30代、世帯年収700万円。教育費や住宅購入資金を上手に確保したい…

定期預金などで貯蓄はしていても、投資には一歩踏み出せていないという方も多いのではないでしょうか。今回はリスクを抑えつつ資産の増加を目指せる上手な投資の方法について考えてみましょう。

リスクを抑えた「上手な投資」で資産を増やすには?

2020年3月は新型コロナウイルス感染症の拡大もあり、株式市場の変動が激しく、多くの投資初心者が証券口座を開設して投資信託の積立をはじめたようです。2018年1月に長期資産形成を促す目的で始まった「つみたてNISA」も投資初心者の増加を後押ししています。

しかし、定期預金などの積立はしていても、積立投資はよくわからないし、ちょっと怖いと感じて一歩踏み出せない方もまだまだ多いですよね。

資産形成の方法に悩むAさんもその1人です。毎月の貯蓄はしているけど投資には踏み出せていません。そこで、今回はリスクを抑えつつ資産増加を目指せる上手な投資の方法について考え、Aさんにとっても読者の皆さまにとっても、投資へ一歩踏み出すきっかけにしてもらいたいと思います。

【モデルケース】
・Aさん(32歳、女性、税込年収300万円)
・家族:配偶者(35歳、税込年収400万円)、長男(3歳)

<貯蓄について>
・Aさん名義で毎月合計5万円(財形貯蓄3万円、普通預金2万円)
・配偶者名義で毎月合計3万円(自動積立定期預金3万円)
・貯蓄合計500万円
・3年以内に住宅購入希望あり
 

なんで資産形成に投資が有効なの?

まず、大前提として今は歴史的な超低金利時代です。定期預金にいくら長く預けてもなかなか増えません。1年定期の金利が0.002%まで下がっていますから、100万円を1年間預けたとしても利息は20円、さらにそこから税金が約20%引かれます。

一方で、積立投資の主な対象商品である投資信託には元本割れのリスクがありますが、ちょっとした工夫でリスクを抑えながら資産増加を目指せます。

投資をはじめられない大きな理由は「元本割れリスク」があることですよね。

では、リスクを抑えられるちょっとした工夫とは何でしょうか?

「長期」「分散」「積立」が投資の成功率を上げるキーワードです。1つずつ見ていきましょう。
 

投資期間が長期になればなるほど成功率アップ

資産・地域を分散して積立投資を行った場合の運用成果の運用実績(保有期間5年・20年)
(注)1985年以降の各年に、毎月同額ずつ国内外の株式・債券の買付けを行ったもの。各年の買付け後、保有期間が経過した時点での時価を基に運用結果及び年率を算出している。
出所:金融庁ウェブサイト

図は投資期間が5年と20年の場合の実績を比較したものです。

投資期間が5年と短い上のグラフを見ると、結果がかなりばらついています。-6~-8%も元本割れしてしまうこともあれば、12~14%増える時もあり見通しがつかないという印象です。一方で、投資期間が20年と長い下のグラフを見ると、2~8%までに結果が集中しています。長期投資は元本割れの可能性を下げ、成功率をアップさせる効果があるんですね。

Aさんの場合、ご夫婦ともに30代ですので、老後を見据えた場合長期投資が十分可能です。なるべく早く投資をスタートすることで、長期投資の効果を最大限活用しましょう。
 

分散投資はリスクを軽減する

1つの資産だけに投資をするよりも、値動きの異なるいくつかの資産に分散投資を行うと、お互いの値動きを打ち消し合って価格の変動が小さくなり、リスクが減ります。値動きの異なる資産だけではなく、地域も分散することで、よりリスクを抑えながら、世界経済全体の成長の果実を得ることも期待できます。

Aさんのように投資がはじめてで、なるべくリスクを抑えたいという方は、たとえば株式だけを投資対象とした投資信託ではなく、株式・債券・不動産に分散投資を行うバランス型の投資信託から投資をはじめてみてもいいのではないでしょうか。

分散投資の効果(イメージ)
出所:金融庁ウェブサイト

 

積立投資は安い時にたくさん買える!

