青山学院大学が2年ぶりの総合優勝!2020年の箱根駅伝を振り返る

1月2日、3日に第96回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)が行われ、青山学院大学が2年ぶりの総合優勝を果たしました。本稿ではレースを振り返りたいと思います。

第96回箱根駅伝往路、一斉にスタートする選手たち(写真:日本スポーツプレス協会/アフロスポーツ)

1月2日、3日に第96回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)が行われ、青山学院大学が2年ぶりの総合優勝を果たしました。本稿ではレースを振り返りたいと思います。
 

往路優勝は青山学院大学!

◆1区

1区は東京国際大学の留学生が当日変更でエントリーされるのでは?という憶測が飛んだこともあり、ハイペースが予想された結果、多くの有力選手が集まりました。
 

しかし、留学生は1区にエントリーされませんでした(結果的に3区にエントリー)。それでも有力選手が集まった1区はハイペースで推移。終盤抜け出した米満怜選手(創価大学4年)が区間賞を獲得。歴代2位の好記録でした。僅差の区間2位に藤木宏太選手(國學院大學2年)が入り、往路優勝を狙う國學院大學は良いスタートを切りましたが、同じく往路優勝を狙う東洋大学は区間14位と出遅れたスタートとなりました。
 

◎区間賞 米満怜選手(創価大学4年)
 

◆2区

花の2区、といわれるエース区間の2区。先頭は7名の集団から徐々に振るい落としが始まり、岸本大紀選手(青山学院大学1年)が区間5位の走りでトップで3区へ襷を渡すものの、4位の東海大学まで3秒差と引き続き後続は僅差でした。区間賞は相澤晃選手(東洋大学4年)が14位と後方からスタートも7位まで追い上げ、区間賞を獲得。不滅といわれたモグスさん(山梨学院大学OB)の記録を11年ぶりに更新し、金栗四三杯も獲得しました。
 

◎区間賞 相澤晃選手(東洋大学4年)
 

◆3区

3区は1区起用も噂されていたイェゴン・ヴィンセント選手選手(東京国際大学1年)が区間記録を2分以上も更新する快走で8位から首位へ浮上しました。東京国際大学が箱根駅伝で首位になるのは初のことです。更に2位青山学院大学に1分21秒差をつけ、大きなアドバンテージを残しました。
 

2年連続3区の遠藤大地選手(帝京大学2年)、大型新人の田澤廉選手(駒澤大学1年)もそれぞれ従来の区間記録を更新する快走で、チーム順位を押し上げました。
 

◎区間賞 イェゴン・ヴィンセント選手(東京国際大学1年)
 

◆4区

4区は東京国際大学を追う吉田祐也選手(青山学院大学4年)が区間新記録の快走で2位から首位へ浮上。往路優勝を狙う3位國學院大學とは1分28秒差、4位東海大学とは1分58秒差をつけました。総合優勝の立役者となった吉田選手ですが、卒業後は競技引退するとのことです。
 

9位スタートの福田悠一選手(創価大学3年)、20位スタートの河田太一平選手(法政大学1年)も区間4位、8位と好走し、下位で襷をもらいながらも順位を上げる走りをしました。
 

◎区間賞 吉田祐也選手(青山学院大学4年)
 

◆5区

山登りの5区は区間上位3名が区間新記録を樹立。箱根駅伝初挑戦の宮下隼人選手(東洋大学2年)が区間賞を獲得。今シーズンは関東インカレ・ハーフマラソンで2位に入賞するなど急成長した選手です。前回8区区間2位の飯田貴之選手(青山学院大学2年)は初めての5区で区間2位をマークし、往路優勝のゴールテープを切りました。
 

一方で、実績者も多数出場。前回大会区間賞の浦野雄平選手(國學院大學4年)は区間3位。青木涼真選手(法政大学4年)はスタート時18位と下位スタートながらも区間4位。18位から16位へ順位をあげ、3年連続の5区を走り切りました。また畝歩夢選手(中央学院大学3年)、畝拓夢選手(中央大学3年)の争いにも注目が集まり、歩夢選手区間8位、拓夢選手区間9位という結果でした。
 

◎区間賞 宮下隼人選手(東洋大学2年)
 

