一時期の過熱ぶりは終わったと言われながらも、いまだ根強い人気の大学附属校。小学校から、中学校から、高校から……大学附属校に入学するタイミングは複数ありますが、今回は、中学受験で大学附属校に入学し、実際に通学中の子を持つ保護者を取材しました。
「大学受験は大変だから」大学附属校一択! 学校選びの決め手は?
コアネット教育総合研究所が2023年2月に公表した「2023年首都圏中学入試総括レポート」によると、2023年度首都圏中学入試の受験者数は6万6500人と過去最多を記録。受験率は初めて22%を超えるなど、首都圏中学受験市場はいまだ拡大傾向にあります。
大学附属校においても、大学入試の定員を厳格化する動きから難関大だけでなく、GMARCHの附属校にも受験生が集まってきたのは、大学進学への安心感が影響しているといえるでしょう。
実際、中学受験を決心した際に「附属中一択」だったというAさんは、
「我が家では、中学受験をする目的そのものが大学附属校に入学することでした。偏差値とにらめっこしながらですが、正直、附属ならどこでもいいとすら思っていました。附属校は一般的に進学校と比べて学費が高い学校が多いのですが、大学受験のときにかかる塾代、浪人したときの予備校代などを考えたらそれほど変わらないかもしれないと考えました」
と大学附属校への強い意思を語ってくれました。中でもAさんが目指したのは、よりスムーズに大学まで進める附属校。「推薦枠」の数値が学校選びの基準の1つとなったそうです。
附属校と系属校、どう違う? 大学附属校も選択肢はさまざま
「○○大学附属中学校」という冠のついた学校でも、実はその中身は同じではありません。大きく分けて、「附属校」「系属校」に分かれ、
・附属校=大学と同じ学校法人が運営
・系属校=大学と別の学校法人が運営
という違いがあります。例えば早稲田大学の場合、経営母体が早稲田大学と同一法人で、原則として高校卒業後は早稲田大学に進学する「附属校」は下記の2校。
早稲田大学高等学院・高等学院中学部(男子校)
早稲田大学本庄高等学院(男女共学)
そして以下は「系属校」です。経営母体は別法人ですが、学校名称に「早稲田」を冠する学校で、早稲田大学への推薦枠数は学校ごとに異なります。
早稲田実業学校 初等部・中等部・高等部(男女共学)…推薦枠約100%
早稲田中学校・高等学校(男子校)…推薦枠約50%
早稲田渋谷シンガポール校(男女共学)…推薦枠約80%
早稲田摂陵中学校・高等学校(男女共学)…推薦枠約10%
早稲田佐賀中学校・高等学校(男女共学)…推薦枠約50%
(※推薦枠の数値はいずれも学校ホームページ参照)
2022年に受験生の注目を集めたのが明治大学の系列校となる予定の「日本学園中学校・高等学校」です。2026年4月に「明治大学付属世田谷中学校・高等学校」に改名予定で、2029年度からは推薦入学試験によっておよそ7割が明治大学に進学できるようになるとあって、多くの受験生を集めました。学校法人明治大学が運営する附属校「明治大学付属明治高等学校・中学校」、系属校の「明治大学付属中野中学・高等学校」、「明治大学付属中野八王子中学高等学校」に加えて4校目となります。
さらに最近、人気が高まっているのが「提携校」。学校名に大学の冠がつかなくても、一定数の推薦枠が設けられている学校です。例えば、立教大学への一定の推薦枠がある提携校として人気の「香蘭女学校中等科・高等科」は、卒業生の半数程度が立教大学に進学します。
あくまで系列の大学に進学したいのか、それとも他大学に進学する可能性を多く残しておきたいか、志望校を決める際に気にしたいポイントです。
管理系 vs 放任系、同じ大学の附属校でも校風が違う
「こんなに勉強が大変だとは想定外でした」と語るのはBさん。
「大学附属校に入れば高校受験も大学受験もないからといって息子を頑張らせてきたので、息子としては入学できさえすればもっと遊べると思っていたのでしょう。もっとも、息子が通う中学は宿題が多く、しっかり勉強させることで有名だったらしいのですが、私はそれを後から知って……。附属校ってもっとのんびりしたイメージだったのですが、結果として、通学時間が長いため朝は早起き、帰宅後は宿題に追われて、かなりハードな日々を過ごしています」
課題の量や補習の有無などは学校によってさまざま。自主的に勉強ができるタイプかどうかによっても、学校選びは変わってきます。「大学附属校ならどこも同じ」「入学した後はのんびりできる」というイメージからは離れて、それぞれの学校の特徴を事前にしっかり把握することが重要なポイントといえそうです。
※本記事は保護者取材をもとに構成しています。最新情報と異なる場合もありますので、ご了承ください。
古田綾子 プロフィール
雑誌・ウェブメディアの編集者を経てフリーランスライター。2児の母。子どもの受験をきっかけに教育分野に注力。自らの経験に基づいた保護者視点で、教育界の生の声やリアルな体験談などを取材・執筆。
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