「イタリアを食べよう」をスローガンに個性豊かなイタリア野菜の普及に取り組む老舗種苗メーカー、トキタ種苗。日本の気候風土に合うよう品種改良されたイタリア野菜は、プロの生産者はもちろん、家庭菜園の愛好家からも注目を集めています。
例年11月には、大利根研究農場(埼玉県加須市)を一般公開するオープンデーを開催。今回はその様子をお伝えしつつ、家庭菜園でもチャレンジしてみたい、注目のイタリア野菜や新品種の野菜をご紹介します。
おすすめの果菜類はこちら:美しいナスとトマトが必見! 「トキタ種苗」オープンデーで見つけた家庭菜園にもおすすめの果菜類
「今こそ国産野菜」
2022年のオープンデーのテーマは「今こそ国産野菜」。その背景には、家庭内で消費される野菜は国産野菜がほぼ100%となっているのに対し、業務用、加工用野菜の国産割合は7割程度にとどまっている(農林水産省調べ)という現状があります。
こうした加工用野菜についても、安全性、信頼性から国産化への転換が求められていて、かつては輸入中心だった西洋野菜も国内栽培が増えつつあります。イタリア野菜の普及に取り組むトキタ種苗では、栽培法の指導や食べ方の提案などを通して、イタリア野菜の国産化を目指しています。
会場内の展示パネルを見てみると、輸入野菜の現状が一目瞭然。輸入カボチャはスーパーでもよく見かけますが、ニンジンやネギ、キャベツの多くが中国から輸入されているのは意外でした。輸入野菜の多くは業務用・加工用に使われるため、外食時の料理やスーパーのお総菜を食べることで、私たちも思いのほか多くの輸入野菜を取っているようですね。
さて、オープンデーの会場は葉物野菜が多く見られる屋外のエリアと、ナスやトマトなど果菜類が見られる温室エリアがあります。まずは屋外の野菜からチェックしていきましょう。
家庭菜園でも栽培できる!? 今トレンドの野菜は?
会場に入って、最初に目に入るのは赤紫と白のコントラストが色鮮やかなイタリア野菜のラディッキオ。トキタ種苗が力を入れている野菜で、キャベツのように結球するもの(写真)から細長いものまで、さまざまな形があります。チコリの一種で日本ではトレビスと呼ばれることが多く、ラディッキオというのはイタリア語の呼び名になります。
ラディッキオの赤紫色はポリフェノールの一種であるアントシアニンによるもので、その抗酸化力はブルーベリーをしのぐというハイパー機能性野菜。ほろ苦さの中にかすかな甘味を感じる奥深い味わいで、生でサラダに混ぜてもグリルしてもおいしくいただけます。
筆者のイチオシは、ザクザクと切り分けたラディッキオをしっかりグリルして、オリーブオイルと塩をかけ、レモンを絞っていただく食べ方。ほろ苦さと甘味にレモンの酸味が相まって奥行きのあるうま味に。オリーブオイルでクタッとなるまでソテーして、肉料理の付け合わせにするのもおすすめです。
ラディッキオは冷涼な気候を好み、北イタリアを中心に栽培されている代表的な冬野菜。夏越しの温度管理には注意が必要で、苗の育ち具合で出来不出来が決まります。上手に作るには若干の経験が必要で、家庭菜園のレベルとしては中上級者向きといえそうです。
・魚料理に欠かせないフィノッキオ
ニンジンのような細い葉とぽってりとした根元部分が特徴のフィノッキオ。英語ではフローレンス・フェンネルと呼ばれ、葉の部分は魚料理に使うハーブとしてもおなじみです。イタリアでは白く肥大した根元部分をスライスしてオリーブオイルと塩で食べるのが一般的だそう。
まだ日本ではなじみの薄い野菜ですが、清涼感のある香りはセロリほどクセが無くて食べやすいと思います。セロリ同様、おいしいだしが出るのでスープに入れるのもおすすめです。栽培時は、太い根が深く広く張るので、土壌を深く耕しておくことがポイントです。
・フィノッキオを品種改良した日本生まれのイタリア野菜、スティッキオ