復路優勝は東海大学

◆6区

6区は前回までのスペシャリストの卒業・欠場がありましたが、区間新記録が2名でました。
 

前回4区区間2位の実績を持つ館澤亨次選手(東海大学4年)が6区に登場。日本選手権1500m2連覇というスピードを武器に、初の6区挑戦ながら区間新記録を樹立。東海大学は4位から3位へ浮上しましたが、往路優勝の青山学院大学は谷野航平選手(4年)が区間3位と好走したため、思ったより差が詰まりませんでした。区間2位の今西駿介選手(東洋大学4年)は6区でおなじみの選手であり3年連続の6区に挑んだ今回は区間新記録を樹立しました。
 

◎区間賞 館澤亨次選手(東海大学4年)
 

◆7区

7区も区間新記録が出ました。
 

故障などの影響から7区に起用された阿部弘輝選手(明治大学4年)が区間新記録で区間賞を獲得し、5位から4位へ浮上。中村友哉選手(青山学院大学4年)は初の箱根駅伝出場ながらも区間4位と粘り、首位をキープ。
 

区間2位の鈴木創士選手(早稲田大学1年)、区間3位の松崎咲人選手(東海大学1年)と区間上位に1年生が入りました。
 

◎区間賞 阿部弘輝選手(明治大学4年)
 

◆8区

前回22年ぶりに区間記録を更新した小松陽平選手(東海大学4年)が2年連続の区間賞を獲得。追う青山学院大学を一気に詰めたいところでしたが、岩見秀哉選手(青山学院大学3年)が1秒差の区間2位と踏ん張り、差が詰まりませんでした。岩見選手は前回4区区間15位と奮いませんでしたが、今回は実力を発揮しました。また、早稲田大学は太田直希選手(2年)が区間4位の走りを見せて後続を引き離し、シード権争いから抜け出しました。
 

◎区間賞 小松陽平選手(東海大学4年)
 

◆9区

トップを走る神林勇太選手(青山学院大学3年)が区間記録に迫る記録で区間賞を獲得。優勝を手繰り寄せる快走でした。今シーズンは出雲駅伝(4区区間賞)、全日本大学駅伝(3区区間9位)を経て、初の箱根駅伝で区間賞を獲得しました。


復路のエース区間と呼ばれる9区は重要区間と位置付けている学校も多く、実に4年生と5年生が11名出走しました。

◎区間賞 神林勇太選手(青山学院大学3年)
 

◆10区

最終10区は23kmの長丁場であり、最後に順位変動も考えられる区間です。
 

湯原慶吾選手(青山学院大学2年)はセーフティリードがありながらも、途中まで区間新記録ペースで攻め、ペースダウンがありながらも区間5位で走り、優勝のゴールテープを切りました。
 

11位スタートの嶋津雄大選手(創価大学2年)はシード権争いの渦中でありながら、序盤から区間記録を大幅に更新するペースで突っ込み、すぐさま10位へ浮上。最終的には東洋大学を交わし区間新記録を樹立し9位でゴール。吉野貴大(帝京大学4年)も区間2位ながら区間新記録を樹立。國學院大學、東京国際大学、明治大学との3位争いに加わりました。
 

◎区間賞 嶋津雄大選手(創価大学2年)
 

大混戦の第96回箱根駅伝。青山学院大学が優勝できた決め手は?

終わってみれば、青山学院大学、東海大学が大会新記録であり、上位10校がかつて優勝するための目安のタイムであった「11時間切り」を達成するなど、第96回箱根駅伝はハイレベルな大会でした。加えて区間新記録が13名出るなど、高速化が特に進んだ大会となりました。
 

戦前は「東海大学が優位」という評判がありましたが、往路を4位で終えます。このとき往路優勝の青山学院大学とは約3分差、2位の國學院大學とは約2分差がありました。しかし東海大学は復路では東京国際大学、國學院大學を抜き、総合2位に浮上。復路優勝も果たしています。多少の誤算もあったものの、区間賞を2つ獲得し、総合2位になった東海大学は、やはり力がありました。
 

3位國學院大學、5位東京国際大学も戦前の予定通り、往路から逃げ切るレースを展開。上位2校との実力差は少しあるように見えますが、力を発揮したと思います。
 

出遅れや下位に沈む区間があるなど、8位駒澤大学、10位東洋大学はかつての上位校として「らしくない」ミスもあり、あわやシード権落ちの危機もありました。9位で初シード権を獲得した創価大学の台頭も含めて、時代が変わっていくような印象を受けました。
 

優勝した青山学院大学の区間賞は2つだけでしたが、全区間において大きな落ち込みが無かったことが優勝した要因なのではと思います。また、今大会で16名のエントリーメンバーに入れなかった選手にも有力選手が多数いるため、次回大会の連覇にも期待が集まります。

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