伴侶の死で見えた夫と妻の「愛のカタチ」、息子も知らない母の本心

十人十色という言葉があるように、結婚のカタチも人それぞれ。最後の最後に起こったどんでん返しで、周囲の誰もが“面食らった”という2つのエピソードをお届けします。

十人十色という言葉があるように、結婚のカタチも人それぞれ。労りあって暮す夫婦もいれば、罵り合って別れる夫婦も存在します。なかには周囲の目を「点」にさせてしまう夫婦もいるようで――今回は、最後の最後に起こったどんでん返しで、周囲の誰もが“面食らった”という2つのエピソードをお届けします。

朝から罵り合う義両親が築いた!? 不可思議な愛のカタチ

「私の夫の両親は、本当に仲が悪くて『教育に悪いから……』と、夫のほうが子どもを義実家に連れていくのを嫌がるほどでした」
 

北海道在住の弥代生さん(49歳)は、結婚してからすでに20年。しかし、指折り数えられるほどしか義実家に帰ったことがありませんでした。

「義実家は関東地方にあるのですが、結婚の報告に行ったとき、朝から怒鳴り合う声が聞こえてきて、唖然としました。隣を見ると夫が俯きながら『またか……』と。どうやら義父母は夫が物心ついた頃にはすでに仲が悪く、顔を合わせるたび怒鳴り合いの喧嘩になっていたようです。夫はそんな両親を見るのがイヤで、北海道の全寮制の高校に進学。そのままこちらの大学に進み、就職して、北海道出身の私と結婚したんです」
 

ご両親の喧嘩は、些細なことからはじまるといいます。並べたお箸がずれて箸置きから落ちていた。トイレの上蓋を閉じていなかった。玄関の靴が邪魔だった。ガソリンが残り少ないのに給油されていなかった。料理の味付けが好みじゃなかった。テレビ欄を見たいのに新聞が手元になかった……。
 

「見た限りで言えば、どちらも喧嘩っぱやく口うるさいので、どっちもどっちという感じでした。私も結婚するまでは、関東出身の人と結婚したら義実家に行くついでにディズニーに行ったり渋谷に行ったりできる~♪ なんて喜んでいたのですが、夫は頑なに地元に帰るのを拒否。その理由が、この義両親の喧嘩だったようです。夫に『たまには子どもたちの顔を見せてあげたほうがいいんじゃない?』なんて言おうものなら、『あんな教育に悪い家に子どもを連れて帰るわけにいかない! 恐ろしいことを言うな!』と」
 

5年前、がんを患っていた義父が3年の闘病を経て亡くなりました。弥代生さん家族が駆けつけ、葬儀を執り行った日。義母はいつになく上機嫌だったのだそう。

「お義母さんは、『やっと死んでくれた!』『3年も寝つきやがって、どんなに大変だったか!』、そうしたことを大声で言ってはケラケラと笑っていました。親戚の人たちは眉をひそめていましたし、夫が怒りをこらえているのは隣にいて分かりました。ああ、本当に夫婦仲が悪かったんだな。そこまで言うくらいなら、さっさと離婚すればよかったのに。そんなことを思いながら、義母を眺めていました。でも……」
 

弥代生さん夫婦は、その夜、思いもしなかった義母の姿を目にしました。
 

「斎場から戻ってきて、義実家の玄関に入るなり、義母が泣き崩れたんです。『なんで先に死んだのよ! おまえより先に死んでたまるか! 死ぬならおまえを看取ってからにしてやる!って、ずっと言ってくれていたのに!』って……。そんな義母の姿を見て、夫は茫然としていました。
 

私は……ああ、義父母は喧嘩をしていたのではなく、お互い好き勝手に言いあって、それでストレスを発散していたんだな。根底ではわかりあっていて、愛情を交わしあっていたんだな……と腑に落ちた瞬間、義母が可哀想で可哀想で、一緒に声を上げて泣いちゃいました」
 

真の愛情って? 周囲を震撼させた男の愛のカタチ

神奈川県在住の大智さん(38歳)は、ある同僚に対して「どうやって接すればいいか、分からないでいる」と言います。
 

大智さんの同僚は、会社では有名な「オシドリ夫婦」だったそう。どんなときもふたり仲良く行動し、同僚はニコニコしながら妻自慢をしていました。
 

「奥さんももともと俺たちと同じ会社の社員で、俺とは同期だったので仲が良かったんです。同僚と結婚して退職したんですが、それからもウチの夫婦と一緒に旅行に行ったり、ドライブに出掛けたり。そうした際に、同僚は奥さんに対して何かと気を配っていて、ウチの妻には『アナタも○○さん(同僚)を見習ってよ!』なんて苦情を言われるほどでした」
 

残業になる日は必ず電話を入れ、飲み会も「妻が待っているから」と21時でフェードアウト。土日は奥様とともにキャンプに行ったり買い物に行ったり。会社の誰もが「ああいう夫婦になりたい」と、憧れを抱いていたのだとか。
 

「でもね。奥さんが入院したとたん……同僚が変わっちゃったんですよ」
 

奥さまは、難病に指定される病気を患い、入院することに。すると同僚はまるで「妻などいなかった」かのようなふるまい。
 

「入院すると着替えが必要になるので、普通、どんなに忙しくても2~3日に1度は足を運ぶと思うんです。でも同僚は、月に1度顔を出せばいいレベル。困った奥さんは実の妹さんに相談し、そうした世話をお願いしていたみたいです。

見かねた上司が『今日はもう仕事はいいから、奥さんのところに行ってやれよ』って言うと、同僚は『俺が行っても、何もすることがないんですよ? なんで行かなきゃいけないんですか?』と、本当に訳が分からないという顔をして首を振っていました。あの姿を見たとき、思わず震撼しましたね」
 

1年に満たない闘病生活で奥様が亡くなると、同僚は喪主をすることを固辞。奥様のお父様が喪主を務め、葬儀は滞りなく終わりました。葬儀の際も同僚は涙を見せることもなく、読経の最中に席を立ち、斎場のエントランスでタバコをふかしていたといいます。
 

「奥さんが亡くなって1ヶ月も経たないうちに、同僚がニコニコしながら『俺、結婚したから!』って、意気揚々と報告してきたんですよ。相手は系列会社の女の子らしいんですが、もうね、オフィスにいた奴らみんな『何言ってんだコイツ……?』状態。結局、同僚の顔を見るのもイヤ!という多くの女性社員からの嘆願があり、同僚は九州の支店に左遷されちゃいました」
 

奥様と仲が良かった女性社員たちは『ハナから奥さんに愛情があったわけじゃなくて、家庭を築く上で便利な存在だから、俺からも大切にしてやる、っていう感じだったんだと思う。病気になって自分の面倒を見られない妻なんて、お荷物でしかなかったんだろうね。ほんとイヤな男! 二度と帰ってくるな!』と分析しては、腹を立てているといいます。
 

「あのオシドリ夫婦が虚構だったなんて……いまだに信じられません。愛ってほんと、傍から見ているだけじゃ分からないものですね」
 

周囲をなんとも言えない気持ちにさせてしまった、2つの愛のカタチ。愛情に正解はないのでしょうが、周囲に迷惑をかけてしまうのは考えものです。「喧嘩するほど仲が良い」「恋は思案の外」とはいいますが……ドラマチックであることよりも、実は普通の恋愛・結婚が一番幸せなのかもしれません。

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