「支那そばや」の原点・鵠沼時代のらぁ麺が蘇る! 新横浜ラーメン博物館に3週間だけカムバック

新横浜ラーメン博物館の「あの銘店をもう一度“銘店シリーズ”」第15弾として、「食材の鬼」と称された故 佐野実さんのラーメン店「支那そばや」が2023年4月25日から5月15日まで出店。原点となる鵠沼(くげぬま)時代の「らぁ麺」を3週間限定で復刻します。

支那そばやの原点でもある神奈川県・鵠沼時代の「らぁ麺」を3週間限定で復刻
支那そばやの原点でもある神奈川県・鵠沼時代の「らぁ麺」を3週間限定で復刻

新横浜ラーメン博物館(以下、ラー博)は2024年に迎える30周年に向けて、2022年7月1日から「あの銘店をもう一度」プロジェクトをスタート。過去に出店したことのある約40店舗の銘店が2年間かけリレー形式でラー博に出店します。

2023年4月25日から5月15日の「あの銘店をもう一度“銘店シリーズ”」第15弾は、「支那そばや」が出店。創業者は100年後、200年後にも語り継がれるであろうラーメン職人の1人、故 佐野実さん。支那そばやの原点でもある神奈川県・鵠沼(くげぬま)時代の「らぁ麺」を、佐野さんが当時書き留めていたレシピをもとに3週間限定で復刻します(画像は全て提供)。

「食材の鬼」と呼ばれた創業者・佐野実さんについて

高校時代の佐野さん
高校時代の佐野実さん

「支那そばや」創業者の佐野実さんはラーメン業界に多大な影響を与え、人生の全てをラーメンに捧げた人といえるでしょう。佐野さんは1951年4月4日、神奈川県横浜市戸塚区に生まれました。中学校・高校時代はアルバイトをして家庭を支えつつ小遣いを貯め、そのお金で好きだったラーメン店に通っていたのだとか。

高校卒業後は、洋食のレストランに就職。それから17年間、洋食のコックとして店を渡り歩き、趣味でラーメン店の食べ歩きを重ねていました。食べるだけでなく、休みの日には自宅でラーメンを作るようになり、次第に独立してラーメン店を開きたいと思うようになったそうです。

ついに1986年8月6日、神奈川県藤沢市の鵠沼海岸に「支那そばや」を開店。ここから佐野さんのラーメン人生がスタートします。

食材探求の入口は鶏ガラだったとのこと
食材探求の入口は鶏ガラだったとのこと

食材探求の入口は鶏ガラ。たまたま手に入った地鶏のガラでスープを取ったところ、これまでより深みのあるスープが完成しました。そこで、いろいろな地鶏を試した結果、当時(1988年ごろ)ベストだと思ったのが純系名古屋コーチンでした。

食材にこだわる姿勢から「食材の鬼」と呼ばれた佐野さん
食材にこだわる姿勢から「食材の鬼」と呼ばれた佐野さん

そのとき、佐野さんは「こういう食材だけでラーメンを作ったら、安全でおいしいラーメンが作れる。そしてその食材は、生産現場を訪ね、自分の目で確かめたものだけを使いたい」と思ったそうです。これが佐野さんが「食材の鬼」と呼ばれるようになった原点でした。

国産小麦の特性を生かした自家製麺

国産小麦の自家製麺にこだわった佐野さん
国産小麦の自家製麺にこだわった佐野さん

佐野さんは、全国のラーメン店を取材する中で、香り、滑らかさ、しなやかさなど、これまで経験したことのない麺と出会いました。それは、国産小麦を使用している麺でした。当時(1993年)ラーメン店で国産小麦を使うことはほとんどなかったため、カルチャーショックを受けたとのことです。

取材から戻り国産小麦について調べると、北海道の「ハルユタカ」というパン用の強力粉があることをつきとめます。北海道にある製粉会社の江別製粉との交渉の末に、ハルユタカを分けてもらえることになりました。ラーメンの麺を作る上で欠かせない「かん水」にもこだわり、特有のアンモニア臭のない、内モンゴル産のかん水を現地から輸入して使用しました。

そして1200万円を投資して製麺室を作り、400万円の製麺機を購入し、自家製麺に切り替えました。その後、国産小麦の特性を把握し、ある程度納得のいく麺を作るまでに8年もかかったそうです。

ラー博には2000年3月11日から2019年12月1日まで出店していました。当時、筆者はラー博の製麺所で麺を打つ佐野さんの姿をしばしば見かけたことがあります。ラー博で食べた絹腰和伊麺(きぬごしわいめん)や黒小麦麺(くろこむぎめん)などの自家製麺のおいしさが記憶に残っています。

創業時の想いを感じられる、らぁ麺を復刻

鵠沼時代の「らぁ麺」を再現
鵠沼時代の「らぁ麺」を再現

現在は横浜市戸塚区に本店を構える支那そばや。今回の出店では、その原点である鵠沼時代の「らぁ麺」を、佐野さんが当時書き留めていたレシピを基に「鵠沼 醤油らぁ麺(税込1400円)」として3週間限定で復刻します。

麺は国産小麦「ハルユタカ」を使用
麺は国産小麦「ハルユタカ」を使用

麺は国産小麦「ハルユタカ」を使用。「ハルユタカ」は病気に弱く、生産者にとって作りにくい品種だったことから後継品種の「春よ恋」が台頭して2004年以降、作付面積が極端に減りました。今回は3週間のためだけに、江別製粉の協力のもと「ハルユタカ」を主体とした当時の麺を再現します。

名古屋コーチンの丸鶏を主体としたスープ
名古屋コーチンの丸鶏を主体としたスープ

スープは当時のレシピをもとに、佐野さんが食材探求のきっかけとなった名古屋コーチンの丸鶏を主体に数種類の鶏をブレンド。

三元豚のバラチャーシュー
三元豚のバラチャーシュー

具材は、山形県平田牧場「三元豚」のバラチャーシュー、現在は穂先メンマですが、当時使用していた台湾産の短冊メンマ、そして九条ネギ、有明産の海苔と当時の味を再現。

鵠沼時代の味を知っている方には懐かしさを、当時を知らない方には佐野さんの創業時の想いを感じられる一杯となっています。3週間限定の貴重な機会をお見逃しなく。

「あの銘店をもう一度」情報

期間:2022年7月1日~約2年間(銘店シリーズ各店約3週間/94年組シリーズ各店約3カ月)
場所:新横浜ラーメン博物館
期間中出店数:約40店舗(現店舗除く)
“94年組”第2弾:環七「野方ホープ1994」3月2日~7月17日
第14弾:函館「マメさん」4月4日~4月24日
第15弾:「支那そばや」4月25日~5月15日
第16弾:アメリカ・ハリウッド「IKEMEN HOLLYWOOD」5月16日~6月5日
URL:https://www.raumen.co.jp/



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