冬の関東は全国屈指の「乾燥地帯」、その理由は地形図を見れば一目瞭然!?【気象予報士が解説】

冬は日本海側で雪や雨が降りやすい一方で、太平洋側では晴れて空気の乾燥が続きます。なかでも、よく晴れる冬の関東は全国トップクラスの乾燥エリアで、火災にも十分な注意が必要です。冬に関東で雪や雨が少ない理由はなぜなのでしょうか。気象予報士が解説します。

「冬型」の気圧配置で太平洋側はカラカラに


太平洋側の地域で冬にやっかいなのが空気の乾燥です。冬に天気図上でよく見られる「西高東低」の気圧配置になると、日本海側では雪や雨が降りやすくなる一方、太平洋側では晴れて空気の乾燥することが多くなります。
冬によく見られる西高東低の気圧配置
冬によく見られる西高東低の気圧配置
西高東低の冬型の気圧配置のとき、空気は気圧の高いところから低いところへ移動するため、日本付近には大陸から北西の季節風が吹きます。季節風が運ぶ冷たく乾燥した空気は、日本海を渡る際に、対馬海流などの暖流がもたらす水蒸気を吸収して湿気を含むため、雪雲や雨雲が発生します。これらが日本海側の地域に流れ込み、雪や雨を降らせるのです。その後、水分を失った空気は、日本の中央を走る脊梁山脈を越え、乾燥した風となって、太平洋側に吹き下ります。このため、太平洋側では冬は晴れて、空気がカラカラに乾くことが多くなるのです。
冬型の気圧配置がもたらす大雪の概念図 出典:札幌管区気象台ホームページ
冬型の気圧配置がもたらす大雪の概念図 出典:札幌管区気象台ホームページ
 

冬の関東は全国トップクラスの乾燥地帯、その理由は地形にあり!? 

先月、2022年1月31日までの30日間の降水量は、太平洋側の地域を中心に平年を下回っていますが、なかでも関東地方は平年の半分にも満たない地点が多くありました。先月の東京都心の合計降水量はたった22.5ミリで、平年の約4割にとどまりました。もともと雨の少ない季節ですが、ことしは例年以上にまとまった雨が降らず、空気の乾燥が続いています。
2022年1月2日~31日の合計降水量と平年比 出典:気象庁ホームページ
2022年1月2日~31日の合計降水量と平年比 出典:気象庁ホームページ
同じ太平洋側でも、西日本や東海に比べて、特に関東で雨や雪が少ないのには地形的な理由があります。関東は西側や北側を標高の高い山が取り囲むような地形をしています。

新潟など日本海側から流れ込む雪雲や雨雲は山に遮られるため、関東は冬型の気圧配置のときはめったに雪や雨は降りません。
北側と西側を高い山々に囲まれる関東地方 出典:国土地理院
北側と西側を高い山々に囲まれた関東地方 出典:国土地理院ホームページ
一方で、お隣の東海地方の愛知県では、冬型の気圧配置が強まると雪が降ることがあり、過去にも“日本の大動脈”である東海道新幹線に大きな影響が出たことがあります。

地図を見ると、東海地方周辺は日本海側と太平洋側との距離が近く、くびれた地形をしていることがわかります。さらに、若狭湾から伊勢湾にかけての間で、岐阜県の関ケ原付近は山地がやや低くなっています。冬の日本海で発生する雪雲は、雲の高さが低いことが多いため、強い季節風に伴って、日本海側から雪雲が抜けて、名古屋など太平洋側まで届きやすくなるのです。
若狭湾から伊勢湾にかけて山地が低くなる東海地方 出典:国土地理院ホームページ
若狭湾から伊勢湾にかけて山地が低くなる東海地方 出典:国土地理院ホームページ
 

乾燥シーズンは「フラッシュオーバー」を防ぐため火災警報器の点検を

空気の乾燥が続くと、問題になるのが火災です。私たちの身近な住宅で発生する火災の出火元は、たばこやストーブなどの暖房器具、こんろです。また、老朽化した電気器具やタコ足配線が原因で起きる電気火災も少なくありません。
 
住宅内での火災を防ぐためには、電気ストーブなどの暖房器具の周りには燃えやすいものを置かず、洗濯物を乾かすために使うことは控えましょう。使っていないプラグは抜いておく、プラグやコンセントはほこりがたまらないように定期的に掃除をすることも大切です。
 
また、火災はひとたび発生すると、急激に広がることが特徴です。はじめは局所的だった燃え方がある時点を超えると急速に広がり、数秒~数十秒のごく短い時間に、部屋全域に拡大する現象を「フラッシュオーバー」といいます。フラッシュオーバーを境に発生する黒い煙には、吸うと死に至る危険性のある、毒性の高い一酸化炭素が含まれます。
 
天井に火が回るとフラッシュオーバーが起きやすくなるため、ひとつの目安として「天井に火が届く前に」避難をすることが重要といえます。火災に早く気付くために、住宅用火災警報器の点検は定期的に行うようにしましょう。住宅用火災警報器は古くなると電子部品の劣化や電池切れなどで火災を感知しなくなることがあります。

設置年月を確認し、設置から10年を目安に本体の交換をする必要があります。乾燥する季節に火災から私たちの命や財産を守るため、あらためて身の回りの環境を見直すなど対策を十分に行いましょう。


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