投資信託を最初にまとめて買ったときと、毎月同じ金額で買ったときを比較してみます。

最初にまとめて買った場合は平均購入単価が1万円ですが、毎月1万円ずつ買った場合は、価格が6,000円と大きく下がった時にたくさんの口数が買えていることがわかります。その効果によって平均購入単価が8,911円となり、まとめて買った場合よりかなり安くなっていることがわかります。

毎月同じ金額を投資していくことで、安い時に買わなかったり高い時にだけ買ってしまうことを防ぎ、平均購入単価を下げる効果もあるのが積立投資なのです。

▼日経平均に連動するタイプの投資信託で積立投資をした場合のシミュレーション

「インデックスファンド225(日興アセットマネジメント)」の基準価額を基に筆者編集(2000年1⽉〜2020年5⽉の各⽉末に1万円を投資したと仮定して算出。購入時手数料は計算から除外)

日経平均に連動するタイプの投資信託で積立投資をした場合のシミュレーションを見ると、投資元本245万円に対し、時価は427万円まで増えています。2008年のリーマンショックの後はマイナスの時期が続いていますが、長期間続けたことで積立投資の効果が大きく感じられる結果となっています。

Aさんの場合も、ご夫婦でしている積立の預金の一部を積立投資に回すことで、リスクを抑えながら将来的に大きな成果が期待できます。
 

積立投資のメリットを最大限に享受しよう

「長期」「分散」「積立」。この3つのキーワードを意識しながら、積立投資をはじめれば、心配なリスクを抑えつつ資産の増加を期待できることがお分かりいただけたと思います。また、積立投資をはじめるにあたり、「つみたてNISA」や「iDeCo」を活用することで節税の効果もあり、資産増加の後押しをしてくれます。

資産運用をする場合、すぐに使うお金は「預金」で準備し、中長期的に使うお金は「投資」で準備をする、という考え方をおすすめします。

Aさんの場合、3年以内に住宅購入を考えているということなので、貯蓄の500万円+預金での積立を充てるといいでしょう。

また、Aさんにとっての「中長期的に使うお金」にあたるお子さんの教育資金やご夫婦の老後資金については、「つみたてNISA」や「iDeCo」を活用した積立投資で準備していくといいでしょう。

「iDeCo」は原則60歳までは引き出せないため、純粋に老後資金の準備のためだけに活用するようにしましょう。一方「つみたてNISA」はいつでも解約ができるので、例えばお子さんが大学に行く15年後に解約して使うこともできます。

以上をふまえて、Aさんの積立の内訳を考えてみます。

まずは毎月5万円の貯蓄のうち2万円をつみたてNISA、1万円をiDeCoで、配偶者は3万円のうち、1万円ずつをつみたてNISAとiDeCoで積立投資をはじめてみてはいかかでしょうか。

今行っている貯蓄に積立投資を組合わせて、リスクを上手に抑えながら将来に向けて資産の増加を目指しましょう。


この記事を執筆したのは……

羽鳥 緑


株式会社MILIZE所属の1級ファイナンシャル・プランニング技能士。銀行に10年以上勤務し貯蓄・資産運用・相続対策などお金の相談業務や、資産形成セミナー講師、研修講師を経験。2020年4月より現職。
 

【関連記事】

世帯年収850万円。教育費がかかる時期に自宅購入。老後への影響は?

新型コロナの影響で世帯年収が120万円も減収。家を購入して大丈夫?

世帯年収750万円。賃貸と住居購入、どちらがコストを抑えられる?

Lineで送る Facebookでシェア
はてなブックマークに追加

注目の連載

  • 世界を知れば日本が見える

    韓国の戒厳令、尹大統領はなぜ突然「乱心」したのか。野党だけではない、北朝鮮とアメリカからの影響

  • ヒナタカの雑食系映画論

    独断と偏見で「2024年のホラー映画ランキング」を作成してみた。年末に映画館で見るならぜひ第3位を

  • ここがヘンだよ、ニッポン企業

    「あれは全て私がやりました!」 わが社の“承認欲求モンスター”をどう扱うべきか?

  • 恵比寿始発「鉄道雑学ニュース」

    静岡の名所をぐるり。東海道新幹線と在来線で巡る、「富士山」絶景ビュースポットの旅