しかし、働き盛りの婚活世代が都会での仕事を辞め、自身の地元で婚活に踏み切るには、それ相応の覚悟が必要となる。
「いずれは地元に帰りたい。でもどうすれば……」
そう考える婚活世代に、密かな人気を集めているイベントがある。それが自治体主導で行っている“結婚Uターン”を最終目標とした婚活パーティーだ。今回は、筆者の出身地である愛媛県が東京都内で主催している婚活パーティーに潜入取材した。
新橋で開催! 同じ地元の人と出会える婚活パーティーとは?
11月の土曜日の14時。新橋(東京都港区)にある香川・愛媛県の郷土料理店「かおりひめ」に24人の男女が集結した。これは「東京de愛媛!つながるいーよかん」という名の、愛媛県にゆかりのある若者を集めた婚活イベント。テーブルの上には、愛媛県が誇るさまざまな品種のみかんジュースが並び、”ききみかんジュース大会”が行われているようだ。
参加者は首都圏在住で、愛媛県出身者や愛媛県関係企業に勤務している人など、愛媛県に興味を持っている25~45歳くらいの独身者。愛媛県出身でなくても参加は可能で、参加費用は男性が5000円、女性が3000円だ。
パーティーは、自己PRタイム、フリートーク、余興(ゲームやマッチング)など、内容はスタンダードな婚活パーティーと同様に進む。
会場のテーブルには、愛媛県産の食材を使用した料理や銘菓が並び、地元トークに花が咲いている様子だ。
婚活感がなく「同郷」という“共通言語”があって楽しい
実際にイベントに参加している30代女性に話しを聞いた。彼女は愛媛県出身の都内在住で、婚活イベントに参加するのは今回が初めてだという。「東京ではなかなか愛媛の人に会う機会がなかったのですが、こうやって集まると案外愛媛県ゆかりの方がいるんだな~と感じました!
婚活となるとちょっと緊張してしまいますが、今回のイベントは『ふるさとの人と話そう』という気持ちで参加できたので、楽しく参加できたように思います。
ききみかんジュースなど愛媛県民ならではのイベントもあり、楽しい時間を過ごすことができました。愛媛県のアンテナショップに来たのは久しぶりでしたが、じゃこ天など愛媛ゆかりの食べ物を食べることができ、とてもうれしかったです。
また今度、友達になった方と一緒にご飯を食べに来ようと思います!」宮﨑さん(仮名・30代女性・愛媛県出身)
意外にもこのイベントの“婚活感がない”という点が、彼女にとって好ポイントだったようだ。また「東京に同郷の友人は少ない」と話す彼女からは、こんな意見も。
「どうしても男性と話す時間の方が多かったのですが、もっと女性とも話したかったなと思いました。今後は男性だけでなく、女性の友だちを作るイベントがあるとうれしいです」
地元を離れ、東京で働く彼女にとって、男女関係なく「同郷である」ということが共通言語になる。このようなイベントには今度も積極的に参加したいと話していた。
「結婚は社会が強制すべきではない。しかし…」主催者の思いを聞いた
続いて「東京de愛媛!つながるいーよかん」を主催する愛媛県東京事務所の浅田翔吾さんに、このイベントを企画した背景について話を聞いてみた。「少しお堅いお話になってしまいますが……」
そう前置きしたうえで、こう語ってくれた。
「人口減少が日本全体の大きな課題であることに加えて、多くの地方では、首都圏等への人口流出が続いています。愛媛県においては、ここ10年間で結婚者数が3割減少し、連動して出生数も3割減少しています。
このような状況に立ち向かうために、地域を構成する多様な主体が力を合わせて、出生数を増加させる取り組みを進め、将来的な人口構造の若返りを図ることを目的に、令和4年10月28日に『えひめ人口減少対策重点戦略』を打ち出しました。
結婚や出産は、自己決定と尊厳に関わるため、社会から強制されることがあってはならない課題です。そこで、首都圏において、愛媛県にゆかりのある若者同士の交流の機会を設定し、本県の食材や話題に触れる場を提供することで、『愛媛県に戻りたいな』『愛媛県で就職したいな』『愛媛県が好きだな』というような気持ちを持っていただけるようにと、今回のイベントを企画しました。
小さな取り組みではありますが、今後もこのようなイベントを通じて、愛媛県と直接的・間接的に関わってくださる“えひめファン”の獲得を目指していきたいと思っています」(浅田さん)
婚活とはいえ、「同郷の友達が欲しい」という気持ちだけで参加していい
近年、婚活ブームの裏で、「婚活疲れ」や「婚活うつ」といった問題が起きている。企業が主催する婚活イベントの多くは “婚活ガチ勢”が集うものも多く、中には高額な参加費がかかるパーティもある。一方、今回紹介した自治体が運営する婚活イベントは、婚活目的だけでなく「同郷の友達が欲しい」「地元との関わりを持ちたい」など様々なニーズに応えるイベントとなっている上、参加費もリーズナブルだ。
「いずれ地元に帰りたい」
そう考えている人は、自治体が主催するイベントに参加してみてはいかがだろうか。
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