パート妻の稼ぎは誰のもの?増える、共働き夫婦の“生活費”騒動

男女ともに働き、稼ぎ、家計を担う。それが当たり前となった世の中で、夫婦喧嘩の火種になるのが生活費の「負担割合」問題です。

1980年代までは、圧倒的に専業主婦が多かった日本。1990年代頃は専業主婦と兼業主婦がほぼ同数で推移していましたが、2000年に入る頃から数値が逆転。2019年には共働き世帯が約1245万世帯あるのに対し、専業主婦世帯はわずか575万にまで減っています。男女ともに働き、稼ぎ、家計を担う。それが当たり前となった世の中で、夫婦喧嘩の火種になるのが生活費の「負担割合」問題です。

積もり積もった、夫の不満

今回お話を伺ったのは、奥様に対する不満を抱え続けているという上田昂一さん(仮名・38歳)。大学を卒業後、中堅企業に勤めて15年。8年前に系列企業で働いていた6歳年下の奥様と出会い、5年前に結婚。そろそろ子どもを……と考えていた矢先、奥様が会社を辞め、パート主婦になりました。
 

「妻によれば、会社のお局から目を付けられて何かと意地悪されていたそうで、どうしても会社を辞めたいと言い始めて。子どもを妊娠するまでは我慢して働いたほうがいいのではないか、将来のために貯金しておいたほうがいいのではないかと妻に伝えたのですが、どうしても耐えられないというので、好きにするよう言ったんです。
 

どうやら、すでに退職届を出していたらしく、その2週間後には会社を辞めてしまいました。1ヶ月ほど専業主婦をしていたのですが、ヒマだから……とパート主婦になり、扶養範囲内で働くようになりました」
 

妊娠を考えていたこともあり、勝手に会社を辞めたことについてはとくに責めることもなく受け入れたという昂一さん。しかし、奥様が会社を辞めてから1年。だんだんと不満が募っていったといいます。
 

「妻が、自身の収入をまったく家計に入れないんですよ」
 

共に会社員として働いていたときは、お互いの収入から家計に必要なお金を分担。生活費のうち、約6割を昂一さんが、残り4割程度を奥様が負担。その分、奥様が約6割の家事を、昂一さんが約4割の家事を負担し、生活を続けてきたのだそう。しかし、奥様が会社を辞めてから、生活費のすべてを昂一さんが負担することになりましたが、家事負担は以前のまま。
 

「妻には月8万円程度の稼ぎがあるはずなのですが……どうやら、すべて自分の小遣いにしてしまっているようなんです。家事を負担することに関しては、もう慣れてしまったのでどうでもいいんです。でも、俺の稼ぎで暮らして、自分は自由にお小遣いを使って、夫側にだけ負担を強いているのに、それが当たり前だと思っているのはどうか?と思うんです」
 

妻の稼ぎは、誰のもの?

「パート代を、家計に入れるべきでは?」
 

昂一さんは何度も、奥様に対して苦情を呈したといいます。
 

「もちろん、全額じゃなくていいんです。俺自身の小遣いが月3万円程度なので、妻も同程度を小遣いにすればいい。残りの5万円を家計に入れてくれれば、その分を未来の子どものため、未来のマイホームのために貯金することができる。そこで、思ったことをそのまま妻に伝えたんです。しかし、妻の答えはNOでした」
 

『あなたの稼ぎで暮らしていけている。私のパート代くらい、自由に使わせてほしい』――奥様は頑なにそう言い張ったとのこと。そこで昂一さんは、こんな提案をしたそうです。
 

「分かった。そう考えているのであれば、無理強いはしない。ただし、お互いに不満が残らないよう、金銭面で平等になるようにしよう。俺の小遣いを、来月からおまえと同じ月8万円にする。で、残ったお金で生活していこう。これまでのように、旅行に行ったり外食したりできなくなるかもしれないけれど、そこは仕方がないことだろう」
 

すると奥様は大爆発。
 

「いやぁ……妻の言葉には正直、ドン引きしましたね。『1ヶ月に8万円もの小遣いを何に使う気なんだ! アタマがおかしいのか!』って、そう言ったんですよ。思わず『その言葉はそのまま自分に当てはまると思うんだけど、それについてはどう思うの?』って聞いたら、顔を真っ赤にしたまま家を出て行ってしまいました」
 

奥様は実家に帰ったらしく、奥様のご両親は驚いて電話をかけてきたといいます。喧嘩に至った経緯を相談したところ、お舅さんが奥様に対して「おまえは何を考えているんだ!」と叱ってくれ、奥様はしぶしぶながらも3万円を家計に入れることを約束。夫婦仲は小康状態を保っているといいます。
 

「それでも、俺自身は完全には納得していません。妻が育児で働けない状態、または病気やケガで働けない状況であれば、全額負担するのは夫として当たり前のことだと思います。でも、お互い健康であり、働ける環境にある以上、夫だけに負担をかけるのではなく、ある程度平等になるよう、妻側も努力をするべきではないでしょうか。そんなことも分からない愚かな女と結婚してしまったことに対して、今はただただ、後悔しかありません」
 

昂一さんは現在、奥様といつ離婚してもいいよう、へそくりを貯め始めているといいます。
 

生活費は夫側が負担するのが当然、という昭和な考えをいまだに持っている女性がいるのだと驚きつつ、男性のほうも結婚に対してシビアになっているのだと実感。夫婦の形は様々にあるため、何が正解なのかは分かりませんが……今後、こうした夫婦間の金銭トラブルは、増えていくのかもしれません。

Lineで送る Facebookでシェア
はてなブックマークに追加

注目の連載

  • ヒナタカの雑食系映画論

    アニメ映画『ふれる。』で“20歳の青年”を主人公にした意味は? 挑戦的かつ優しい3つのポイントを解説

  • 「正直、日本ってさ…」外国人に聞くぶっちゃけニッポン

    「ラーメンやすき焼きのお店まで……」30代グアテマラ人男性が語る、出身国で流行している日本の食文化

  • AIに負けない子の育て方

    学校から暗に退学を勧められ…。中学受験に無事合格も、彼らが「転校」を余儀なくされた理由

  • 恵比寿始発「鉄道雑学ニュース」

    江ノ電、“史上初”人気ブランドとのコラボ制服が話題! 「鎌倉高校前駅」の駅名標やホームも大変身