産んだ瞬間から「得体の知れない違和感」が…娘を愛せない毒親の告白

ネグレクトや虐待に及んでしまう親が増加傾向にあるといいます。実際に「娘をネグレクトしてしまったかもしれない」と嘆く母親に話を聞いてみました。

新型コロナウイルスの影響で“闇”が広がる日本列島。しかし、ウイルスが影響を及ぼす前から、ネグレクトや虐待に及んでしまう親は増加傾向にあり、“病んだ”大人が増えていることが明らかになっています。

とくに2013年以降は、被害児童数は右肩上がりで増加。2019年には過去最多を記録しています。児童相談所への相談は9万8000件を超え、子どもをどのように保護するか、また、両親のサポートをどのように行うかが今後の課題となっています。しかし、実際に「娘をネグレクトしてしまったかもしれない」と嘆く母親の話を聞くと、そうそう簡単にはいかないようで……。
 

息子が生まれた日、それは自分自身が生まれ変わった日

中学生の長女と、小学校高学年の長男、ふたりの姉弟を育てている鈴木景織子さん(仮名・36歳)は、現在、夫から離婚を突き付けられ、「にっちもさっちもいかない状態」にあるといいます。
 

「私、たぶん人間としてどこかおかしいんですよ。夫が私に離婚を突き付けた理由は、娘をかわいがらないから。実際、娘なんてちっともかわいくないんですよね(笑)。どうしようもないことに文句をつけられても困る、というのが正直な感想なんです」
 

大学を卒業したものの就職先が見つからず、就活をしながらフリーターになったという景織子さん。バイト先に客として来ていた12歳年上のご主人に見初められ、「絶対に苦労させないから」という言葉を信じて23歳のときに結婚。年の差はありましたが、お金に不自由することもなく、盛大に甘やかしてくれるご主人に頼り切って生活をしてきたといいます。
 

「結婚してしばらくして娘が生まれたんです。でも……生まれた瞬間から、違和感ばかりでした。『なにこれ? なんで私から、こんなものが生まれたの?』という感覚で、子どもというより、なにか得体のしれないものが突然現れた、そんな感じでした」
 

もしかしたら自分は、子どもを愛せない人間なのかもしれない……景織子さん自身の説明しようのない感情は、数年後に息子が生まれたことで一変したのだそう。
 

「息子が生まれるまで不安で不安で仕方がなかったのですが、生まれたばかりの息子の顔を見た瞬間、全身から慈愛が溢れる感じがしたんです。ああ、私、今、この瞬間のために生まれてきたんだ。息子を愛するために、私はこの世界に生きていたんだ。この子のためならどんなことでもする。どんなに大変なことも、この子のためなら大丈夫。私、良い人間として、良い親として、生まれ変わるんだ!って」
 

どう頑張っても「差別」してしまうのはなぜ?

愛しさが止まらない息子という存在。できれば息子と夫と自分、3人だけで暮らしたかったと、景織子さんは本音を吐露しました。
 

「どんなに頑張ってみても、娘のことをこれっぽっちもかわいいと思えない。それでも、普段の生活の中で差別しない、区別しない、そうやって努力してきたつもりですが、言葉や態度に出てしまっていたみたいで……」
 

ことが大きくなったのは、娘さんが小学6年生のときの授業参観。「ウチの家族」というタイトルで書いた作文を読み上げる国語の授業があり、そこで娘さんはこんな内容の文を読み上げたといいます。
 

『ママは、私のことをかわいいだなんて少しも思っていません。ママから愛されている弟が、私はうらやましいです』
 

「あ、やばい、バレてた、そんな“苦み”のような感覚が口内いっぱいに広がりました。ひたすら、先生やママたちからの視線が痛くて。当然ながら肯定もできませんが、愛してないのは事実なので否定もできず……ひたすら無言・無表情のまま、授業参観を終えました。
 

あー、ウザい。娘なんて、早く自立していなくなればいいのに……。本当に、そんなことばかり考えていました。そういう私の態度に娘はさらに苛立ったようで、すべてを夫に伝えてしまったんですよ。夫と息子は絶対的に私の味方をしてくれると思っていたら、夫から『息子と娘で態度が違うことはずっと感じていたけれど、女親は男児をかわいがるというし、そういうこともあるだろうと大目に見ていた。でもまさか、子どもが学校で訴えるほど、愛情を注げないような女だとは思わなかった。もう君のことを愛することはできない。離婚してほしい』って。息子からも『ママ、僕も言おうと思ってたの。ママ、お姉ちゃんに対してだけ、なんかおかしいよ?』って言われてしまって……」
 

「息子と離れるくらいなら死んでやる」

「離婚はしたくない」そう突っぱね続け、数年経った今も家族4人での暮らしを続けているという景織子さん。しかし、夫との会話は極端に減り、好きなものも買ってもらえなくなり、娘に対して憤りしか感じられないといいます。
 

「娘がいなければ幸せな生活を送れていたはずなのに!と。ことあるごとに心の中に沸きあがる娘への憎悪を抑えながら生活しています。離婚なんてしたくないです。マトモに働いたことがないから自分のお金もない。夫からは『早く離婚したい』と、そればかり言われるようになってしまって、本当に辛くて仕方ありません。娘に対するネグレクトは確かにしてしまったかもしれないけれど……一生苦労させないとか言っておいて、ひどくないですか?」
 

さらにご主人は、娘さんと息子さんを連れて、来年度からご主人の実家に帰ると宣言。都内の一等地にあるマンションはそのまま残しておくし生活費も最低限払うから、しばらく別居して、娘さんの心のケアをしたいと言われてしまったといいます。
 

「息子と離れるくらいなら死んでやる!って言ったら、夫から『君は、本当に自分のことしか考えてないんだね』って呆れた顔で言われてしまいました。悔しくて悔しくて……でも、娘に対する罪悪感もないことはないので、夫の選択が正しいことは分かるんです。でも、気持ちは追いつかない。この先、どうしたらいいのか自分でもわからないんです……」
 

子どもへの愛情が持てなかったばかりに、壊れてしまったひとつの家族。「親と子は無条件に愛情でつながっている」というのは、はかない幻想なのかもしれません。

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