
同じ読み方をするけれど、意味の違う言葉を「同音異義語」と言います。
「愛(あい)」と「藍(あい)」や、「三角(さんかく)」と「参画(さんかく)」のように、普段よく使う言葉や、意味の異なるものであれば読み方が同じだからといって混同することはないでしょう。
しかし、「たいせい」はどうでしょう? 「体制」「体勢」「態勢」「大勢」など、さまざまな表記のものがありますが、正確に使い分けられている方は少ないかもしれません。
今回は、「たいせい」と読む熟語の中でも「体制」を主軸に、それぞれの意味と使い分けを、具体的な例文とともにフリーアナウンサーの笠井美穂が解説していきます。
・「体制」とは? 言葉の意味について
・「体勢」「態勢」「大勢」の意味について
・「体制」と「体勢」「態勢」「大勢」の違いは?
・「体制」「体勢」「態勢」「大勢」の例文
・「体制」の同音異義語は意味を考えて使い分けよう
「体制」とは? 言葉の意味について
体制とは、組織や社会のあり方や仕組みのことを指します。具体的には、政治体制や経済体制、組織の運営体制などがあります。簡潔にまとめると、体制はシステムや組織を表す言葉ということが理解できるでしょう。
それでは、同音異義語にあたる「体勢」「態勢」「大勢」の意味を調べてみましょう。
「体勢」「態勢」「大勢」の意味について
「たいせい」の同音異義語である「体勢」「態勢」「大勢」のそれぞれの意味は以下の通りです。
・「体勢」
「体勢」は、身体の位置や姿勢を指す言葉です。特定の活動や状況に適した姿勢や位置を取ることを指すこともあります。例えば、スポーツの場合、正しい体勢を取ることでパフォーマンスを向上させることができます。また、政治やビジネスの場合、特定の立場や立ち位置を指すこともあります。
・「態勢」
「態勢」は、ある目的や目標を達成するために必要な準備や体制のことを指します。具体的には、組織や国家の準備や体制、戦闘や競技の準備や体制などを指すことがあります。
・「大勢」
「大勢」は、多くの人や物事の集まりを指す言葉です。一般的には、多数の人々や物体が一つの場所に存在する状態を表します。また、大勢は一般的な傾向や流れを指すこともあります。
「体制」と「体勢」「態勢」「大勢」の違いは?
そもそも「勢(せい)」という漢字には、「物事の成り行き・様子」(小学館『デジタル大辞泉』より)という意味があります。
そのため、「体勢」は「体の様子=体の構え」、「大勢」は「おおよその成り行き・様子」と、使われている漢字の意味がそのまま熟語の意味になっているのがうかがえます。
また、「たいせい」の同音異義語のうち、意味をつかみづらいのは「体制」と「態勢」ではないでしょうか。どちらも「たいせいを整える」といった言い回しをすることもあり、使い分けに悩む場面もあるかもしれません。「体制」という場合は、軸となる考えや方針に基づいて作られた、持続的で統一的なシステムや組織のことを表します。一方で、「態勢」は一時的な事柄に対応するための構えを意味することが分かります。
どちらの漢字を使っても意味が通る場面もありますが、漢字表記に迷った場合は、恒久的なものなのか一時的なものなのかを基準に考えてみると判断しやすいかもしれません。
「体制」「体勢」「態勢」「大勢」の例文
最後に、「たいせい」に関する4種類の同音異義語で、使い分け方を具体的な例文で示します。
・「体制」の例文
・役員人事が承認され新体制が発足した。
・戦時体制下では、国民は厳しい生活を強いられた。
・その作品には、反体制運動に身を投じた男の生涯が描かれている。
・「体勢」の例文
・彼は得意の体勢に持ち込み勝利をおさめた。
・不意打ちを食い体勢を崩してしまった。
・1度体勢を立て直してから、もう1度臨もう。
・「態勢」の例文
・緊急の受け入れ態勢を整える。
・当機はまもなく着陸態勢に入ります。
・要人の来訪に当たって、厳重な警備態勢が敷かれる。
・「大勢」の例文
・投票は20時に締め切られ、まもなく大勢が判明する見通しです。
・その程度のアクシデントであれば、大勢に影響はないでしょう。
・世論調査の結果、「支持する」と答えた人が大勢を占めた。
「体制」の同音異義語は意味を考えて使い分けよう
さまざまな漢字で書き表される「たいせい」という言葉。
持続的・統一的な組織は「体制」、体の構えは「体勢」、一時的な対応は「態勢」大体の成り行きや様子は「大勢」、となります。
同音異義語を使う場合は意味を確認したうえで、漢字で書き分けるようにしましょう。
■執筆者プロフィール

笠井 美穂(かさい みほ)
福岡県出身。九州大学文学部を卒業後、KYT鹿児島讀賣テレビに入社。退社後は、報道番組を中心にフリーアナウンサーとして活動。これまでの出演は、NHK北九州放送局『ニュースブリッジ北九州』、NHK BS1『BSニュース』、NHK Eテレ『手話ニュース』、NHK ラジオ第1『NHKきょうのニュース』『ラジオニュース』など。