【2022年】災害級の猛暑に大豪雨、ドカ雪……気象予報士の記憶に残った世界の「異常気象」3選

災害級の暑さに台風や大雨による洪水、記録的な大雪など、世界各地で気象災害が相次いだ2022年。気候変動や地球温暖化の影響を意識せざるを得ないと感じた人も多いのではないでしょうか。気象予報士の片山美紀が2022年に発生した異常気象を振り返ります。

2022年も残りあとわずかです。今年も記録的な猛暑に台風や大雨による洪水、短時間で一気に降り積もるドカ雪など、日本だけでなく世界各地で気象災害が相次ぎました。頻発する災害によって、気候変動や地球温暖化の影響を意識せざるを得ないと感じた人も多いのではないでしょうか。気象予報士の片山美紀が注目した2022年の異常気象を振り返ります。
 

1.「40℃超え」が頻発、災害級の暑さが深刻に……

6月観測史上初めて6月に40℃超えの気温を観測  出典:ウェザーマップ
2022年6月に観測史上初めて40℃超えを記録 出典:ウェザーマップ

今年最も強く印象に残っているのが、記録的な猛暑です。日本ではまだ6月だというのに群馬県伊勢崎市で最高気温40.2℃を観測しました。6月に40℃を超えるのは観測史上初めてのことで、東京都心でも6月25日から7月3日にかけて、過去最長の9日間連続で「猛暑日」を記録しました。
 

「災害級」ともいえる暑さの影響を受けたのは、日本だけではありません。ヨーロッパでも7月にスペインやポルトガルで最高気温が40℃を超えて、大規模な山火事が発生しました。イギリスのコニングスビーでも40.3℃を記録し、国内最高の気温を更新しました。このほか、中国でも猛暑の影響を受けて計画停電が行われ、トヨタ自動車など日経企業の工場の操業が停止する事態となりました。こうした異常な暑さは地球温暖化も原因の1つと指摘されています。ここまで世界各地で顕著な高温が相次ぐと「40℃超え」の暑さも「異常」ではなくなってしまうのかもしれません。
 

 2. 国土の3分の1が水没の「大洪水」、台風による災害も激甚化

大洪水に見舞われたパキスタン・カラチ(2022年8月)

大雨や台風による水害の被害も相次ぎました。中でもにわかには信じ難かったのが、パキスタンで国土の3分の1が水没した記録的な豪雨です。カラチ国際空港(パキスタン)ではモンスーンや氷河の融解によって、2022年6月~8月の3カ月間に平年の3倍を超える雨量を観測しました。
 

日本でも8月には山形県や新潟県で線状降水帯が発生し、大雨特別警報が発表されました。山形県では最上川が氾濫し住宅地での浸水が広がったほか、JR線の鉄橋が流される被害が出ました。
 

9月には台風15号が東海地方に接近し、静岡県静岡市ではわずか半日で404.5ミリもの雨が降りました。これは令和元年東日本台風の接近時を上回り、1974年に静岡市を襲った「七夕豪雨」の名で知られる未曽有の水害に匹敵する大雨でした。

静岡県では9月23日~24日にかけて記録的な大雨に  出典:ウェザーマップ
静岡県では2022年9月23日~24日にかけて記録的な大雨に
出典:ウェザーマップ

大規模な停電や断水が発生したほか、東海道新幹線が運休するなど影響は広範囲に及びました。台風15号は勢力としてはそれほど強くはなかったものの、非常に暖かく湿った空気の影響で発達した雨雲が次々に流れ込み、同じような場所で集中的に雨が降り続いたのです。
 

3. 温暖化でも増える「ドカ雪」、除雪費は過去最高額に

大雪に伴う道路の除雪作業

世界全体で地球温暖化に注目が集まる近年は、冬でも冷え込みが弱い「暖冬」が話題になることがあります。気温が高いことが問題ならば、雪の被害は減っているのかというとそうではありません。2022年の年明けは、短い時間に一気に大量の雪が降る「ドカ雪」によって、北陸地方を中心に日本海側で記録的な大雪になりました。除雪にかかる費用は過去最高額に達したという自治体もあったほどです。
 

さらに、12月中旬もまた山形県や福島県では24時間で1メートルを超える雪が降るなど観測史上1位の記録を更新し、車の立ち往生が問題になりました。地球温暖化が進行すると、ひと冬に降る雪の全体量は減っても、気温が上昇して大気中の水蒸気の量が増えるため、雪雲が発達しやすく「ドカ雪」の増える地域もあると考えられています。
 

異常気象や気候変動を食い止めることは容易ではありませんが、過去の災害を記憶に残し、命を守るために適切な対策を取る努力は私たち一人ひとりに求められています。2023年は災害による被害を最小限にとどめ、自然の織りなす美しい風景を穏やかに楽しめる日が1日でも多くあることを願います。
 

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