筆者は2020年の10月に「温泉マイスター」という民間資格を取得しました。ちなみに、「温泉マイスター」とは――年に2回、日本の「温泉の聖地」とも呼ばれる大分県別府市で行われる検定試験に合格しなければもらうことができない、温泉界(?)ではわりと「難関」とされている資格であります。
そして、「温泉マイスター」になってからは、「宿の雰囲気」や「料理の良し悪し」よりも「泉質」で、行きたい温泉をチョイスするようになってきました。そんな中、大きな目安となるのが「源泉かけ流し」という表示です。
では、ここで「源泉かけ流し」の定義について、簡単な解説をしておきましょう。
「源泉かけ流し」の定義とは?
原則として、温泉法の規定を満たした温水や鉱水ならば「天然温泉」を公示することはできますが、それだけで「源泉かけ流し」を“売り”にできるわけではありません。
源泉が湧き出す温度や湯量はさまざまであり、入浴に適した温度にするために加水や加温などで温度調整をすることもあれば、お湯の量が少ない場合は、新しいお湯を加えながら浴槽のお湯を循環させることもあります。
「源泉」とは「温泉が地表へ湧出する場所」もしくは「湧出した温泉そのもの」のこと――したがって「源泉かけ流し」とは、一言で言ってしまえば「源泉をそのまま湯口から出している温泉」のことを指します。ただし、源泉の成分変化が少ないことを条件に加水・加温が認められることもあります。(※その場合は「天然温泉表示看板」に加水もしくは加温の状況と理由を表示することが義務付けられています。ちなみに「源泉100%かけ流し」と表示するなら、加水も加温も認められません)
表現を変えると、「源泉かけ流し」は「常に浴槽に新しいお湯を入れること」すなわち「お湯を循環させないこと」が条件となるわけです。
「源泉かけ流し」のメリット・デメリット
以上を踏まえた上で「源泉かけ流し」のメリット・デメリットをおおまかに列挙してみると、次のようになります。
【メリット】
・いつでも新鮮な温泉を楽しめる
・温泉を使い回していないから効能を感じやすい
・温泉本来の成分や色・香り・肌触りなどをダイレクトに堪能できる
【デメリット】
・温度設定とその調整が難しい
・時にゴミが浮いたり濁ったりしている
・循環式と比べて衛生的には弱くなりがち
「源泉かけ流し」は衛生面が不安?
昨今、とある老舗旅館が大浴場のお湯を年に2度くらいしか入れ替えておらず、塩素の消毒もしていなかったため、基準値を超えた大量のレジオネラ菌が検出されたことが問題になりました。
同老舗旅館も「源泉かけ流し」をうたっていたようですが、今回の事件で「源泉かけ流し=衛生面が不安」と直結してしまうのは、ちょっと違う――別問題なのではないか……と筆者は思います。
なぜなら「源泉かけ流し」の温泉であっても「お湯の入れ替え」や「塩素消毒」は認められており、ほとんどの(良心的な)旅館は惜しみない費用と地道な労力をかけ、「お客さまに安心してお湯に浸かってもらえる」ための企業努力をしているからです。むしろ、この事件をきっかけに、今後はよりいっそう施設側の衛生意識が高まっていくのではないか……とさえ筆者は見ています。
もちろん、それでも「源泉かけ流しはちょっと……」と怖がる人はいるでしょうし、そういう人たちに「そんなことはないから1度試してみて!」などと、無理やりおすすめする気はさらさらありません。
重要なのは、あなたが施設を選ぶ際、自分が「お風呂好き」なのか「温泉好き」なのか、さらには「源泉かけ流し派」なのか「施設充実系派」なのかを知ることなのではないでしょうか。
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