日本には四季があるからこそ、季節ごとにさまざまな気候を表す言葉があります。なかでも「小春日和」の意味は、間違えて覚えている方も多い言葉のひとつです。
実は、天気を表す言葉は「晴れ」「曇り」「雨」だけでなく、細かいニュアンスを含んだ多種多様な表現があるので、注意が必要です。
この記事では、気象に関する言葉の正しい意味を解説していきます。
<目次>
・「小春日和」の意味は春ではない
・「肌寒い」のはいつ? 季節や時期について
・「雨模様」の状態とは
・「小春日和」など季節・天気の言葉は意味を理解しよう
「小春日和」の意味は春ではない
桜の咲く季節に、冬の間続いた寒さが緩み、日差しの暖かさを感じられるような日のことを「小春日和」と表現するケースがありますが、これは正しいのでしょうか?
実は、「小春日和」の「小春」は、いわゆる「春」とは別の時期を指します。
そもそも「小春」とは、陰暦の10月のことで、今の暦でいうと11月から12月の初め頃を表す言葉で、秋の終わりごろ、冬の寒さが迫る中でほっと一息つけるような日差しの暖かい日のことを「小春日和」と言います。
また、同書には「12月の半ば過ぎや春先などに使わないように注意する」ともあり、「小春日和」は真冬や春には使わないことも明記されています。
「肌寒い」のはいつ? 季節や時期について
春先の「寒の戻り」や、梅雨の時期などに空気がひんやりとすると「肌寒い」と言うことがあるかもしれません。
この「肌寒い(はださむい)」という言葉は、どんな場合に使うのが適切なのでしょう。
『大辞林 4.0』(三省堂)には「肌寒い」の意味が次のように記載されています。
はださむい【肌寒い・膚寒い】
1 秋になって、肌に寒さを感じる。
2 なんとなく恐ろしくて、鳥肌が立つような感じだ。
また、「肌寒(はださむ)」という言葉が秋の季語として採録されており、その意味は「秋が深まって肌寒く感じること、秋冷え」と説明されています。
つまり、「肌寒い」という言葉は、夏の暑さが過ぎ、秋になって空気が冷たくなってきたことを表す言葉です。そのため本来は、春先の寒さには用いないことが分かります。
放送で使う言葉を解説した『NHKことばのハンドブック 第2版』(NHK出版)には、以下のように記載があります。
伝統的には夏の終わりから秋にかけての表現として使うのがふさわしい。春先などに「肌寒い」というのは、現在ではかなり一般的になっているが、抵抗感を持つ人もいるので、「(少し)ひんやり…」などの言いかえもできる。
現在では、春先に「肌寒い」と言っても気にならない方も増えているかもしれません。一方で、人によっては違和感を覚える可能性もあります。「肌寒い」は秋の寒さと覚えておきましょう。
「雨模様」の状態とは
空がどんよりとして小雨がぱらついているとき、「雨模様だね」と言った経験はありませんか?
実は、「雨模様」という言葉は「今にも雨が降りそうな、まだ降ってはいない状態」を表します。
ここで、先ほどの表現は間違いなのか、「雨模様」の意味を国語辞典で確認しましょう。
あめもよう【雨模様】
1 どんよりと曇って、雨の降りだしそうな空のようす。あまもよう。
2 小雨が降ったりやんだりしているようす。
(1が本来の意味)
(『大辞林 4.0』(三省堂))
本来、「雨模様」は今にも雨が降り出しそうな、どんよりとした曇り空を意味する言葉でした。しかし現在では、小雨がぱらつく空のことも表すようになってきています。
「雨模様」という表現をどのように使えばよいか、『NHK気象・災害ハンドブック』に次のような解説があります。
「雨もよう」「荒れもよう」は「~となりそうな状態」のときに用いるのが本来の用法であるが、すでに小雨が降っていたり、天候がやや荒れていたりする場合にも、この表現を使ってよい。
その場合は、雨や風の様子など、具体的な記述を加えるように心がける。ただし、解釈が分かれる表現なので、天気を予報する場合には使わない。
小雨が降る空のことも「雨模様」と言ってよいとされています。実際の空の様子を具体的に付け加えると、より親切な表現になります。
しかし、「雨模様」には、すでに降っている状態と、今にも降りそうだけれどまだ降ってはいない状態の2つの意味があるということは、覚えておきましょう。
「小春日和」など季節・天気の言葉は意味を理解しよう
日本語には季節や天気を表す言葉がたくさんあります。日常会話や手紙などで、天気の話題や時候のあいさつをすることも多いはず。さまざまな言葉を正しく使いこなして、より繊細で豊かな表現ができるようになりたいものです。