“やっちまった…”から始まるファンタジー
確かに、今を時めく2.5次元俳優たちに加えてAKB48の岡部麟さん、劇団☆新感線の吉田メタルさん、ベテラン俳優の辰巳琢郎さんと、多彩な顔触れが集っています。
廣野「稽古をしていても全員が“俺を見ろ!”とばかりに弾けた演技をしているので、(主人公として)僕が自己主張しても全然邪魔にならない。この2カ月で、めちゃくちゃ面白い芝居になってきています」
作品の芯にあるのは“少年たちの成長物語”ですが、決して愉快痛快というわけではないのが、本作の持ち味です。
一色洋平(以下・一色)「ふつう、少年漫画の主人公ってパーンと明るいけれど、本作のエドとアルは(人体錬成という)最大の禁忌を犯して、“やっちまった……”というところから始まっている。かなりダークなファンタジーですね」
廣野「彼らは14、15歳だけど、それにしては背負っているものが重すぎる。そんな二人が、命の重さを体感していく旅であり、物語なんです」
平松「登場人物全員が、それぞれの正義に従って生きています。僕が演じるエンヴィーも、悪者のはずなのに……」
廣野「エドたち人間を下等生物だと思って見下しているけれど、実は誰よりも人間に憧れている人造人間なんだよね」
平松「(彼の切なさに)演じていて心揺さぶられます」
生身の俳優たちが各役をそれぞれに掘り下げて演じるのに加え、舞台ならではの表現も見逃せません。
一色「舞台中央で、あるものがくるくる回るシーンがあるのですが、それを人力で動かすことにも意味があって、感動しました。石丸さんはその回し方にもすごくこだわっていらっしゃるし、場面転換をする人に対しても、“転換要員ではなく、時空を飛ばす人として出てきて”とおっしゃっています。“この間に、何日たっているかを表現して”と」
廣野「アクション・シーンも、かっこいいというより、泥臭くてリアルだよね」
一色「手数の多さを追求するより、なぜ戦っているかを大切にしたアクションになっています。僕らとしては疲れるけど(笑)、爽やかでもあるよね」
平松「僕らこの2カ月、生身の身体だけで稽古してきたけど、すでに「ハガレン」の世界は出来上がっています。これに生バンドや照明、映像、衣裳、ヘアメイクが加わったら最強です、きっと!」
一色「漫画が原作なので、“2.5次元舞台”とカテゴライズされるかもしれないけれど、僕自身、この舞台は素晴らしい“演劇”だと思ってます。(演じる側と観る側とで)皆で一緒に“どこかに行ける”し、“何かを分かち合える”作品。そして観終わった後に、まだしばらく客席に座っていたいなと思っていただけるような、余韻が残る作品になっていると思います。劇場に来てくれさえすればいいです。あとは僕らに任せてください!」
廣野「組長……いえ、石丸さん(笑)がどんな細かい“穴”も見逃さないので、全員が腑に落ちて、キャラクターの気持ちを体に入れてやっています。演劇としても面白いと思うし、きっと原作を読み返したくなったり、まだ読んでない人は読んでみたくなると思いますよ。僕、いつもはこんなこと言わないんだけど、ここまで手応えのある作品はないんじゃないかというほど『ハガレン』熱にほだされてます」
平松「いいこと言ってるなぁ(笑)。いや本当に、観ていただければ『ハガレン』がこれまで愛されてきた理由が分かると思いますし、ちょっと大きな話になるけど、演劇というものが古代から人の心と寄り添ってきた、愛されてきた理由も分かる舞台だと思います」
廣野「まとめると、今年一番面白い舞台です!」
<公演情報>
舞台『鋼の錬金術師』3月8~12日=新歌舞伎座、3月17~26日=日本青年館ホール
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