【獣医師に聞いた】老猫の体が弱ってきたとき、猫と飼い主が安心して過ごすコツ

一緒に暮らす猫が高齢になり、体が弱ってきたら何をしてあげるのがよいのか、アレコレ悩むものです。今回は、老猫(高齢猫)のケアのスペシャリストである獣医師の北野先生に、老猫とその飼い主が安心して過ごすためのコツをお伺いしました。

老猫にストレスは禁物

――猫がストレスを感じることとは、具体的にどんなことでしょうか?
 

北野院長:例えば猫の場合、高齢になると慢性腎臓病になることが多くあり、点滴治療※をするのが主な治療になるでしょう。その際、週に2~3回、多ければ毎日、動物病院に通うことになる場合があります。
 

猫は環境の変化が苦手な動物なので、移動をストレスと感じることが多いように思います。対策としては「往診」サービスのある獣医師を探すこと、自宅で飼い主が点滴できるよう指導してくれる獣医師がいる動物病院を探すことなどが挙げられるでしょう。
 

往診と通院、通院と自宅で点滴ができるようにして、毎日通院したり、週に2~3回通院したりするのを、極力、抑えるように工夫することも大事でしょうね。
 

※点滴治療とは、慢性腎不全を患い、食事や飲み水だけでは脱水が進行してしまう場合、皮下への点滴によって水分や電解質を補う治療です。
 


――往診のある動物病院や、点滴指導をしてくれる獣医師に診てもらうことは、猫にとってストレス軽減につながりやすいということですね。他にも何かありますか?
 

北野院長:愛猫は「冷え」もストレスになります。老猫は筋肉量が落ち、代謝も悪くなって、体の熱を生み出す力が衰えることが原因です。冷えは万病の元ともいわれています。冷えを緩和するには、部屋の温度を適切に保ちながら、体を温める「温活」をしてあげると良いでしょう。
 

血流が悪くなりがちな体の組織や細胞に、栄養と酸素が運ばれるようアシストしてあげられます。また、凝り固まった筋肉をほぐし、痛みを和らげることもできます。
 

例えば、もぐさを使った「温灸」や「こんにゃく湿布」は、体を芯から温められます。こんにゃく湿布は、こんにゃくを20分ぐらい熱湯でゆで、タオルに包んで体に当てる方法です。また、「湯たんぽ」や「ホットタオル」「あずきカイロ」「ペットカーペット」で温めてあげる方法もありますね。
 

参考記事:猫にクーラーの冷えは大敵!? 温活を取り入れ「目指せ!20歳越え」

 
――確かに、体が温まり安心した様子の飼い猫を見ていると、飼い主の気持ちも自然と癒され、笑顔になっているような気がします。
 

北野院長:そうでしょう。どうしても、愛猫とのお別れが近づけば、心からの笑顔はなかなか生まれないかもしれません。しかし、目の前にいる愛猫に対し、できることをしてあげる時間を大切にしましょう。
 

「愛猫の死」は自然なことです。避けては通れません。それならば、最期までちゃんとみとってあげて、感謝を伝えることがお互いの幸せにつながるように思います。
 

北野院長は14匹(1~10歳)の愛猫たちと一緒に暮らしています!

  
■北野昭子獣医師プロフィール
北里大学獣医畜産学部卒業、動物病院で約20年勤務後、「老犬元氣クリニック」を開業。エネルギー療法、温活、リハビリ、自然療法で『自己治癒力』を高める治療を行うことで、痛みや、症状の緩和の治療を行っています。犬猫の体に負担とならない優しい治療、心地よい治療がモットーです。

https://www.neko-taro.com/
獣医鍼灸学卒後教育プログラム修了
第2回犬の理学療法コース(メルボルン開催)修了
比較統合医療学会会員


■筆者:舟本美子プロフィール
「大切なお金の価値観を見つけるサポーター」会計事務所で10年、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として14年働いたのち、FPとして独立。30年猫と暮らし、高齢猫の世話についての記事も執筆。現在は3匹の保護猫と暮らしています。


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