共稼ぎ夫婦、マイホームを子ども独立後に買うのはアリか?

マイホームは一般的には結婚や出産、入学などのタイミングで購入しています。では子どもが独立した後の夫婦二人の生活を見据えた住宅購入は現実的ではないのでしょうか。40歳時または55歳時に購入した場合を比較して概算をシミュレーションしてみましょう。

マイホームはいったいいつ買うのがいいのか?

いずれマイホームを購入したいと考えているが、いつ購入するのがいいのか迷っている方もいるのでは。一般的には30歳前後で購入するケースが多いが、はたしてそれが得策なのか。それとも、子どもの独立後に、その後の夫婦二人の生活を想定してコンパクトな住宅の購入はアリなのか。
 

マイホームを「夫40歳時に購入した場合」と「子ども独立後の夫55歳時に購入した場合」で比較して、概算をシミュレーションしてみましょう。
 

【モデルケース】
・夫39歳、妻36歳、子ども7歳
・収入:夫650万円(65歳まで、変動あり)、妻250万円(60歳まで、変動なし)
・退職金:夫1500万円(60歳時)
・金融資産額:1200万円
・基本生活費:月額30万円
・家賃:月額12万円
・生命保険・医療保険料:月額3万円(夫60歳まで支払い)
・医療費:夫婦各200万円
・介護費用:夫婦各360万円
・お子様の進路:中学まで公立、高校は私立、大学は私立文系(予定)
 

夫65歳、妻60歳まで会社員として働くと仮定

シミュレーションの前提条件として、会社員の夫婦が夫65歳、妻60歳まで働くと設定してみます。夫の給与は所定の範囲で変動し、妻は一定とします。夫は60歳時に退職金を1500万円受け取るものとします。

ご夫婦の収入の推移(退職金を除く)

 

夫40歳時、または55歳時に住宅購入した場合の条件比較

現在39歳の夫が40歳時にマイホームを購入するか、このまま賃貸生活を続けて子どもが独立した後の夫55歳の時に購入するのかを比較してみます。
 

夫40歳時に自己資金1000万円、借入額3800万円で住宅を購入したとします。借入金利は全期間固定金利で年1.5%、返済期間は30年です。毎月返済額は約13万円です。
 

一方で、夫55歳時に自己資金2000万円、借入額1800万円、金利は同じ1.5%と設定し、返済期間は15年とします。ともにボーナス返済のない元利均等返済で、70歳までにローン返済が終わる設定で比較しています。
 

夫40歳時に住宅購入した場合

グラフの青色の部分が金融資産額、黄色の部分が住宅ローン残高の推移です。金融資産額は65歳時点で3108万円、85歳時点で709万円です。住宅ローンは、40歳から30年かけて返済するプランです。
 

▼金融資産額推移(40歳で住宅購入した場合)

金融資産額推移(40歳で住宅購入した場合)

 

夫55歳時に住宅購入した場合

一方で子どもが独立した後の夫55歳時に住宅を購入した場合は、65歳時の金融資産額は2807万円、85歳時で501万円です。住宅ローンは55歳から15年で完済するプランです。
 

▼金融資産額推移(55歳で住宅購入した場合)

金融資産額推移(55歳で住宅購入した場合)

 

自己資金が多ければ50歳代以降で購入することも可能に

一般的に住宅を購入するなら早いほうがいいといわれますが、自己資金を蓄えて子どもが独立したタイミングで夫婦二人のためのコンパクトな住宅を購入するのも選択肢の1つといえそうです。その際は、高齢になった時を想定して駅に近くて移動や買い物に便利な立地を選ぶことが重要でしょう。
 

キャッシュフロー(収支)を改善するために

2つのシミュレーションでは、いずれも80歳代後半から金融資産額がなくなります。ただ今回のシミュレーションでは、基本生活費(住居関連費、教育費、保険料等を除いた金額)を月額30万円として計算しています。


一般的に高齢になるほど生活費は減っていきます。支出を多めに見積もって試算した結果となります。なお、シミュレーションでは医療費と介護費用は【モデルケース】で記載した内容で所定の金額を別途反映しています。
 

ただキャッシュフローを改善する具体策としては一般的に次のような複数の方法が考えられます。


1. 通信費や食費、保険料の見直しなどで家計をスリム化する
2. 住宅ローンの繰上げ返済により住宅ローンの総返済額を軽減する
3. 公的年金の受け取り開始を繰下げることで受給額を増やす
4. 働く期間を延ばす
5. 金融資産の運用の効率化を図る(iDeCoやつみたてNISAなどの積極活用)
 

改善策の一例として2の住宅ローンを繰上げ返済した場合の効果をシミュレーションしてみましょう。
 

▼住宅ローンを繰上げ返済した場合の効果は?

前述した40歳で住宅購入したケースでは、完済年齢を70歳として住宅ローンを組んだ想定でした。
 

返済20年経過後の60歳時に、金融資産額3815万円の中から1460万円を繰上げ返済に回した場合、総返済額はおよそ113万円軽減することができ、返済期間も9年11カ月短縮することができます(期間短縮型を選択した場合)。つまり、ほぼ完済することになります。

 
▼60歳の時点で繰上げ返済した場合の効果

繰上げ返済をすると返済した資金は借り入れした元金部分に充当されるため、早いほどその軽減効果が高くなります。60歳になる前でも、家計のバランスを見ながら無理のない、安心できる範囲で一部繰上げ返済を行うとよいでしょう。
 

この記事を執筆したのは……

永田 忠則

株式会社MILIZE所属の1級ファイナンシャル・プランニング技能士 、CFP®(日本FP協会認定)、DCアドバイザー、企業年金管理士(確定拠出年金)、社会福祉士等。1990年より日本初の独立系FP会社に勤務。1998年に独立。およそ30年にわたり主に個人に対する相談業務を中心に活動。そのほか、FP資格講座や確定拠出年金の講師、ライフプラン関連の講演、WEBコンテンツや書籍、テキスト等の執筆に従事。2020年2月より現職。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください
 

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