かける機会が多いのですが、結構な割合でサイクリング中のヘルメット着用者に遭遇します。スイスやドイツのように着用義務のない国、オーストリアやアイスランドのように子どものみ着用義務があったり、スペインやスウェーデンのように違反者には罰金を課す国などさまざまですが、義務や罰則のない国でも自発的にかぶる人は少なくありません。日本と比べて、ヨーロッパでヘルメットが自然に受け入れられている理由はどこにあるのでしょうか。
 

自転車に乗る「目的」と「速度」が違う

自転車の形状を見れば一目瞭然ですが、ヨーロッパと日本では人々が乗る自転車のタイプがまったく異なります。
 

日本ではちょっとした買い物や子どもの送迎などの近距離移動では、いわゆる“ママチャリ”が選ばれていますが、ヨーロッパで売られているのは一部の電動自転車を除いて、ほとんどが前のめりにライドするスピード重視のロードバイクやマウンテンバイクで、お値段もそれなりにします。
 

ヨーロッパのサイクリストは、主にスポーツ目的で車道もしくは自転車専用レーンを猛スピードで走ります。家族や友人の中にも定期的に数時間で数十キロ、あるいは休暇のたびに国境を越えて何日間も走り続ける人が散見されますし、スピードと相まって転倒時や事故時のダメージも相当なものとなります。つまり、頭部を保護するヘルメットはサイクリングにおける大変重要な装備品の1つとなっているのです。
 

ヘルメット着用が「外見」に影響しない

ヨーロッパの人々を見ていてつくづく思うのが、サイクリング時の「ヘルメット+スポーツサングラス姿」が似合っている人が驚くほど多いこと。頭が小さい上に顔の彫りが深いので、ヘルメットで髪を隠しても、顔がのっぺりと見えづらいのでしょう。
 

加えて、日本人が防寒目的のニット帽をかぶりたがらない理由と同様に、多くの日本人はヨーロピアンと比べると固くて太めの扱いづらい髪質です。せっかく朝の貴重な時間をセットに費やしても、ヘルメットで潰されてしまっては、出先で簡単にリカバリーができずに困る事態となるでしょう。
 

それに比べるとコーカソイドの髪は柔軟で、多少崩れても手ぐしで無造作にかき上げたり、アップにまとめるだけで、なんとなくスタイリングできてしまうことから、私たち日本人と比べてヘルメットに対する忌避感は少ないようです。
 

ヘルメットの「置き場」に困らない

東京圏(約1万3556平方キロメートル)や、京阪神圏(約1万3033平方キロメートル)などの大都市圏を抱える日本と比べ、ヨーロッパの都市はそのほとんどがかなり小規模です。ロンドンやベルリン、パリなどは例外としても、筆者が過去に住んだオーストリアの首都ウィーンは約415平方キロメートル、スイスに至っては最大都市のチューリヒでも約88平方キロメートルと、驚くほどコンパクト。
 

日本の都市部では、長距離通勤・通学が一般的なことから、自宅から駅まで自転車で移動し、あとは会社や学校の最寄りまでは電車に乗る人も多いことと思います。しかし、ヨーロッパでは街自体が小さく、スポーティな人が多いため、家から会社・学校まで自転車で移動してしまうことがほとんどです。自転車のみで目的地に着いてしまうため、脱いだヘルメットを抱えて移動する必要がない、もしくは電車に乗り継ぐにせよ通勤タイムのラッシュアワーが日本ほど殺人的でないので、ヘルメットを抱えて乗車したところでさほど邪魔になりません。
 

つまり、日本のようにヘルメットの置き場に困る事態になりづらい生活環境も、着用が敬遠されづらい理由の1つでしょう。
 

ヨーロッパでも、以前はあまり目にしなかった電動自転車や電動キックボードもコロナ禍を機にぐっと普及し、それに伴って事故数も増加していると聞きますし、今後ますますヘルメット着用への流れが加速しそうな予感です。
 

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