山崎育三郎「こんな作品を待っていた!」心震えるミュージカル『ファインディング・ネバーランド』開幕

多方面で活躍中の山崎育三郎さんが、7年ぶりに新作ミュージカルに出演。実話に基づく感動作『ファインディング・ネバーランド』で、『ピーターパン』の作者ジェームズ・バリ役に挑みます。5月15日に開幕した舞台と、前日の囲み取材の模様をリポート!

『ファインディング・ネバーランド』(C)Marino Matsushima

最近もテレビドラマ『リエゾン-こどものこころ診療所-』(テレビ朝日系)に主演するなど、多方面で活躍中の山崎育三郎さんが、7年ぶりに新作ミュージカルに出演。実話に基づく感動作『ファインディング・ネバーランド』で、『ピーターパン』の作者ジェームズ・バリを演じています。5月15日に開幕した舞台と、初日を前に行われた囲み取材の模様をリポートします!

『ファインディング・ネバーランド』雨がちのロンドンが珍しく晴れ、バリ(山崎育三郎)は公園へと繰り出す。妻メアリー(夢咲ねね)も日焼け対策万全で散策 (C)Marino Matsushima

【あらすじ】
舞台は19世紀後半のイギリス。スランプ中の劇作家バリは気分転換にと公園に出かけ、“空想ごっこ”に興じる少年たちと、その母シルヴィアに出会う。父親を亡くしたばかりの彼らとの交流を通して、童心を取り戻し、新作を書き始めるバリ。しかしファンタジー劇というこれまでにない彼の構想は、劇場主や劇団員たちの猛反対に遭い……。

『ファインディング・ネバーランド』公園で出会った子どもたちとその母シルヴィア(濱田めぐみ)との“ごっこ遊び”に刺激され、バリは自分のイマジネーションを信じようとする (C)Marino Matsushima

テクノロジーに頼らない演出が“イマジネーション”を喚起

時代を越えて世界中で愛される『ピーターパン』の誕生秘話を、ゲイリー・バーロウのポップな楽曲で彩りながら描くミュージカル。
 

“イマジネーション(想像力)”という言葉が頻出する作品とあって、子どもたちが飛ぶ場面では俳優たちが人力で彼らをリフトするなど、あえて“アナログ”な演出が次々登場。劇団員たちが“芝居”の本質とは“遊び”であることを思い出すナンバー「Play」も、大いに盛り上がります(演出=小山ゆうなさん)。
 

そんな中で次第に浮かび上がるのが、現実世界の厳しさ。既婚者のバリが一家と交流することに人々は眉をひそめ、バリと妻メアリーとの亀裂も決定的なものに。さらにはあまりにも残酷な運命が少年たちを待ち受けます。

『ファインディング・ネバーランド』子どもたちを招いた夕食会で、バリは羽目を外してしまい、デュ・モーリエ夫人(杜けあき)ら大人たちのひんしゅくを買ってしまう (C)Marino Matsushima

子どもたちと向き合うバリを、誠実に演じる山崎育三郎さん

さまざまな軋轢(あつれき)や悲しみを経験しながら、一家とのかけがえのない時間を『ピーターパン』という作品に昇華してゆくバリ。山崎育三郎さんは軽やかな身のこなしで彼の無邪気さを、また一音もゆるがせにしない細やかな歌唱で、バリの心の機微を描き出します。とりわけ印象的なのが、芝居やフィクションを“ただのうそ”と切り捨てていたピーター少年とのシーン。決して子ども扱いせずに彼と同じ目線で向き合い、語り掛ける姿は誠実そのものです。

人生を謳歌(おうか)し、公園でも人目を気にせず子どもたちと遊ぶシルヴィアを生き生きと演じる濱田めぐみさん、劇場主とバリの潜在願望によって生まれたフック船長の二役をとひょうひょうと演じ分ける武田真治さん、“いつまでも子ども”なバリから心が離れてゆくメアリーに説得力を持たせる夢咲ねねさん、厳格だがどこかに“柔らかな心”を持ち続けるシルヴィアの母デュ・モーリエ夫人役の杜けあきさんら、共演陣が描くキャラクターたちも鮮やか。4人の男の子たち(この日は「PLAYチーム」)のナチュラルな演技と美しい歌声も、注目の的となりそうです。
 

物語後半は一気に悲劇的なトーンへと転じてゆきますが、カンパニーが一致団結し、イマジネーションの力を存分に見せる姿には抗いがたい魅力があり、幕切れの余韻はあたたか。“悲しみの先にある希望”の存在が確かに信じられる作品となっています。

『ファインディング・ネバーランド』自身の悲しい過去を語ったバリに、シルヴィアは小さな”あるもの”をプレゼントする (C)Marino Matsushima

囲み会見に衣裳姿で登場した山崎育三郎さんら出演者

5月14日の公開ゲネプロ前には、衣裳姿で登場した山崎育三郎さん、濱田めぐみさん、武田真治さんと演出の小山ゆうなさんの囲み会見が行われました。
 
――注目してほしいシーンは?

山崎さん「それぞれのキャラクターの葛藤や思いが『ピーターパン』の物語と重なるラスト15分。自分が演じていても涙をこらえるのが大変というくらい美しいです」

濱田さん「1幕ラストのバリとフック船長の登場シーン(「フック」「ストロンガー」)」

武田さん「山崎さん、濱田さんのデュエットと自身の二役演じ分け、子役たちの新鮮な演技」

小山さん「バリとシルヴィアのデュエットは今日の稽古でもぐっときて泣いてしまいました。また、子どもたちだけのナンバーも頑張っているので楽しく見ていただければ」 

『ファインディング・ネバーランド』フック船長(武田真治)の助けを借りて、バリは戦う勇気を取り戻す (C)Marino Matsushima

――本作で1番伝えたいテーマは?

山崎さん「自分の原点や初心に帰れるような作品」

濱田さん「イマジネーションの大切さ、面白さ」

武田さん「常識にとらわれるな、ということ」
 
――最後に公演への思い

小山さん「すごく盛りだくさんですてきなナンバーばかりの作品。皆で元気に千穐楽まで乗り切れたら」

武田さん「ここ数年のコロナ渦の中で、諦めていた夢ややらなかった事にチャレンジしてみよう! と思っていただける作品だと思うので、劇場に元気をもらいに来てください」

濱田さん「われわれも楽しみ、ワクワクしながら演じておりますので、客席と舞台上の皆ですてきな時間を過ごしたいと思っています」
 

そして山崎育三郎さんは、ひときわ力強く公演への思いを語りました。 


山崎さん「こんな作品を待っていました! というくらい大好きな作品となりました。演劇でしか作り出せない奇跡のステージが出来上がっておりますので、ぜひ会場で体感していただきたいです」

囲み会見での山崎育三郎さん、武田真治さん、濱田めぐみさん (C)Marino Matsushima

<公演情報>
ファインディング・ネバーランド5月15日~6月5日=新国立劇場中劇場、6月9~12日=梅田芸術劇場メインホール、6月17~18日=久留米シティプラザ ザ・グランドホール、6月24~25日=オーバード・ホール、6月30日~7月1日=愛知県芸術劇場大ホール
 

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