こちらはフィノッキオを食べやすいスティック状に品種改良した日本生まれのイタリア野菜、スティッキオ。柔らかく歯切れも良く、食べやすいのが特徴です。
・キャベツの仲間で食べやすいカーボロ・ラーパ
ウーパールーパーにも似たかわいらしい見た目のこちらはカーボロ・ラーパ。最近では直売所などで見かけることもあり、コールラビというドイツ語名の方がピンとくるかもしれません。カブのようにも見えますが、アブラナ科の野菜でキャベツの仲間です。ブロッコリーの茎を柔らかくしたような歯触りで、甘味があってクセもなく、おいしくて食べやすい野菜です。生でよし、煮ても焼いてもよしと使い勝手も抜群です。
栽培は基本的にキャベツと同様で初心者でもOK。筆者はカーボロ・ラーパが大好きで、家庭菜園で挑戦してみたいイタリア野菜の1つでもあります。
・紫色のカーボロ・ラーパも
カーボロ・ラーパには紫色のタイプも。中身は白色で、緑色のタイプより歯応えがあるので漬物に最適だそう。
・「黒キャベツ」とも呼ばれるカーボロ・ネロ
トスカーナ地方の煮込み料理に使われる伝統野菜のカーボロ・ネロは、大きくて黒っぽい緑色の葉がインパクト大! カーボロはキャベツ、ネロは黒を意味し、日本では黒キャベツとも呼ばれます。
煮崩れしにくいのが特徴で、葉の表面がデコボコしてスープのうま味が染み込みやすいため、日本の鍋料理にもおすすめですよ。カーボロ・ネロは高機能野菜として名高いケールの仲間で、ケール同様の高い栄養成分があるのも特徴の1つ。とはいえケールのような苦みはなくて、甘味もうま味も濃い食べやすい野菜です。
虫が付きにくく耐寒性があり、霜に当たると甘味とうま味が増すそうで、初心者にも作りやすい家庭菜園におすすめの野菜です。
・青汁でおなじみケールを品種改良したカリーノケール
モコモコと盛り上がった葉が巨大なパセリにも見えるカリーノケール。青汁でおなじみ、スーパーフードとして人気のケールを、生で食べられるようおいしく品種改良したトキタ種苗イチオシのブランド野菜です。
ケールといえば、CMでも決まり文句になるほど苦くて「まずい!」印象がある野菜ですが、カリーノケールは生でも苦みやえぐみが少なく、加熱すると甘味が増してさらに食べやすくなります。食べやすくなっても、ケール同様に栄養価や抗酸化力が高いことに変わりはなく、ビーガンメニューでおなじみのチョップドサラダの材料としても人気。最近ではスーパーでもよく見かける注目の野菜です。
カーボロ・ネロ同様、耐寒性があり霜にも強いのですが、病気や虫が付きやすいので栽培には注意が必要。家庭菜園のレベルは中級者向きといえそうです。
・ピリッとした辛みと爽やかな風味が特徴のリーフ野菜
次にご紹介するコントルノ(上)とエルバステラ(下)は、サラダ素材としておすすめの野菜。コントルノは和名をコショウソウといい、ピリッとした辛みと爽やかな風味が特徴のリーフ野菜です。
エルバステラは英名をBuck's horn(牡鹿の角)といい、鹿の角に似た細くツンツンとした葉が特徴のリーフ野菜。シャキシャキした食感でほのかな甘味と苦みがあり、ナッツのような香りもします。コントルノとエルバステラ、どちらも独特の風味と食感があるので、サラダに散らして味のアクセントを付けるのにぴったり。いつものサラダをリストランテの味にグレードアップできますよ。
いずれも寒さに強くて栽培も簡単。プランターに直まきしてベビーリーフとして栽培すれば、サラダなどの料理に必要な分だけ摘み取って使うことができてとっても便利。水耕栽培も可能ですから、キッチン栽培するのも良さそうです。
前編では露地物の葉物野菜に注目しましたが、いかがでしたでしょうか。後編では、温室エリアの果菜類と直売コーナーなどを紹介します。
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