コンビニで最もお金を使わない都道府県民、3位「兵庫県」2位「和歌山県」では1位は?

コンビニで最もお金を使わない都道府県をご存知ですか? 経済産業省が定期的に発表する商業動態統計から、調査してみました。結果について、経済産業省の調査統計グループ、村松さんにもコメントをいただいています。

人口1人当たりのコンビニ販売額が最も低い、つまり、コンビニで最もお金を使わない都道府県民とは?


今回は、All About編集部が2022年1月の「商業動態統計速報(経済産業省)」を基に算出した結果をランキングで紹介するとともに、経済産業省の村松雅子さんに商業動態統計の読み解き方について気になることを質問してみました。

村松 雅子(むらまつ まさこ)さん
経済産業省 調査統計グループ 経済解析室 係長(解析担当)
現在、各種統計を用いた経済分析を行っており、小売業や飲食関連産業の分析などを担当。過去には、理工系人材や経営課題の解決につながる人材など、企業支援のための人材育成・支援施策の立案なども担当。

 

■1位は「奈良県」で1人当たり5487円、奈良県は節約志向?

まずは「コンビニで最もお金を使わない都道府県」のTOP5を発表します。
 


1位は2022年1月の1人当たりの販売額が5487円で「奈良県」でした。


コンビニを使わないということは、節約志向であるという印象もあります。しかしながら、奈良県のお財布事情を「2019年全国家計構造調査(総務省)」で確認すると、世帯人員1人当たりの消費支出額(月間)は47都道府県中第22位と決して支出が低い訳ではないようです。


ちなみに、コンビニで最もお金を使う都道府県は東京都で、東京都の場合は世帯人員1人当たりの消費支出額(月間)も47都道府県中第1位でした。
 

■奈良県はコンビニの出店がはばかられる場所!?

では、奈良県の人がコンビニでお金を使わないのはなぜなのでしょうか。もしかしたら、使わないのではなく、使えないのかもしれません。


まず、1人当たりのコンビニ販売額と各都道府県の人口1万人当たりのコンビニ店舗数をプロットしてみた結果が以下の図になります。
 


見ての通り、奈良県は1人当たりのコンビニ販売額が最も低く、人口1万人当たりのコンビニ店舗数が最も低い県でした。


つまり、奈良県は他の都道府県と比較してコンビニが少なく、コンビニが少ないがゆえにコンビニを利用する習慣がないため、1人当たりのコンビニ販売額が最も低いということかもしれません。

 

■奈良県のコンビニ店舗数はなぜ少ない?

奈良県が、他の都道府県よりもコンビニの出店数が少ないのは、なぜなのか。ここからどのような追加調査を行うとその理由が見えてくるのでしょうか? そもそも商業動態調査のこうした使い方は正しいのでしょうか?


経済産業省の村松さんにお話を聞いてみました。


—まず、商業動態調査の、こうした使い方は正しいのですか?


村松:商業動態統計で把握しているコンビニエンスストアの商品販売額などは、都道府県別の数値などをフランチャイズ本部に記入・提出いただいており店舗側での調査より精度が高いデータです。そのため、今回のような切り口で分析を行うには適したデータと言えます。


—奈良県のコンビニ店舗数が少ない理由について、参考になる統計データがあれば教えてください。


村松:都道府県のコンビニ店舗数は、各都道府県人口と強い相関があり、人口の多い都道府県に多くのコンビニが立地しているという傾向があります。2020年の奈良県の人口は全国29位であるのに対し、コンビニエンスストア店舗数は全国35位と、人口に比べ店舗数が少ないようにも見えます。
 



村松:ここで言う人口は、その地域に常住する人口を指し、夜間人口とも呼ばれます。一方で、昼間人口という定義もあり、常住人口から通勤・通学などで流出入した人数を加減した人口を指します。コンビニ店舗数は、昼間人口との相関がより強くなっています。
 
===
(都道府県別の人口とコンビニ店舗数の相関係数)
昼間人口との相関係数:0.994
夜間人口との相関係数:0.986
※相関係数は、2つの変数の間にある関係の強弱を測る指標です。 相関係数が1に近いほど、強い関係があることを表します。今回の場合、相関係数が高いほど、人口が増えると店舗数も多くなるという関係性が高まることを意味します。
※昼夜間人口は、国勢調査から把握することができ、現在公表されている最新の数値は、2015年国勢調査によるものです。そのため、相関係数は、2015年時点での昼夜間人口とコンビニ店舗数を使って計算したものです。
===
 
奈良県は、夜間人口に比べ昼間人口の方が少なく、通勤や通学で人口が流出していることが分かります。大都市に近隣する地域ではこのような傾向が見られ、奈良県も京都、大阪といった大都市に隣接していることが、昼間人口の減少につながっていると考えられます。


夜間人口に対する昼間人口の割合を示したものを昼夜間人口比率と言いますが、通勤・通学などで人口流出が多いほど、昼夜間人口比率は低くなります。奈良県の昼夜間人口比率は47都道府県中45位と低く、昼間、働く人や学生が少ないことが、奈良県のコンビニ店舗数が相対的に少ない要因の1つと考えられます。


つまり、奈良県の人はコンビニの利用が少ないということではなく、通勤・通学などで県外に出ている人は、県外のコンビニを利用していると考えられます。


ちなみに、人口当たり店舗数が少ない上位5県の昼夜間人口比率の順位は、奈良県(45位)、兵庫県(43位)、埼玉県(47位)、滋賀県(41位)、神奈川県(44位)となっています。


—1人当たりのコンビニ販売額が最も少ないのは、奈良県の人がお金を使わないのではなく、奈良県のコンビニでお金を使う人が少ないということだったのですね。村松さん、ありがとうございました!


今回は、コンビニでお金を使わない都道府県のデータから、その理由を探ってみました。今後も商業動態統計ほか、さまざまなオープンデータや統計データを見つけては、専門家など詳しい人に話を聞いてみた! という記事を公開予定です。気になるデータや話を聞きたい人がいるという人は、ぜひオールアバウトまでお知らせください。



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