学生の頃のアルバイトと違い、たくさんもらえると思っていた社会人の給料。いざ貰ってみるととても少ない。給与明細を見ると、厚生年金の保険料がかなり天引きされている……。「貰えるか分からない年金のためにこんなに払うのか」こう感じた方は結構いらっしゃると思います。
 

会社員になると厚生年金に加入し、厚生年金保険料を払わなければなりません。でも厚生年金は老後のためだけじゃないのです。別の用途で年金に助けられるかもしれません。
 

そこで「年収400万円の会社員」をモデルに、どんな時に年金によって助けられるのか、シミュレーションしていきましょう。


【モデルケース】
会社員(男性、30歳)
年収400万円(内ボーナス40万円)
標準報酬月額:30万円
標準賞与額:20万円×2
厚生年金保険料:36.3万円/年額

家族:妻(30歳、専業主婦)、長男(2歳)、長女(0歳)

年金の給付は3種類

「年金が減る! 貰えない!」とよく言われるのが、1つ目の老齢給付です。
 

確かに少子高齢化に伴い、支給開始年齢の引き上げや支給金額の減額が今後予想されます。
 

しかしながら、年金の保険料を払うのは損だ、という判断をするには早計です。年金には障害給付・遺族給付という機能もあるのです。
 

障害給付って何?

障害基礎年金と障害厚生年金は、会社員で厚生年金保険料を支払っていれば、支給要件に差はあるものの、どちらも受け取る対象になります。

障害給付はいくらもらえるのか、実際にシミュレーションしてみましょう。
 

▼シミュレーション1:障害給付はいくらもらえる?

先ほどの男性の体に、障害等級2級の障害が残ってしまったら、いくら障害給付が受給できるのか試算してみましょう。


シミュレーション期間は30歳男性の平均余命が51.88年なので、世帯主が81歳までです(出典:厚生労働省平成30年簡易生命表の概況)。

このようなグラフができ上がりました。
 

子どもが高校を卒業するまでの間は、障害基礎年金に子の加算がされるため、少し段差がついていますね。
 

合計7,000万円弱が支給される計算になりました。


若い頃から受給となった場合、長期間受給することになるので、若い頃から保険料をしっかり納めていると安定した保障が受けられそうですね。


また、長期間保険料を納めることで障害厚生年金の金額が増え、さらに保障が手厚くなりますので、長く保険料を納めたから損をするという訳でもないでしょう。
 

遺族給付って何?

遺族基礎年金と遺族厚生年金は、会社員であれば、どちらも加入しています。
 

遺族基礎年金は子どものため、遺族厚生年金は配偶者のための年金制度です。

遺族給付はいくらもらえるのか、実際にシミュレーションをしてみましょう。
 

▼シミュレーション2:遺族給付はいくらもらえる?

先ほどの家族に再登場いただきました。もし男性が30歳のときに亡くなってしまったら、どうなるのでしょうか。


シミュレーション期間は30歳女性の平均余命が57.77年なので、配偶者が87歳までです(出典:厚生労働省平成30年簡易生命表の概況)。

子どもが18歳になる年の末日(高校を卒業するまで)期間は、遺族基礎年金が受給できます。
 

遺族基礎年金の受給期間が終了した後は、妻が自分の老齢基礎年金を受給できるようになるまで、中高齢寡婦加算という手当が加算されます(妻の年齢要件あり)。


シミュレーションでは、遺族基礎年金と遺族厚生年金の累計で5,700万円弱の受給ができます。
 

子どもの養育費と配偶者の終身まで生活保障をしてくれる、とても手厚い収入保障保険に加入していると考えれば、そんなに高くない保険料ではないでしょうか。


民間の収入保障保険でも、配偶者の生活を終身で保障し、子どもが小さい期間はより、手厚い保障が得られる保険商品はないでしょう。
 

民間保険会社の年金商品で保障は得られないの?

それでは、民間保険会社の年金商品で保障は得られないのでしょうか。ここでは、厚生年金保険と民間保険会社の年金商品を比較してみましょう。

個人年金保険の場合を見てみましょう。保険料支払い期間中に死亡した場合、保険金は今まで支払い積み立ててきた金額に相当する金額が支払われます。つまり、個人年金保険は貯蓄の側面が強い商品なので、加入直後に亡くなってしまった場合の保障は手薄になってしまいます。

今回シミュレーションに用いた個人年金保険には、「最低保証期間10年」がついており、これは年金受取期間が始まってすぐに亡くなってしまった場合でも、10年間は年金受取ができるというものです。

個人年金保険にあって、厚生年金にはないメリットですが、厚生年金では遺族がいれば、遺族年金という形で遺族の生活保障がなされますので、個人年金保険の大きな魅力にはならないでしょう。

対して、年収400万円の人のひと月あたりの厚生年金保険料が約3万円ということを考えると、厚生年金の保障は魅力に感じませんか?
 

公的年金は「保険」として優秀

厚生年金に加入したことによる障害給付・遺族給付について説明しました。ここでは詳しく説明しませんでしたが、自営業者などが加入する国民年金にも障害給付・遺族給付はあります。
 

老後のためだけに支払っているのではなく、別の側面で年金のお世話になるかもしれないということがご理解いただけましたでしょうか。


公的年金(厚生年金や国民年金)の保障内容を理解することで、民間の保険が必要なのか不要なのかというのも見えてきます。


不要な保険に加入してしまうと、せっかく払っている厚生年金保険料を無駄にすることになります。


保険は長期間・高額の買い物になりかねないので、正しい知識を身につけ、上手にお金と付き合っていきましょう。
 

この記事を執筆したのは……

木村 拓人

株式会社MILIZE所属のAFP®(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、宅建合格者。大学卒業後、大手信販系クレジットカード会社に就職。債権回収部門にて、支払の相談・顧客カウンセリングを担当。一企業の利益のためでなく、顧客目線で必要な情報を提供したいという考えから、株式会社MILIZEへ転職。現在は、コンサルティングや人生設計ツールの開発に従事。

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