近年、共働き世帯がスタンダードになりつつあります。ご夫婦共に正社員の場合、家計にゆとりが生まれやすくなりますが、お子様がこれから・まだ小さい時期に住宅を購入する際は注意が必要です。
お子様ができてからの奥様の働き方は予測が立てにくく、産休育休、時短勤務を経てフルタイムに戻ることもあれば、保育園や職場の事情で派遣やパート・残業の少ない部署や会社へキャリアチェンジすることも少なくありません。
住宅購入時は、このような「将来の収入変動」を考慮しておかないと、住宅ローンが家計をじわじわ圧迫してきます。
住宅ローンのために無理をして仕事を続け、忙しさのあまり家族みんながご機嫌でいられる時間が減ってしまっては本末転倒ですよね。そこで「世帯年収750万円の共働き夫婦」をモデルに、将来の収入減にも耐えうる住宅予算の考え方をみていきましょう。
【モデルケース】
・夫(31歳):年収450万円
・妻(27歳):年収300万円
⇒世帯収入:750万円
1. 今の世帯年収をベースにしない
当たり前ですが、住宅予算を世帯年収750万円をベースに考えるということは、その収入の維持が前提になります。
奥様が産休育休・時短勤務になれば収入は減りますし、お子様のおむつや被服費・保育園の費用、住宅購入による固定資産税や管理費・修繕積立金など支出は増えていきます。
少しでも収入が減る可能性があれば、今の世帯年収をベースにしない方が懸命です。
2. 夫の「借りられる額」を知る
まずは、夫の年収だけで「借りられる額」を知りましょう。
仮にフラット35で借りる場合の借入可能額は【4,470万円】です(※審査金利1.24%・返済比率35%の場合)。
3. 妻の「年収の変動幅」を考える
次に、奥様の年収が将来どのくらい変わる可能性があるのか、その幅を考えてみましょう。
仮にパートや別の職場にキャリアチェンジしても「年間○万円なら無理なく稼げるかも」という、おおよそのラインを出してみるのです。
今回は【年間0~100万円】を、無理なく稼げる幅と考えてみます。
※時給1,000円×1日5h×週4日×4週=月8万円を目安に設定
4. 「返済比率20~25%」で考える
最初の「借りられる額」と「奥様の年収の変動幅」を頭の片隅に置きつつ、無理なく返せる額を出していきましょう。
無理なく返せる額は、一般的に「返済比率20~25%」といわれています。なお、返済比率とは額面年収に占める年間の住宅ローン返済額の割合を示すものです。
こちらの表は、夫の年収450万円と奥様の年収100万円が上積みされた年収550万円の場合の、返済比率別の借入額です。
※フラット35、審査金利1.24%の場合
これをみると、無理なく返せる額は【2,554万円〜3,902万円の間】だと考えることができます。下限の2,500万円に近づけばその分ゆとりが生まれ、上限の3,900万円に近づけばその分「頑張るぞ度」が上がると思っておくと良いでしょう。とはいえ、もともと「無理なく稼げる額」で出しているので、調整はしやすいはずです。
本来はライフプランを作成し、生涯の収支を元に算出するのがベストではありますが、このような考え方も1つの方法です。
自分たちの優先順位を明確に! 住宅探しのコツ
住宅購入は、誰もが初心者です。華やかなモデルルームを見れば感情も昂りますし、スマートな営業の方に「お二人のご年収なら買えますよ」と言われたら、つい冷静な判断ができなくなってしまうもの。
そこで「住宅探しのコツ」としては、まず①ご自身の「予算の幅」を把握し→②「その幅の範囲内の物件」から内覧→③その中でビビッとくる物件が無ければ、予算を500万円上げて内覧してみることです。
②で自分の身の丈にあった物件がどんなものなのか体感できます。
③で予算を500万円上げると、立地や内装などが1ランク上がった物件を体感できます。但し、借入が500万円増えると月の支払いは約1万5,000円、年間18万円増えます(金利1%の場合)。年間18万円ですと家族旅行に2回行けるくらいでしょうか。
この時に「今見ている物件から得られる”価値”は、そのお金を払ってでも得たいものか」を考えてみるのです。そうすると、ご自身の人生の優先順位が明確になっていきますのでお勧めです。
家族みんながご機嫌でいられる資金計画を
住宅は、あくまで「箱」だと思います。ご家族みんなが心地よくご機嫌な人生を送るための「1つのツール」でしかありません。住宅を背伸びすれば、その分収入を増やさない限り、子供の教育費やご自身の老後の資金にしわ寄せがいってしまいます。
住宅ローンがあなたの人生の足枷にならないよう、将来の働き方の変化も見込んで、ご自身にあった予算の幅を見つけてみてください。
この記事を執筆したのは……
渡部 有加
株式会社MILIZE所属の2級ファイナンシャルプランナー、AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士、貸金業主任者。人材会社でコンサルティング営業を経験した後、自身の住宅購入に役立てるためリノベーション会社に転身し、中古住宅の売買や資金計画を学ぶ。その間、個人がお金の悩みを解消する場が無いことを痛感し、独立系FP事務所のファイナンシャルプランナーに転身。家計・住宅購入・保険など年間100世帯ほどの相談業務に携わる。現在は株式会社MILIZEで不動産やFPの経験を活かし、FinTechサービスの企画開発に従事。
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