BTSの入隊で改めて気になる「韓国の兵役制度」とは？
ゆりこ：公にするタイミングや方法については、ギリギリまで協議したんじゃないかなと思います。ただ、ライブの中で発表してしまうとパニックになる上、その後のムードがお通夜状態になっちゃうと思うんです。それは一旦兵役の意味や背景とは切り離しての、自然なファン心理ですもん。BTS側としてはやっぱりライブの夜は楽しい気持ちを持ち帰ってほしかったんじゃないかなと。あくまで推測です。
矢野：ARMYだけではなく、JINさんへの配慮もあったかもしれません。トップバッターの心理的負担は大きかったと思うんです。最近ご本人もそのプレッシャーについてお話しされていましたよね。そして僕は今更ながら、BTSのニュースを見てから「韓国の兵役制度」について知りたくなって。最近韓国人のYouTuberが兵役の実体験について語っているコンテンツを見たりしているんです。韓国人男性はみんな2年間行かないといけないんですよね？
ゆりこ：はい。韓国人男性の義務で、満18歳以上が兵役検査の対象となります。入隊時期については希望する時期を申請できて、一般的には大学入学後に2・3年生から休学していくケースが多いそうです。期間はよく「2年間」といわれていますが、陸軍の場合18カ月、つまり1年半。部隊によってはもっと長い場合もありますが、どんどん期間は短くなっています。友人のお父さん（60代）は3年ほど入隊していたとか。
矢野：ケースバイケースなんですね。JINさんの場合は陸軍だから約1年半……。案外あっという間かも。
ゆりこ：今回の韓国の報道で初めて知りましたよ、28歳以降に入隊すると陸軍配属になるって。海軍、空軍、海兵隊への入隊は満28歳までだそうです。そして、時代や状況に合わせて兵役法も変化したり議論も起こるので、数年たつとルールが変わる可能性がありますね。
矢野：今回、BTSの件でも法改正するか議論になりましたが、現時点ではオリンピックのメダリストなど、一部免除される人もいるんですよね？
ゆりこ：現在の兵役法ではオリンピック3位以上のメダリストや、国際コンクール2位以上の芸術家などが、1カ月の基礎軍事訓練だけで免除されるケースがあります。じゃあBTSの記録や活躍だって……という話になってしまうのですが、話が止まらなくなるのでとりあえず今は「基本情報」に絞って。満17歳まで他の国で暮らし、他国の国籍や永住権を持っている人も免除されます。そして、持病や障害など心身に問題を抱える人も免除、または程度によって「社会服務要員」になります。
矢野：「社会服務要員」っていうのは……別の形で国に貢献する、的な？
ゆりこ：はい。分かりやすく言うと“期間限定の公務員”のような形です。役所や保健所など公的施設で働きます。かつて持病を抱えた芸能人が「社会服務要員」となり、ファンが勤務先を探し当てて殺到してしまった、というニュースもありました。
矢野：聞く限り、よっぽどのことがないと免除されないんですね。少し話がそれてしまうのですが、実は僕、日本の防衛大学校を受験したことがありまして。結果的に別の進路を選びましたが、BTS入隊のニュースを見てそのことを思い出しました。当時、自衛隊員からお話を聞き、なかなか大きな覚悟が必要だ、と感じたものです。もちろん韓国の兵役とイコールで語れないものですが、「選択肢のひとつ」か「義務」かの差って大きいと思うんです。
ゆりこ：そんなご経験があったんですね！ 確かに「選べない」という部分は大きな違いを感じます。兵役は日々の厳しい訓練や期間について語られることが多いですが、1番重いのは“いざという時”に無条件で出て行かなくてはならないという責任。お恥ずかしながら、私は身近な友人が入隊するまで、そういったことにピンときていなかったんです。若い頃は推しが入隊しても「寂しい」で止まっていた。でも、共通の仲間と一緒に部隊へ面会に行ったりする中で、急にリアルなものとして日常に近づいてきた感覚がありました。
矢野：JINさんの入隊が発表された時、SNSを見てもいろいろな反応がありましたよね。僕の知人たちが「ツラい」「ショック」というSNS投稿をしていて。共感する気持ちと、なぜかちょっとモヤモヤする気持ちが一緒に襲ってきたんです。外から見えるものと、韓国の人たちや当の本人の受け止め方は違うのかな？とか。
