家庭のトイレのスタイルは?
さて、韓国の家庭のトイレはどうだろう? こちらも日本とはちょっと違う。韓国のそれはどちらかというと西欧的、つまりホテルなどと同じで、浴室、トイレ、洗面が一緒になった3点ユニットバススタイルが一般的だ。3点ユニットバススタイルの長所であり、欠点でもあるのが、バスもトイレも一気に水掃除できるところとでも言おうか。その代わり、全体が濡れてしまうので、乾くまで当然床はビショビショ。バスタブの手前にシャワーカーテンを設置したり、シャワースペースだけをホテル風にガラスドアで囲むタイプもあるが、シャワーを使うとやはり床は濡れてしまう。
だから日本のトイレには布製のスリッパが置かれているのに対して、韓国の場合はどの家庭のバスルーム(トイレ)にも、入り口にビニール製のスリッパが置かれている。濡れた床の上も歩けるように、だ。
ちなみに一般家庭のトイレはそのまま紙を流す場合がほとんどなので、もし韓国の友人宅に招待されても、基本的に日本と同じような使い方をすれば大丈夫。トイレ自体は日本のものとは変わらない。
韓国のユニークなトイレいろいろ
最後に韓国ならではの面白いトイレをいくつかご紹介しよう。
南山ソウルタワー展望台のトイレからの眺めは最高だ。用を足しながら眼下に広がるソウルの壮大なパノラマを眺めることができる。たとえ時間がなくてロープウエーに乗れなくても、タワーの屋外から外を眺めなくても構わない。この名所において絶対に行くべきはむしろこの展望台トイレなのである。
韓国の地方に旅行に行く人は、田舎道にある公衆トイレや高速道路のサービスエリアのトイレをよく観察してみてほしい。トイレ自体がその地域の特産物の形をしていたり、工芸品で飾られていたりする。
例えば、韓国マクワウリのチャメという果物の産地・星州(ソンジュ)のとある公衆トイレは黄色くて丸いチャメの形をしている。一見トイレとは分からず、入り口も目を凝らしてようやく見つかる。誰もが思わずカメラを構えてしまう愛らしい姿だ。
ハングルの創始者といわれる世宗大王の墓がある驪州(ヨジュ)のサービスエリアのトイレはハングルカリグラフィーであふれている。壁の至る所に有名な詩や心温まる文句がさまざまな書体で表現されているだけでなく、ハングルの歴史などの解説もある。
慶尚北道(キョンサンブクト)の金泉市直指文化公園内のトイレは、朝鮮時代の両班が頭にかぶる「カッ」と呼ばれる伝統的な帽子の形をしている。過去に「美しいトイレ大賞」にも選ばれたことのあるユニークなトイレだ。
海外に行くとトイレが心配だという人は少なくない。でも、次回の旅では、日本とは異なるトイレ事情も含めて韓国旅行を楽しんでみようではないか。日本との違いを探すのもいいし、ちょっとぐらい不便でも、汚くても、「こんなの初めて!」というマインドでトイレを観察すれば、旅はより一層楽しくなる。
松田カノンプロフィール
翻訳家・カルチャーライター。在韓16年目、現地のリアルな情報をもとに韓国文化や観光に関する取材・執筆、コンテンツ監修など幅広くこなす。著書に 『ソウルまるごとお土産ガイド(産業編集センター)』などがある。All About 韓国ガイド。